68 牢屋からの脱出
捕まった子供達はわたわたしたり、まごまごしている。
この状況からどうすればばいいのかが、わかっていないようだ。
「とにかくここはレグルスさんに従った方が良さそうだよ」
「う、うん」
レグルスは子供達にニッコリと笑った。
「安心しな、オレがいれば大丈夫だぜ」
根拠は無いが、レグルスの言葉には安心感があったようだ。
子供達は私の周りに集まった。
「レグルス! こっちは大丈夫だ。子供達を連れてこっちに来てくれ」
「わかった、イアーソン!!」
私達はイアーソンさんとレグルスの後について地下の牢屋から脱出した。
上の階には床に倒れたまま、動けないチンピラたちの姿がいくつも見えた。
「さて、外に出るとしよう」
「待て、前に何かいるぞ!!」
私達が中庭から外に出ようとした時、見えたのは……巨大な魔獣だった。
「まいったな、これじゃあ外に出れなさそうだ」
「仕方ない、俺が来た道に戻ろう」
私達はイアーソンさんに連れられて、中庭の外れの下水道入り口に到着した。
「少し臭うけど、我慢しろよ」
イア―ソンさんが最初に下水道に入り、私達と子供達がその後に続いた。
一番後ろにはレグルスがいて、追っ手を倒せるようにしている。
下水道に入った私達はイアーソンさんに連れられ、下水道を歩いた。
「うわぁ、足元がぬかるんで中々歩きにくいな」
「アタシに任せて、フリーズ」
スピカは下水道の水を一瞬で凍らせた。
「滑らないように気をつけてね」
子供達には裸足の子供もいる。
だが彼等も生きる為には逃げるしかないとわかっているらしく、冷たいとか痛いという子供達はいなかった。
凍った下水道を歩いた私達は、梯子のある場所に辿り着いた。
「ここの上に上がるぞ。落ちないようにな」
レグルスは万が一子供が転落した際に助けられるように下で待ち構えた。
そして最初にイアーソンさんが上り、上から子供を一人ずつ引っ張り上げた。
子供達が全員梯子を上ったのを確認し、レグルスが最後に梯子を上って来た。
「レグルス、何か重いものを持って来てくれ!!」
「おう、わかったぜ」
レグルスとイアーソンさんは工事用の資材を下水道の孔の上に置いて追手が来れないようにした。
「どうやらここはカジノの工事現場みたいだな」
「そうらしいな」
私達がケプラーの屋敷から抜け出してきたのは、ヤツの作っているカジノの工事現場だった。
「いたぞー!! 奴隷を逃がすな!!」
「まずいッ! 薬がもう切れたみたいだ」
ケプラーの手下がカジノの工事現場にもいたらしく、私達は囲まれてしまった。
「まいったねー、さて……どうやって切り抜けるかな」
「オレがこっちのやつらを倒す、イアーソンはそっちを頼むぜ」
レグルス達二人は子供達を傷つけないように追っ手を倒そうとしている。
しかしこのままではジリ貧だ。
ここで重要な事は敵を倒す事ではなく、無事にここを切り抜ける事だ。
「スピカ、風の魔法と火の魔法は今使えるかな?」
「ポル、大丈夫だよ」
私はスピカにこのカジノに火を付けるように指示した。
幸いここはただの工事現場だ。
もし燃えたとしても死傷者は出ない。
「スピカ、あの資材の山を燃やしてくれ」
「わかった、ファイヤーボール」
スピカの魔法は資材の山を一瞬で火の塊に変えてしまった。
そして、その火は一瞬で工事現場全体に燃え広がった。
「火事だー!!」
ケプラーの手下がうろたえている。
私はその隙にスピカに再度指示した。
「風の魔法で僕達の通る道を作ってくれ」
「うん、任せて、ウインドストリーム」
スピカの魔法は、燃え盛る火の中に私達の通れる道を作ってくれた。
そして私達は無事、カジノの工事現場から脱出する事が出来た。
「どうするんだよ、奴隷に逃げられたぞ!」
「今はそれどころじゃねーよ、この火事を消さないと……おれ達がケプラー様にぶっ殺される!!」
ケプラーの手下達は予測通り、私達を追いかけるよりもカジノの工事現場の消火作業に手を取られていた。
そして私達は隣にあった教会に逃げ込んだ。




