表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/292

61 教会の炊き出し

 オレはまた東の貧民街に来た。

 ケプラーとその手下が一掃された事で街の治安は保たれている。


 だが、街には相変わらず、浮浪者と娼婦と物乞いのガキがあちこちにいた。

 コイツらは仕事がない、稼ぎ方を知らないのでこの生き方しかできないのだろう。


 今はケプラーがいないのでまだ治安がマシだが、このまま放っておくとまたケプラーみたいな悪党が街を牛耳る可能性が高い。

 それをさせないためには、街を活性させて人が多く出入りできる場所にする必要がある。


「カストリア様ー。わたくしこの臭い耐えられませんわー」

「泣き言言うなァ! テメェはオレのいう事に従ってろォ」


 ベレニケが涙目で黙った。

 まあここは慣れない人間には耐えられない臭いの場所だ。


「後でお風呂連れて行ってやるから、我慢しろってェ」

「本当ですかーっ! こんな所にお風呂があるのですかー」


 お風呂と聞いてベレニケの表情が変わった。

 まあこの仕事が落ち着いたら、あの風呂場に連れて行ってやるか。


 オレ達はティコの教会に向かった。


「カストリア様、ようこそお越しくださいました」

「おゥ。邪魔するぜェ」


 ティコはオレ達に飲み物を出してくれた。

 今回の飲み物には、水で薄めた酸っぱい果物の汁が入った味がした。


「カストリア様、今日はどのようなご用事ですか?」

「とりあえず、隣の空き地と壊れかけの家に用があってなァ。良かったら住民をここに集めてくれねェか? タダで食事をさせてやるって言っていいぜェ」


 オレはバロとマルシェ達に持たせた食料を、教会のテーブルの上に並べた。

 そしてティコに炊き出しの料理をさせて、ガキ共には近隣の住民を集めるように指示した。


 お昼前には教会の前に大量の食い詰めた連中が押し寄せた。

 辺りの臭いが一層酷くなって、ベレニケはもう泣きそうだった。


 だが、オレはこの臭い程度なら全然問題ない。

 ベレニケはオレがこの臭いの中で全然問題ない事を、かなり不思議そうに感じていた。


 仕方ないのでベレニケには教会の二階の部屋で休ませておいた。

 所詮はひ弱な貴族、こういう時には役に立たないもんだ。


「よォ。テメェら、とりあえずここにある物は好きに食っていいぜェ。その代わりきちんと並べ。順番抜かししたやつは後ろに並びなおさせるからなァ」


 男の姿のオレの迫力にビビった連中は、順番抜かしをせず素直に並んで肉入りの煮込んだスープとパンを受け取っていた。


 食事の終わった連中はすぐに帰ろうとしていたが、バロとマルシェがそいつらを外に出さないように入口に立っていた。

 ただ飯だけで帰られたら、こちらとしても投資した甲斐が無い大損になってしまう。


 外に出してもらえない連中は、騙されたのかと思って怯えている奴らもいる。

 もう少し待て、全員が食べ終わってから話をするから。


 教会の中には、東の貧民街の大半の連中が集まったと思われる。

 ここに来る事の出来なかった行き倒れ寸前のやつとかは後で助けてやろう。


 しかしオレは前の人生と違うある異変に気が付いた。


 ここには、前の人生だと既に赤死病が流行っているはずなのに……誰一人として赤死病の感染者がいないのだ。


 オレ達はここに来る前にあえて赤死病に対抗するために魔法薬を全員に飲ませておいた。

 しかしそれが必要ないくらいに赤死病の感染者がいないのだ。


 これなら計画は予定通りに進みそうだ。


 オレは食事を終えた貧民街の連中を教会の中で全員出せない状態にしてから話を始めた。


「テメェらに伝えたい事がある。安心しろ、悪い話じゃァねェからよ」


 貧民街の連中はざわつきだした。

 悪い話じゃないといっても、食事に釣られたヤツらがどう扱われてもおかしくない。

 この貧民街はそんな場所だ。


「テメェら。今のままの生活でいいのかァ? 食うにも困る、寝る場所も無い、仕事も無い、貴族に虫けら扱いされる、そんなので生きていると言えるのかよォ!」


 一部の連中が喚いた。


「じゃあお前が何とかしてくれるのかよっ!!!」

「あァ。オレはその為に今日ここに来たからなァ!」


 これからコイツらを説得するぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

魔族の男がポンコツ女達に振り回されるギャグです

魔王軍最強触手幹部 左遷先の不毛の地で困窮する食糧事情を解決、なし崩しに出来たハーレムで本土に逆襲大作戦!!

元ゲームクリエイターが転生して救世主になるファンタジーです

『転生クリエイターのマップチェンジャー』圧倒的な魔力でチート能力を使い一瞬で天変地異を巻き起こす元ゲームクリエイターの転生者はハズレスキルの地面作成(マップチェンジ)を使いこなし救世主となる!

改心したワガママ令嬢が人生をやり直す話です。

ワガママ令嬢は挫けない 〜傾国の悪妃として処刑されましたが、今度こそ誰もに愛されるよう努力します〜

ロボアニメネタ始めました。

子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!?

ダンジョン配信でミミックが悪人を退治する話です。

社会のゴミ箱DQNイーター 元ラストダンジョン裏ボスつよつよピザ好きミミックが移動先のダンジョンでよわよわヒーロー仮面配信者と世直し配信!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ