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47 親父への説得

 カストリア商会設立から数日が経った。

 オレは今頭を悩ませていた。


 あと数日で、オレは親父やアルヘナ達と一緒に領地に戻る事になる。


 オレがいない間にカストリア商会が暗礁に乗り上げたら、折角の更生した元人さらいやガキ共の為の仕事がパアになってしまう。


「困ったなァ」

「カストル、どうしたんだよ」

「いやなァ、オレもうすぐ領地に戻るだろォ。その後カストリア商会をどうすれば良いかと思ってなァ」

「そうか、カストルみんなの為に会社作ったんだよな」


 本音はバロに任せたいとこなんだが、そうなるとバロの執事の仕事が出来なくなる。

 マルシェなら大人だから任せられるかもしれないが、貴族とのやり取りとなるとどうしても奴には荷が重い。

 困ったもんだ……。


「おねーさま? どうかされましたか?」

「あ、アルヘナかァ。どうにかこのカストリア商会をきちんと任せられる相手がいないのに領地に戻るのが心配なんだよォ」

「なんだ、そんなことですの」


 アルヘナはあっけらかんとしている。


「へ? そんな事ってェ」

「だったら、おねーさまがのこればいいじゃないですの。おとうさまとかえるのはわたしだけでだいじょうぶですわ」


 まさかこんな答えが返ってくるとは思わなかった。


「カストル、お前が残るならおれも残るぜ。おれ達親友だろ」

「そうか、そうだな。別に悩む事も無かったな」


 オレは自分で親父にここに残る意思を伝える事にした。



「親父ィ。話があるんだ」

「うむ、カストル、どうした」

「オレ、軍学校に入学したいと思ってるんだァ」


 これは出まかせだ。

 しかし、軍学校は王都にある。

 そして入学は10歳からだ。


「ほう、お前もそんな年になったか。しかしまだ早くないか?」

「親父ィ、実はオレ……会社を立ち上げたんだ」

「むう、会社だと?」


 厳つい顔の親父が眉を吊り上げた。


「あァ、今後この国は戦争でどんどん物価が上がり、金が無くなっていく」

「生意気な事を言うな、それが貴様に何を意味するというのだ?」


 やはり貴族は国の根幹が揺らぐ事なんて考えていないのだな。


「軍学校に入る前にオレはオレの兵隊を作りたい。その為にオレは孤児や奴隷を金で買った。そいつらにメシや住む場所を与えてやる事で後のオレのための最強の兵隊を育てるんだァ。今後国の金が無くなればそんな奴らがどんどん増える」

「ほう、貴様はその物乞い達が自身の兵隊になると思っているのか。ハッハッハ」


 親父はオレのやろうとしている事を馬鹿にしていた。

 所詮は子供の浅知恵だと見ているのだろう。


「確かに今は使い物にならないかもしれねェ。だが、そいつらが全員オレの忠実な僕になるとしたらどうだァ」

「何?」

「オレが死ねと言えば喜んで死ぬ。そんな奴らを恐怖ではなく、オレの力で育ててやるんだよォ」

「面白い。そんな荒唐無稽な事がもし出来たらお前に家宝の剣を譲ってやろう。ハッハッハ」


 親父はオレのいう事を聞いてくれた。

 後は今のうちに文句を言わせない約束をするだけだ。


「それでだ、親父ィ。オレは自身の兵隊を作るためにどんな方法でも使う。やり方には文句をつけないでくれよォ」

「ふむ、法に触れる事をしたら鬼の警備隊長である私自ら貴様を斬ってやる。それ以外なら何でもやってみろ」


 まあ法に触れる事をする気は無いので、親父の許可は取れたと思っていいだろう。


「親父ィ。ありがとうな」

「数か月に一度は領に戻ってこい。領民もお前を待っておるぞ」


 これでオレは二年間この王都に残る事が出来た。

 だがアルヘナは、親父と一旦領地に戻る事になった。


 この二年が勝負だ。


 オレが軍学校に入学するまでに、カストリア商会をオレがいなくても成り立つだけの会社に育て上げる。


 オレはバロと今日やる事を相談した。


「まずは麻酔薬を運ばせる事を進めよう。服の事は明日以降だァ」

「ああ、おれはマルシェさんと一緒に子供達の瓶の箱詰め作業を見守るよ」

「おう、頼むぜェ」


 子供達の午前中の仕事が終わった後、オレはコイツらをまた、高級レストランに連れて行ってやった。

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