22 誘拐団を倒せ!
オレはこの人さらい達の顔に見覚えがある。
今オレの目の前にいるのは、大の男が7人ほどだ。
雁首揃えているが、コイツらは前の人生でオレにコテンパンにのされて子分になった連中だ。
コイツらの弱点は覚えている。
それなら今のオレのこの小さな女の身体でも、充分に戦う事は出来る。
「オイオイ、貴族の坊ちゃんよぉ。剣のお遊戯なら他所でやりな……と言いたいとこだが、お前はこの後売られるんだよぉ!」
やはり大振りで切りつけてきたか、コイツは力任せにぶった切るしか能のない奴だ。
「バロ! 避けろッ」
「おうっ」
オレがタイミングを見てバロに指示を出したので、人さらいの剣は地面を大きく叩いた。
剣を空振りで地面を大きく叩く、これは響くんだわ。
びりびりと痺れた人さらいはオレが足払いをすると、簡単に後ろにすっ転んだ。
「このガキィ!」
別の人さらいが剣をブンブン振ってきた。
だがコイツも馬鹿だ。
横にブンブン剣を振るだけで間合いが取れると思っている。
この程度なら目をつむっても避けれるくらいだ。
「甘いなァ!」
オレはスライディングでコイツの後ろに滑り込んだ。
コイツはガニ股で前に剣をブンブン振っているだけなので、お留守な足元から簡単に背後が取れる。
「とりあえず寝てなァ!」
オレはその辺にあった石をコイツの首筋に叩きつけた。
気を失ったコイツはそのまま前面に倒れた。
「カストル……お前強ぇな……」
「バロ、後ろだァ!」
もう一人の人さらいがバロを捕まえようとした。
しかしバロは飛び上がり、人さらいのアゴにその石頭を勢いよくぶつけた。
「ア……ガガ」
「でりゃぁああー!」
バロはその後後ろにいた人さらいの足を掴むと勢いよく横回転でぶん投げた。
流石は村一番のバカぢからだ、バロにぶん投げられた人さらいは墓石に激突した。
「こ……このクソガキどもが……」
「もうあきらめな、マルシェ」
「! テメエ、何故オレの名前を知っている!?」
オレはフードの男の名前を名指しで呼んだ。
このマルシェ、前の人生でオレが誘拐を任せていたリーダー格だった男だ。
元々誘拐した子供を金持ちの変態貴族に売ったり、悪質な教団の便利な道具にするために売りさばいていた男だったが、オレがコイツを倒し、その縄張りと部下を全部奪い取った。
「悪党の名前は有名だからなァ!」
「黙れクソガキ、キサマもボコボコにして美少年趣味の変態貴族に売ってやる、せいぜいそのかわいい顔を泣き顔にして壊れるまで可愛がってもらえ!」
マルシェは手にした獲物をぶん投げてきた、コイツは鎖鎌使いだ。
オレはあえてその武器を絡め取った。
「ガキの力で大人に勝てると思うな!」
「ヘッ! だからテメェは甘いんだよォ!!」
オレはマルシェの鎖鎌の鎖部分を絡め取った武器ごと、下の墓地地下室入り口の開閉式の扉の柱に括り付けた。
そしてそのかんぬきを動かして扉を開錠した。
「そらよッ!!」
オレは扉横の鉄製のレバーを引いた。
すると歯車が動き出し、勢いよく開こうとした石扉が下からマルシェの頭部にぶつかった。
「ぐあぁっ!!」
石扉の直撃を受けたマルシェがそのまま気絶してしまった。
「だからテメェは馬鹿なんだよッ!」
オレは気を失ったマルシェを、ヤツの鎖鎌の鎖でグルグル巻きにした。
「テメェらのボスはオレが倒した、ボスの命が惜しければ大人しくしてろッ!!」
残っていた数名は、ボスのマルシェを倒されると思っていなかったのでたじろいでいた。
「うぅ……これは!?」
「よォ、気が付いたかマルシェ」
「何っ?」
「動くなよォ、動いたらテメェの首にこれをブッさすからなァ!」
オレはマルシェの首に剣の先端を当てている。
「わかった。俺たちの負けだ……」
「さァ、妹の所に連れて行ってもらおうかァ!」
オレは前の人生で部下だった誘拐団を、今回も完全に打ちのめして手下にした。




