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183 誤解を呼ぶ告白

 私達はその場にいたモンスターの群れをたった四人で全滅させた。

 縛られたままだった貴族の息子達はその戦いをずっと見ていたが、宙にぶら下げられていた縄はボロボロになっていたので、三人分の重さに耐えられず千切れてその場に落下した。


「ギャフゥッ!」


 情けない声を上げながら落下した貴族の息子が私を見上げた。


「ポルクシア……いや、ポルクシアさん、助けて、助けてください!」


 なんという無様な有様だ。

 血族主義で威張っていた貴族の息子は、先程の私達のモンスターとの戦いを見てすっかり怯えているらしい。


 まあコイツはアルター司教の息子で、前の人生でも信者の前で威張っていただけの小物だった。

 大人になってもそんな有様だったので、子供の頃のコイツがそれよりもひどいのは簡単に想定できる。


「ぼくを助けてくれたら……パパに言って巫女の道も用意してあげるから……お願いします」


 巫女だって?

 コイツが前の人生で平民出身の巫女を好き放題に奴隷にしていたのを私は知っていた。

 私はその時、貴族が平民に施しをしている見返りに好きにしていると黙認していたが、それは大きな間違いだと今の人生ではよく理解している。


「お断りです」


 私はニッコリと笑いながらコイツの提案を拒否した。


「ヒイいいーっ‼」


 アルター司教の息子は半べそになりながらその場で失禁してしまった。

 なんという無様さだ。


「オレ、アンタ……いや、貴女様をもう馬鹿にしません。いや、むしろウチのパパに言ってオレの婚約者にしてやる。そうすればもう貴女様は貴族になれる、いや……なれるんです」


 混乱しているのかわからないが、この貴族の息子はこともあろうに私を婚約者にすると言っている、それもかなりの上から目線だ。


 お断りだ。


 何が悲しくて前の人生で伯爵だった私がこんな貧乏男爵の息子の妻にならなければいけないんだ。

 コイツの父親のトゥカーナ男爵の評判の悪さは社交界でも有名だ。

 そんな奴の家族になるなんてまっぴら御免。


 悪口を人に撒き散らすだけの『口だけ男爵』の身内になるなんて恥でしかない。


「あら、素晴らしい申し出ですね。でも、私もう既に心に止めている方がおられるのです」

「何だと! この尻軽糞ビッチの平民女が!」


 私は短剣を男爵の息子の喉元に突きつけた。


「何か……言いましたか?」

「い、いいえ。ぼくなんかが貴女様の旦那になるなんて恐れ多くて……申し訳ございませんでしたぁー!」


 男爵の息子は地面に何度も頭を叩きつけて私に謝っている。

 それを笑って見ていたカストリアが私の傍に姿を見せた。


「悪ィな。コイツはオレが目を付けてるんだよォ。まァ早いもの勝ちってわけさァ。コイツ、いい女だろォ」


 おいおいおい、カストリア。よりによって何適当な事を言っているんだ?


「そういうわけなんでなァ。お前らはオレとコイツが付き合っているって事実をもっと周りに伝えてもらわないとなァ」


 そんなことを周りに言えば誤解されるだけな気がするのだが……。


「カ……カストル様。まさか、本当にポルクシアさんとお付き合いなさっているのですか?」


 あーあ、本当に誤解されることになってしまった。

 スバルさんがカストリアの出まかせを本気にしてしまっている。


「え? あ、あァ。まァ……成り行きでなァ。悪かったな、きちんと伝えなくてよォ」

「いいえ、大丈夫です。私もカストル様をお慕いしているので……ポルクシア様とはライバルということになりますけどね」

「え? ええぇー? ポル、カストル様とそういう関係なの?」


 あーあ、更にややこしい話になっている。

 早くこのダンジョンを出てこの誤解をどうにかしないと。


 しかしカストリアは私と付き合っているなんて、何を考えてそんな出まかせを言ったのだろうか……?


 私達は縛ったままの貴族の息子達を連れてダンジョンの入り口を目指した。

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