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181 反省しない連中

おかげさまでブックマーク100件到達しました。

これからも頑張るのでよろしくお願いします。

 私は呆れかえっていた。

 梁に吊り下げられた貴族の息子達は全員が全員誰かを犠牲にして生き延びようとしている。


 吊り下げられたままモンスターに、自分以外の誰かを押し出そうとしている。

 あまりに暴れたためか、三人ともロープが千切れそうだ。


 光の壁の魔法のおかげでその顔が見えたのだが、私は三人とも見覚えがあった。

 彼らは前の人生で私の顔色ばかりうかがい、努力しなかった劣等生だ。

 何かと言って私にすり寄ってきた彼らは、努力よりも媚びることで立ち位置を確保し、皇国学習院を最低レベルの成績で卒業した後はどうにか親のコネで地方公務員になったらしい。


 あまりの印象の無さに、私は彼らの顔をよく覚えていなかった。

 成長した後の姿で少し覚えがあるかといった程度だろう。


「助けてくれー」

「食うならこいつを食え、オレは不味いぞ」

「神様、おれは助けてください、コイツらは生贄にしていいですから」


 どいつもこいつも他人を蹴落として自分だけは助かろうという性根の腐った奴らばかりだ。

 モンスター達は縛られて落ちてきそうな貴族の子供達目掛け、石を拾って投げている。

 だが暗闇の中で投げる石はロープに当たらずむしろ下に吊り下げられた貴族の息子に当たっている。


「いてぇっ」

「ふざけんな、俺は子爵様の息子だぞ」

「下等なモンスターが、お前らなんてぶっ殺してやる。おれが呼べば兵士達がおまえらを殺すなんてすぐにできるんだぞ」


 見ているだけで醜い。

 実力はないくせにプライドだけ高いやつってのがこれほど無様だとは。


 この国の貴族という連中はこれほどどうしようもない連中ばかりだったのか。


「無様だなァ」

「まったく、あれだけ反省する機会を与えたのに……まるで反省していないようですね」

「……」


 スピカは何も言わなかった。

 あの貴族の息子連中がスピカに嫌がらせをしていたのは聞いている。

 今の優しいスピカでも、彼らを助けてやりたいという気持ちは起きないようだ。


「おーい、誰か、誰かいるのか。助けてくれー! 助けてくれたらパパに言って欲しいものを何でもやるから」

「オレはそいつよりも良い物をやるから、オレだけ助けてくれ」

「そんな奴らどうでもいいから、おれに言えば神殿の良い立場を将来約束してやるから」


 貴族の子供達は父親がお礼をするから助けて欲しいと言っている。

 彼らが何かをしようとか言う考えはまるで無いようだ。

 本音を言えば、助けてやろうという気持ちはまるで起きない。


 だがこれで彼らを見捨てては、私達も彼らと同じレベルに落ちてしまうことになる。


「カストル、あのモンスターはどれくらいの強さだと思う?」

「さあなァ。まァ、オレ達ならまず負けるわけないだろうなァ」

「だろうね。こっちは四人、モンスターは数十ってとこ、まだ百体にもなっていない」

「あれくらいならオレ一人でも倒せるかもなァ、でも面倒だから全員でやるかァ」

「言ってろ」


 私達はコボルト、ゴブリン、オークといったモンスター達の群れに飛び込んだ。


「でやぁー!」


 私の剣が一瞬でゴブリンの首を数体落とした。

 知らなかった、私の強さはここまでになっていたのか。

 今までに戦った相手がカストルやレイブンさん、ストーンバイターといったハイレベルの相手ばかりだったので、私は自身の強さがどの程度になっているのか気が付いていなかった。


「お、おい。あの平民、あんなに強かったのかよ……」

「オレのとこの兵士長より強いなんて、ナマイキだ」

「アイツを神殿の兵士に推薦すればおれパパに褒めてもらえるかも」


 吊り下げられたままの貴族の子供達は、この期に及んで好き勝手言っている。

 まああんな連中放っておいて、ここのモンスターを全滅させる方が先だ。


 モンスターはまだ数十匹残っている。

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