173 戦うか大人しくさせるか
ストーンバイターは真っ赤な目でオレ達を見ている。
普段大人しいやつほど怒るとマジで怖い。
ストーンバイターは子供を人質に取られたことでオレ達を完全に敵とみなしたようだ。
――GUOOOOOO!――
ストーンバイターは周りの石にパンチを叩き込み、細かくしたものをオレ達に投げつけてた。
「危ねェなァッ!」
オレはストーンバイターの投石を避けた。
「ぎゃふっ!」
だがどうやらオレの避けた石は貴族の逃げていたバカガキに当たったようだ。
幸い頭には当たらなかったようだが、その投石は腕に当たり、手甲ごとへしゃげたらしい。
「いてえ。いてえよー」
ガキはその場にヘタレ込み大声で泣き出した。
あまりの情けなさにオレは何とも言えない。
偉そうに威張っていても所詮コイツらは親の力が無ければ何もできないガキ。
おなじ年の頃にはたった一人で大人と戦って日々の食事にありついていたオレとは年季も経験も違う。
「バカか、テメェらがあのモンスターを怒らせたからだろうがァ! この身の程知らずがよォ!!」
「カストル様、お願いです。アイツを倒してください」
コイツらの自分勝手ぶりには呆れ果てる。
弱いヤツを人質に取ってモンスターを倒そうとしていたのに、いざモンスターが怒って返り討ちにしてきたら途端にオレに媚び諂う。
ガキの頃からこんな教育を受けていれば、そりゃああんな腐った貴族連中になるわけだ。
よく見ればどいつもこいつも、コイツらはオレが前の人生で酒池肉林の乱痴気騒ぎパーティーを主催した時に参加していた連中だ。
コイツらはあの時は平民の女をいたぶって喜んでいた。
このまま放っておけばまたあのようなバカのまま育ったクソガキみたいな大人になるのだろう。
コイツらはここで痛い目を見た方が良いのかもしれない。
「ヤダねェ。テメェで蒔いた種だろうがァ。テメェで何とかしろよ」
オレはコイツらを突っぱねた。
「そんな、お願いします。パパに言ってカストル様の望むものを何でも差し上げますから、どうか助けてください!」
コイツらの父親か、まァここで恩を売っておくのもアリかもな。
しかし自分ではなに一つ出来ないガキ共ばかりだ。いや、今のポルクシアやオレが人よりも二度目ということで人生経験を経ているからなおさらにそう見えるのかもしれないな。
「仕方ねェなァ。テメェらはさっさと上に戻れ。どうせここに来たってことはァ上に戻る道あるんだろうがよォ」
貴族のバカガキは他のガキ共に連れられて、元来た道を戻ったようだ。
「ポルクシア、テメェも逃げたきゃ逃げていいんだぜェ」
「冗談を言うなよ、僕があんな連中と一緒だと思うのか?」
「まあ、前の人生のテメェならそうかもなァ」
「減らず口を言っているヒマがあるならアイツをどうにかしよう」
オレとポルクシアは、怒り狂うストーンバイターをどうにかしなければここから帰れない。
普段大人しいやつほど怒らせると手がつけれなくなるというが、あのデカブツはまさにそれだろうな。
オレはストーンバイターを大人しくさせるか、倒すか今考えている。
無理して倒してもオレがケガをしかねない。
それはポルクシアも同じだ。
「よォ、テメェはアイツを倒すのと大人しくさせるの、どちらの方が難しいと思う?」
「どちらも厳しいな。でも戦えば間違いなく大怪我しかねない相手だ」
ポルクシアもあのストーンバイターとはあまり戦いたくないようだ。
そもそもストーンバイターがブチ切れたのはあの貴族のガキ共が子供を人質に取ったからだ。
それなら子供の安全を確保してやれば、奴は大人しくなるかもしれない。
オレは様子を伺った。
ストーンバイターの子供は暴れ狂う親を止めようと必死に引っ張っているようだ。
オレのカンが正しければ、あの子供はオレ達に敵意はもっていない。
それなら子供からこちらの味方にする必要がありそうだ。




