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171 大空洞の奥で

 土砂崩れに押し流されたオレとポルクシアは、廃坑の一番奥の方の大空洞に落下した。


「困ったなァ。かなり下に落とされたみたいだぜェ」

「そうだね、まあ二人共怪我が無かったのが不幸中の幸いってとこかな」


 ポルクシアは光の壁を作る魔法でオレと二人分の防護壁を作った。

 そのおかげで二人共押し流されはしたものの、大したけがは無さそうだ。


「よォ、動けるかァ?」

「大丈夫だ、問題ない」


 そう言って立ち上がろうとしたポルクシアだったが――。


「痛っ」

「オイッ、どうした」

「ちょっと、足をくじいてしまったみたいだ」

「大丈夫じゃねェだろ、問題だろうがァ!」

「ハハハ、ちょっとやっちゃったみたいだな」

「ちょっと待ってろ、しょうがねエなァ」


 オレは手持ちの服の布を引き裂き、ポルクシアの足首に巻いてやった。


「すまない、カストリア」

「まァこれはテメェが悪いわけじゃねェからなァ。謝る必要はねェぞ」


 その後オレはうずくまるポルクシアを抱え、抱き上げた。


「ちょっ……ちょっと何するんだよ、恥ずかしいよっ」

「誰も見てねェだろうがァ、大人しく抱かれていろッ」


 オレはお姫様抱っこでポルクシアを抱いている。

 他のヤツが見たらどう見ても、男の子が女の子を抱きかかえているようにしか見えないだろう。


「バカバカバカっやめろって」


 ポルクシアが顔を真っ赤にしながら両手でオレをポカポカ叩いてきた。

 そんなに抱きかかえられるのが嫌なのか?

 暴れたポルクシアのせいで、オレの手元のランタンが滑り落ちた。


「アッ!!」


 ガチャン!


 ランタンは音を立てて割れてしまい、辺りが真っ暗になってしまった。


「黙ってろォ、テメェは怪我人なんだよォ」

「……」


 どうにか予備の小さな火を付けたが、こんなのはすぐに消えてしまう。

 ポルクシアはふくれっ面で黙ってしまった。


 それよりもどうにかここから脱出しないと。

 しかし運の悪いことにポルクシアがさっき暴れたことでランタンが割れてしまったので、灯りが無い。


「カストリア、ちょっと僕を下ろしてくれ」

「オイ、何するつもりだよォ?」

「ライトウォール!」


 ポルクシアは魔法で光の壁を作った。

 その後、光の壁は向きを変えられ、オレとポルクシアの上側に移動させられた。


「これなら崩落のダメージも受けないし、この灯りで当分は動けるはずだ」

「なるほどなァ、魔法にこんな使い方があるとは思わなかったぜェ」


 ポルクシアは魔法の天才なのかもしれない。

 ポルクシアの作った光の壁で周りが明るく照らされたことで、オレはこの大空洞がどのような造りをしているのかを大体把握できた。


「マズいぜ、ここはかなりの大空洞のようだぜェ」

「カストリア、それはどういうことだ?」

「これだけデカい場所ということは、大昔からここは存在してるってェわけだ。それに、これだけデカい場所なら……デカい生き物が住める……」

「つまり……ここにいるモンスターは坑道とは比べ物にならないほど……」

「デカいやつがいるってことだぜェ……」


 オレは非常に嫌な予感がした。

 それはどうもポルクシアも同じらしい。


――GUOOOOOOOO!


 何かの唸りが聞こえる。


「アレって……ひょっとして……!」

「あァ、どうやらモンスターのおでましみたいだぜェ」


 オレ達が唸り声の聞こえた方を向くと……。


――GUGOAAAA――!


「出たァー!!」


 凄まじい雄たけびが辺りの岩を響かせる。

 そしてその雄たけびは岩を崩れさせた。


 岩の崩れた石をむんずと掴み、持ち上げる巨大な手が見えた。


「何だアイツは……」

「知らねェよ。でも……アイツは相当ヤバいってことだけはァ確かだなァ」


 巨大な手は大きな石を掴むとバリボリと何度も噛み砕いていた。


「アレは、ストーンバイターかっ!!」


 オレとポルクシアはどうやら大空洞の一番奥でトンデモないバケモノと出会ってしまったらしい。


 石を食べ終わったストーンバイターはオレ達を見下ろしていた。

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