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113 食事中の談笑

 食堂に到着した私達はシリウス爺さんに呼ばれ、そして全員が同じ席に座った。


「いいんですか? アタシ達が貴族様と同じ席で……」

「いいんぢゃよ、儂はこれでも男爵ぢゃ。それにここには儂の教え子も沢山おるでな」


 食堂に着いた私達は教師陣に囲まれた。

 中には前の人生で指導を受けた教師の顔も何人も見えた。


「シリウス学長、お久しぶりです!」

「儂は引退した身ぢゃ。元学長でええわい」

「今年はシリウス学長の教え子が入学するかもともう噂になっております。なんでも難問の試験を時間内に終わらせたのが三人いるとか」

「ここにおるのがその三人ぢゃよ」


 私は何も言っていないのに、シリウス爺さんが三人と言ったことに納得した。


「ぢゃが、正しくは一人は儂の教え子のベレニケちゃんの弟子ぢゃよ」

「皆様、お久しぶりですわね」

「おお、ベレニケ様もおられたのですね」


「これはこれは、我が校一の才媛と名高いベレニケ男爵様のお弟子とは」

「それでいながら、確かカストル様はあのヘミニス伯爵様のご子息とお聞きしております」


 私の父親はかなりの実力者だとは聞いていたが、学習院時代から有名だったのか。


「ですが、まさかシリウス元学長が、平民の特待生枠に推薦状を出してきた時には目を疑いましたよ。いつもの悪戯、悪ふざけをやってきたのかと」

「儂はもう引退した身ぢゃ。それにあれは悪ふざけでは無く、いついかなる時も臨機応変に対応するための訓練ぢゃったのだが……なんぢゃお前ら儂をそんな風に見ておったのか」


 確かにシリウス爺さんは悪戯好きでよくロクでもないことをするイメージがあるが、学長の頃からあまりやっていることが変わらなかったのか。

 まあ今となっては慣れたことだったが、学習院の初等科の時はもうシリウス爺さんはいなかったので前の人生の時にはそのことは知らなかった。


 まあマナーも無視して目の前で大口を開けて食事をしているお爺さんが、皇国学習院の元学長だとは知らない人に言っても信じないだろう。


「まあシリウス様はわたくしにもよく悪戯をしてくれましたからね……。このお礼はしっかりとさせていただきます!」

「べ……ベレニケちゃん。笑顔が怖いんぢゃが」

「あら、そんなことありませんわよ。わたくし怒ってなぞいませんから」


 これは間違いなく怒っている、こういうニコニコ笑いながら怒るタイプは厄介だ。

 今は改心しているとは聞くものの、やはりベレニケ男爵は性格に問題がありそうだ。


「お師匠様、こちらの貴族様は?」

「おう、スピカちゃん。コイツは儂の弟子だったベレニケちゃんぢゃ。どうやら今はそこの娘の家庭教師をしておる様ぢゃてな」


 シリウス爺さんは男装しているカストリアを一瞬で女だと見抜いている。

 魔力で相手の実体を感知しているのだろうか。


「まーた、お師匠様は可愛い子を見るといやらしい目で見るんですから、そこにいるのは男の子ですよ」

「いやー、可愛いとついつい目が行ってしまうのぢゃよ」


 これが誤魔化しだと気が付いているのは、この中では私だけだ。

 カストリアが女だとはここにいる誰もが気が付くまい。


 周りで教師連中が苦笑いしている。

 まあいつものシリウス爺さんの態度だと見ているのだろう。


「お師匠様、僕そろそろ次の試験の準備がありますから」

「おうおう、そうぢゃったな。まあ余裕ぢゃろうが頑張るんぢゃぞ」


 食事を終わらせた私はスピカと二人で試験会場に戻った。


 遠くから大きな声が聞こえてくる。


「カストルー! 何でおれだけ置いてけぼりなんだよぉー!」


 どうやら執事枠で試験を受けているカストリアの身内のようだ。


 遠目に見た感じ、まあ友人といった感じだろうか。

 あの話し方は間違いなくカストリアを男だと思っている言い方だろう。


「あ。あァ、悪かったな」

「おれのメシ残ってるんだよな」

「まあどうにか」


 執事見習いらしき少年は急いで食堂の方に向かっていた。

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