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4.村? ★

 リユに案内されて10分程歩いてたら村の入り口が見えてきた。案外近い場所だった。ただ何というか、薄暗い森の中を歩くのはちょっと抵抗があった。


 だってほら、こういう異世界って基本魔物とか出てきそうじゃん? リユに魔物がいるか聞いてみたら普通にいるみたいだった。

 被害とかないのかなと思っていたら、魔物が嫌いな匂い袋を森の街道や村周辺にぶら下げていると教えてくれた。


 ただ、それでも出るときは出るみたいだ。村には魔物を狩る狩人が2人いて、かなり強いんだとリユは誇らしげだった。


 でも、なんか少なくない? お兄さん、なんか不安になってきたぞ。


 リユは出歩いて平気なのかと聞いてみたら、「鼻が利くから魔物がいそうな場所には近づかないから大丈夫! ふんすっ!」と胸を張っていた。

 流石獣人の子。鼻が良く利くらしい。凄い。因みに俺が居た場所に来たのは香ばしい匂いに誘われてきたらしい。うん、流石……。


 リユと話しているうちに森を抜ける。ひらけた場所に出ると、そこには家が3軒しかたっていなかった――。


 え? これが村? どう見ても規模が小さすぎないか? お店とかそういった類がないぞ……。というか、一つ一つ家は大きいが、掘っ立て小屋……。


 口をあんぐりと開け驚いていると、リユが家の方へと駆けていく。ドアを開けて顔を覗いて――。


「おばぁちゃーん! 帰ったよー! あと、お客さん連れてきたー」


 リユが声をかけると家の中から獣人の老婆が出てきた。腰はかなり曲がっていて、杖をついていた。ゆっくりした動作でこちらを見ていたので、俺は軽く会釈する。


 優しそうなお婆さんはリユの頭を撫でるとこちらに歩いてきた。


「あらあら、旅の方?」

「えっと――」


 異世界から来ました。この世界の事を知りたいので色々教えてください! なんて言えねーしなぁ……。


 なんて伝えようか考えていたら、リユがお婆さんの袖を引っ張っていた。


「あんね、おばぁちゃん。リユね、リンタローにとっても甘くてふわふわした物、食べさせてくれたの! 凄い美味しかった! あとね、薬草集めも手伝ってくれてこんなに集まったよ! 見て見て!」


 リユは背中にしょっていた筒を下ろし、中をお婆さんに見せる。


「あらあら、それは良かったわねぇ。旅のお方、なんとお礼を言ったらよいか」

 

 ペコリと頭を下げるお婆さんに俺は手を振る。


「実は少しお聞きしたいことがって……その……なんていうか」


 とりあえず、旅人のふりをするか。


「お恥ずかしながら、この国に来たばかりで勝手が知らなくて、その……色々教えていただけたらなぁ、と。……ははは」


 これでごまかせるか?


「あら、どこの国からいらしたの? 水の国? 土の国?」

「いや、あの……」


 俺が口ごもっていると、お婆さんが何か気づいたように頭をさげた。


「あらあら、ごめんなさい。もしかして火の国から逃げてきたのかしら?」

「えーと」

「大丈夫よ。言いずらいものね。安心しなさい、実は私たちも火の国から逃げてきてきたのよ。深いことは聞かないわ」


 なんか話が凄い方向へと変わったな。そう言えばリユが言っていたっけ。逃げてきたって。リユが赤ん坊のころに。


 まぁ、根掘り葉掘り聞かれるよりは勘違いされていた方が都合がいいか。


「あなた一人で逃げてきたの?」

「まぁ……ははは」」


 そういうことにしておく。


「そう、大変だったでしょう。孫娘もお世話になったようですし、お茶でも飲んでいって」

「あ、ありがとうございます」


 お言葉に甘えて家の中に入ると、爽やかな香りが鼻をくすぐる。壁には様々な草が逆さに吊るされていた。

 何種類もある草に唖然とする。お婆さんは薬剤師なのかな? お姉さんの為にリユが薬草を集めているくらいだから、調剤をしているのだろう。


 家の中は間仕切りなどは一切なく、奥の壁の隅にベットに寝ている少女が居た。年齢的に15歳前後だろうか。ただ、その顔は少しやつれていた。


「お姉ちゃん、ただいまー。薬草取ってきたよ。ほら、こんなに沢山ー!」

「リユ、ありがとう。こほっ、こほっ……えっと、そちらの方は?」

「犬屋敷林太郎です。丘で飯食っていた時にリユと知り合いまして、薬草集めていると聞いたので」


 軽くお辞儀をすると少女は体を起こしこちらへ向く。なんか起きるのも辛そうだ。


 リユはお婆さんに採取した薬草を渡している所だった。


「こほっ、こほっ……そうですか。ありがとうございます。林太郎さん」

「いえ、大したことでは。あの……具合相当悪いんですか?」


 少女はやつれた顔で「そうです」とほほ笑む。喋るのも辛そうだった。

挿絵(By みてみん)


「この地に来てからこの子の具合が悪くなってしまってねぇ、色々と薬草を調合して飲ませているだけど一向に回復しないの」 


 お婆さんが飲み物を持ってきて俺に渡しながら事情を話してくれた。5年前から調子を悪くし、初めは歩けていたようだが年々悪化しついに歩けなくなってしまったようだった。


 月一で行商人が来るようだが、行商人から手に入れた薬も大して効かなかったらしい。


「王都まで治療しに行こうにも、この子の体力が持つかどうか……」


 こほこほと咳き込む少女の背中を摩るお婆さん。「お姉ちゃん」と呟きながらベットに寄り添うリユの姿に涙腺が緩む。


 あかん。俺こういうのに弱いんだよな……。何とかしてあげたくなってしまう気持ちになる。


「………」


 俺は考え込み、とあるゲーム『アプリ』に病気を治すアイテムがあったのを思い出す。ストーリーイベントで手に入るクエストアイテム。


 近未来の作品のゲーム『アンノウン』だ。


「あの、もしかしたら俺が持っている薬で病気が治るかもしれません。ちょっと待っててください」


 俺は『管理ツールアプリ』を起動し、ゲーム『アンノウン』をタップする。空中に開いているウインドウにお婆さんと少女は驚いていた。リユは一度見ているから驚いてはいなかった。

 もしかして二人の反応からするに、この手のウィンドウはこの世界にはないのかもしれない。そんなことを考えながら目当ての物を探す。


 キークエスト欄のアイテムを一個ずつ目視していく。


 あ、あったこれだこれ。


 目当ての物をタップする。


-------------------------


 アイテム名:医療用ナノマシン

 ランク  :『 S 』

 説明   :


 病気を治すカプセル錠剤で、2つのプログラムが組まれている。細菌を分析し抗体を作り細胞を活性化させるプログラム。先天性遺伝の病気だった場合、正常な細胞へと作り変えてしまうプログラム。呑んでから1時間ほどで治療を終えるが、物凄いカロリーを消費する。


 被験者が死ぬまで半永久的に稼働し続けるため、接種以降病気にかからなくなる。


 

-------------------------


 たぶん、これで治るだろう。

 このゲーム、エイリアンを駆逐するストーリーで相手の星に攻め入る際、星が汚染されているからこのアイテムを開発しないとストーリーが進まないんだよなぁ。


 結構めんどくさいクエストだから困る。


 空間がガラスのように弾け、救急ポッドと書かれた箱が具現化。それを手に取り中から一粒の錠剤を取り出す。


「はい、これ薬だから飲んで。1時間ほど横になって寝ていればよくなるはずだよ」


 俺は未だに驚いている少女に錠剤を渡した。これならきっとこの子の病気も完治するだろう。


「あ、あの! うっ……ごほっごほっ!」

「はいはい、大丈夫だから。お婆さん、お水くれますか?」

「え、ええ。いま汲んでくるわ。ちょっとまっててね」

「リユが持ってくるー!」


 おい、リユ! 走ったら危ないぞ! まぁ、薬と知ってお姉ちゃんに早く飲ませてあげたいんだろうな。家族思いのいい子だ。

 リユが持ってきた水で薬を飲ませた後、少女はウトウトとし始めた。薬が効きはじめているのだろう。ゆっくりと横に寝かせる。


 スヤスヤと寝息が聞こえて、突然少女の身体がぼんやりと光り出した。ナノマシンが細胞を修復している光にお婆さんが拝みだした。


 いやいやいや、お婆さん大丈夫だって。


「えっと、1時間ほどで目覚めるはずだから、起きたら栄養のある食事でも食べさせてください。あ、でも病み上がりだと流動食のほうがいいかも」


 お婆さんは少し考え――。


「薬膳煮のスープじゃダメかしら? 健康にいいわよ」

「おばぁちゃん、それ拙いからリユはイヤ! ライ姉ちゃんたちが獲ってくるお肉がいい!」


 リユ、お婆さん凄く悲しそうな顔しているぞ。

 イヤイヤしながら地団太を踏む。お姉ちゃん起きちゃうって。


「流石に病み上がりで脂っこいものは胃がびっくりしちゃうでしょ。薬膳も体にいいかもしれませんが、もっと栄養のあるものがいいんだけど――あ、そうだ!」

「リンタロー、なになにー?」

「代わりに俺が料理しましょうか? 材料も俺が用意しますよ」

「いいんですか?」

「ええ。(材料は只だしな)」

「わふー! やったー! リンタローの作るご飯楽しみー!」


 わふわふ言いながらピョンピョン跳ねるリユ。期待されるのはちょっと嬉しい。


 さて、この家の台所を借りようとしたら小さな釜戸と水瓶が2つ。うーん、レトロだ。現代っ子な自分ではこの世界の台所事情で調理は難しい。


 なので、ゲーム『アプリ』から必要なものを取り出す。まずは調理台の調達だ。


 『料理対決 ザ・ワールド』は現代風のシステムキッチンなので、自分としては折角ノスタルジックな異世界なのだから雰囲気のある調理台がほしい。


 お婆さんに家の周りで開けた場所がないか聞いて、家の外に出ていった――。


 

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