2.獣人の子 ★
――『管理ツールアプリ』
これは俺のスマホにダウンロードしていた『アプリ』の機能を異世界に影響を与える能力があるみたいだった。主にゲームの『アプリ』だが、プレイデータ内の持っているアイテム・武器・スキル・魔法がこの世界で現実に使えるようになる。
原理は知らんが、これが俺の能力になるみたいだ。はっきり言ってチートである。だってそうだろ? 剣と魔法の世界だった場合、近未来的な武器やアイテムはこの世界にとってアドバンテージになる可能性がある。
ファンタジー系のゲームを持っていたので、魔法武器はある事にはある。ただ、俺が持っている物よりこの世界の魔法水準が上だった場合が拙い。逆だったらいいのだが。
まぁ、この世界がどういった世界なのかはまだ知らない。憶測の話だ。たた一つ言えることは、遠くに見える街並みは中世時代のような建物ばかり。技術水準がどこまで進んでいるのか知る必要がある。
まずはあの遠くに見える街にでも行ってみるか。
あ、その前に言葉は通じるのか? 『翻訳アプリ』があるけど通用するかな?
俺は『翻訳アプリ』をタップし起動させると、起動ウィンドウが立ち上がった。
『翻訳機能をONにしました。今後、双方の言語が自動で翻訳されます』
おおー、こちらの言葉が相手にも翻訳されるのか。便利な機能だな。これで言葉の壁もクリアできた。
翻訳のウインドウを閉じる。
にしても、あの街まで結構距離あるな……。やっぱ魔物とかいるんかな。展望できる丘の上から街の方へと視線を向ける。草原や森林が生い茂り、徒歩で行くには随分とかかりそうだった。
あー、乗り物系のゲームをダウンロードしておけばよかった。車とかバイク興味あまりなかったからなぁ……。
うーん、RPGの召喚幻獣って乗れるのだろうか? 楽に移動できないか考えたが、後悔先に立たずとはこのことだ。
街を見つめながら鮎の串焼きを食べるていると、離れた場所の木陰から物音が聞こえてきた。
俺はビビッてそちらへと顔を向けると、人影のようなものが木の陰に隠れた。
今のは……小さな女の子?
俺はじっとその木を見つめる。
沈黙の時間が流れる――。
………………
……………
……
ぐぅ~~~~~。
腹の虫が聞こえてきた。
俺は木の陰に隠れている子に話しかけてみることにした。現地の子だったら、情報収集のチャンスでもある。
なるべく警戒心を持たれないように注意しながら声を掛ける。
「お~い、そこの君。腹減ってるんか? 食いもんあるけど一緒に食べるか?」
鮎の串焼きを左右に振る。
暫く沈黙――。
出てくる気配なし……。
見た感じ子供だったな。食べ物の匂いで釣ってみるか?
俺はゲーム『料理対決 ザ・ワールド』から『フライパン』・『ボール』・『泡だて器』・『卵』・『牛乳』・『ホットケーキの素』……etc ホットケーキを作るのに必要な材料や器具を具現化する。
手際よくホットケーキのタネを作り、焚火の上でフライパンで焼いていく。甘い香ばしい香りが辺り一面へと漂っていく。何枚も何枚も作っていくと、木の陰から小さな女の子が木の陰からちょこんと顔を覗かせていた。涎を垂らしながら。
俺はその子の姿を見て少しばかり驚いた。
頭の上に獣耳があったのだ。そう、獣人の子だ。へー、いるんだ。獣人。ふぁんたじー!
テンションが上がったが、怖がらせてはダメだと自重し優しく声を掛ける。
「腹、減ってんだろ? 金も取らないし、取って食わないから安心しろ。俺スペシャルの蜂蜜たっぷりふんわりホットケーキだ」
ごくりと、女の子の生唾の音が聞こえたような気がした。
丸太の椅子の上にホットケーキの皿を置く。ここに座ってお食べとジェスチャーをすると女の子は木の陰から恐る恐る出てきて、俺の近くまで近寄ってきた。
両手でローブをぎゅっと握りながら「ほ、ほんとに食べていいのかな?」というような顔をしている。
「甘くて美味いぞ? ほら、ここに座って食べな?」
獣人の女の子は丸太の端に座ってホットケーキを恐る恐る食べると、顔がふにゃりとした表情になった。
顔をほころばせながら――、ゆっくりと味わうように食べているその様は、料理を作った者として感慨深いものがあった。
そう言えば俺――、誰かのために料理を作ったことがなかったな……。
じっと獣人の子を見つめる。
なんだか嬉しくなり、俺はまたホットケーキを焼き始めた――。
「美味いか?」
女の子はもぐもぐと食べながら、頭をコクコクと縦にふる。
「そうか。まだまだ作れるからな」
俺は獣人の子が満足するまでホットケーキを焼いてあげた――。




