17.ミリィの疑問 ★
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果樹園で和気あいあいとしているアリサ達を眺めていたら、お婆さんがゆっくりと新居ではない家の方へと向かっていった。
「よいしょっ……、ミリィちゃん、ちょっと一仕事してくるわね」
「あら? もう戻るの? もしかして魔除けのブーケ?」
「ええ、そうよ。魔物が襲ってきたんでしょう? 林太郎さんがやっつけてくれたからよかったものの、もしかして効果が薄れてきたのかと思ってねぇ」
「ああ、原因は林太郎の料理よ。料理の匂いに釣られてきたいみたいね。現に、狩りの途中であのバカ――、ライも匂いに釣られて戻ろうとしていたし」
流石獣人……。嗅覚が鋭いな。というかライ、狩り放棄しちゃダメでしょ……。
「あらあら、困ったわねぇ。どうしましょう」
頬に片手をあてて本気で困るお婆さん。
うーん、確かにニンニクはいい匂いはするが、魔物が興奮して襲ってくるほどか? と思い、使った材料のアイテム欄をさりげなくウィンドウ確認してみる。
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アイテム名:にんにく(異世界仕様)
ランク :『 N 』
説明 :
料理の味付けとしては最高の材料。
滋養強壮効果があるが、匂いには魔物を呼び寄せるデメリットがある。
効果:体力上限UP+500(一時間)
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「ぶふぅ!!」
あの熊が襲ってきたのこれのせいだったーー!
「ん? どうしたの林太郎」
「何でもないよー」
俺は平静を装う。
いやいや、どんだけにんにくの匂い凄いだよ……。
これはあれだ、魔物を近づけさせない対策をするしかない。
『魔除けのブーケ』も確実に魔物を近寄らせないわけじゃないって言ってたし、代わりになる物を出すしかない。
にんにくが使えないってなると、リユ達が悲しむだろうからなぁ。
よし――!
俺は開きっぱなしのウィンドウを操作し、別のゲームのアイテム欄を確認する。
目当ての物を見つけて俺は顔をあげる。
「提案なんだけど、『魔除けのブーケ』の代わりになる物があるから、それ使おう」
「え? あるの? でも、完全に近寄ってこないってわけじゃないんでしょう?
「大丈夫大丈夫。特殊なアイテムだから」
目当てのアイテムをタップして説明文を確認する。
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アイテム名:女神の石碑(異世界仕様)
ランク :『 UR 』
説明 :
女神の力が込められた石碑。
魔族や魔物を完全に近寄らせない力が込められている。
神話時代の産物。設置型アイテム。
効果範囲は半径2kmで魔物はリスポーンしない。
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これ、『勇者と魔王』ってゲームの設置型特殊アイテムなんだけど、このゲーム小ネタ満載だったなぁ。
このアイテム、女神の神殿を護っている石碑なんだけど、進行途中でアイテムとして持ってけちゃうんだよ。戦闘で魔王を倒すのが当たり前だけど、これでも魔王倒せちゃうだよね。
魔王城の魔王の前で設置すると、魔王が「ぐあああああ!!」ってなって倒せちゃうんだよ。戦闘なしで……。
フリーゲームでドット絵だったし。完全に制作会社のお遊びです。本当にありがとうございました。
懐かしさで思い出していると、ミリィがウィンドウを覗いてきた。
「へー、『魔除けのブーケ』以上の効果があるアイテムなのね」
「ああ。ミリィ一つ聞きたいんだけど『魔除けのブーケ』の効果範囲ってどれくらいなんだ?」
ミリィは専門の人に聞いた方がいいというような仕草でお婆さんに顔を向ける。
「効果は10日程で、一つに対して5メートル程よ。村の周辺に囲うように木の枝にぶら下げているの」
「そうですか。では同じように等間隔で村を囲うように設置しましょう」
オンリーワンアイテムだが、『管理ツールアプリ』の能力のお陰で個数は無限だしな。
俺はアリサ達に事情を話し、ミリィに設置場所を案内してもらった。
アリサはついてきたそうだったが、「大丈夫大丈夫」とだけ声をかけといた。
最初は村の入り口付近。ふと思ったのだが、効果範囲が半径2kmあるからもう少し村から離れた場所で設置することしようとミリィに提案。
ミリィは了承してくれて少し村から離れる。正確な距離とかまでは分からないので大体の距離だが。
「この辺に設置するか」
少し開けた道端に『女神の石碑』を設置することにする。
設置箇所を決めると、空間がガラスのように弾けて『女神の石碑』が具現化した。
設置した瞬間、石碑を中心に一陣の風が吹き抜けるとあちらこちらで魔物の声が聞こえてきた。
グオオオオオ!
ブヒィィィィ!
「なんか、魔物の断末魔が聞こえてきてない?」
「う、うん」
ミリィが若干引いていた。
「村が安全になるってことでおけおけ」
「はぁ。またとんでもない物出してきたわね林太郎。ま、あたしたちは助かるんだけどね」
最初呆れた声を出したミリィだったが、その表情は優しかった。
俺はしゃがみ込んで石碑に設置具合を確認した後、立ち上がり次のポイントに向かう。
ミリィは数歩遅れて付いてきている。
「ねぇ、林太郎。疑問に思ってることがあるんだけど」
「んー?」
距離と方角を気を付けながら歩いていた為か、生返事してしまう。
「どうしてここまでしてくれるの? 赤の他人なのに」
確かに。知り合ってまだ2日しかたっていない。普通に考えればそうだよな。
どうしてか――か。
ミリィの言葉に間を置いてから口を開く。
「最初は、リユと出会った時にこの世界の情報を手に入れられればいいと思っていたんだ。この能力があれば何でもできるし、どこへでも行ける。
だから、村で話を聞ければ直ぐに出発するつもりだった」
ミリィは黙って聞いている。
「病に伏せるアリサにリユが寄り添う姿を見て、何とかしてあげたいって思ってさ。……俺、血の繋がった家族はもういないんだよ」
言葉を選びながらゆっくりと答える。
美味しそうにホットケーキを食べていたリユの笑顔を思い出す。
「元気になったアリサにリユが抱き着いて、ミリィとライがお互いに頬を抓っている姿を二人が見て笑いあってる姿に、――なんか、尊いって思ったんだよ」
仲のいい家族が死に別れるのは辛いことだ。ミリィとライもその辛さは分かっているはずだ。
「だからかな、あの子たちが安心して暮らせるように何か残してあげようと思ってさ。――ただ、それだけなんだ」
ずっと黙って聞いていたミリィは目をつむり、微笑む仕草で「そう」とだけ答えた。
「ま、林太郎が居なくても私とライがあの子たちを守るけどね」
「はは、そうだな」
「ええ、そうよ」
お互いに笑いあう。
「――それに、ミリィとライも報われていいと思うんだ。今まで頑張ってきたんだろ? あの子たちの生活を守る為に」
「――……」
「誰にだって幸せになる権利はあるんだ」
――空を見上げる。
「きっと君のお兄さんも天国でそう思っているはずだ」
「馬鹿ね……。私はそんな軟な女じゃないわよ」
ミリィはそう言いながら俺を追い越していく。
「そうだな」
その横顔はどことなく嬉しそうだった――。




