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14.エルフ

あけましておめでとうございます。

12月は仕事で忙殺されてました。

正月休みに何話か投稿できたらいいなぁ。

 林太郎たちがいる森からさらに奥深く――。大樹が連なる森林の中央には、神の樹と呼ばれる『神樹』がある。

 風の国に豊穣の恵みを与えるとされ、ご神木として崇められていた。風の女神から与えられたし大樹『神樹』を祭るは長寿の民――、エルフ族。


 ラピの森の先住民であり風の女神の眷属でもある。


 この国の王はエルフ族であるが『自由』を求める国柄ゆえ、多種多様な種族がいる。共存共栄――。来る者拒まず――。

 それぞれの種族の領域を犯さなければ、この国に根を張ることが出来るのだ。


 他国の『水の国』や『土の国』は、それぞれの国の女神の眷属しかいない。竜人族が治める『火の国』も共存共栄主義だったが、新たな王に変わった途端に竜人族第一主義を揚げ始めた。

 竜人族以外の亜人種族に圧政を敷き奴隷としている。アリサ達が『火の国』から逃げ出した理由は竜人族の圧政によるものだった。


 一つの大陸に4つの国が統治しているのは亜人種族。人族はいない。遥か昔、この大陸全土を治めていた人族であったが、魔族との戦いによって絶滅している。


 その魔族もまた、人族を哀れに思った女神たちの手によって滅ぼされていた。

 遥か昔の話を知っているのは、各国の王族以外は知らないことだった。


「ふう……」


 ラピの森の神樹を護る神殿内――。

 跪いて祈りを捧げていた少女は一息吐く。ステンドガラスから零れる光が少女を照らしていた。


 黄金に輝く髪色に整った顔立ち。エルフ族特有の尖った長耳――。

 儚げな姿のエルフの少女は神々しさを放っていた。

 今日も感謝の祈りを捧げる。ふと、人の気配がし少女は振り向き、その人物の名を呼んだ。


「あら、ダリア来ていたの?」

「酷い言いようですねシャル様。折角王都から遠路遥々やってきましたのに」

 

 紫色の長髪で高身長の女性。女性のラインを浮き彫りにしたその服装は妖艶な色気を醸し出している。彼女もまた長耳の特徴を持っていた。


 シャルと呼ばれた少女と少し違うのは褐色の肌の色と髪色。その特徴はダークエルフだった。

 ダリアと呼ばれた女性は肩を竦めると、腰バックからパイプタバコを取り出していっぷく吸い始める。


「ダリア? ここは禁煙よ?」

「まぁまぁ、シャル様。姫様の所望していた物が手に入ったご褒美ってことで」


 ダリアがパイプタバコを吸いながらニヤリと笑うと、シャルはガタッと立ち上がった。


「本当に!?……こほんっ。だ、ダリアが折角来たことだし、お茶でもいかが?」

「お、いいですね。ついでにシャル様の好きなゼリーも『水の国』から仕入れてきたので、それを出しましょう」

「まぁ……!! うれしいわダリア」


 シャルは膝を両手で叩くと、うきうきした足取りで神殿内で見晴らしのいい場所へとダリアを連れて行った。



 ◇


 

 ラピの森が見渡せるテラスにシャルたちはお茶会を開いていた。


 侍女が入れてくれた紅茶を嗜なみながら、ダリアの旅の話を聞く。行商人として各国を旅するダリアの話は冒険者の冒険譚並みに面白かった。

 王族の姫君として生まれたシャルは不自由なく生きてきたが、何より刺激が少なかった。

 そんな折、ダリアが一冊の本をくれた時があった。


 それは恋愛小説――。


 恋愛をしたことのないシャルにとってはそれは衝撃的だった。こんなにも心を踊らされる書物があるのかと。

 物語の主人公に自分を投影することで、もう一人の自分の人生を歩むことが出来る。如何に自分が籠の中の鳥であったかと、得難い経験を本の中で体験できたことに感銘を受けたのだ。


 それ以降、シャルはダリアに各国の本が欲しいと願った。

 恋愛小説はもとより、冒険譚など様々な本を読んだ。王族の姫として、神樹を護る一族としてこの聖地に身を置く立場だが、今ではすっかり本の虫だった。

 恋愛小説の新刊を大事そうに抱えながら、紅茶を嗜むシャルにダリアは苦笑する。


「シャル様は本当に恋愛小説がお好きなのですね」

「むふー、全ての叡智がここにあるのよ。これはバイブル。そう賢者の本なのよ!」


 ババーン! と本を掲げるシャルは得意そうに言い切った。


(シャル様、乙女だなー)


 ダリアは静かに紅茶を啜る。


「ダリアは殿方との経験はおありですの?」

「ぶふぅぅ!! ……けほっ、けほっ。 姫様!?」


 突然何言いだすんだ? この姫様は。 とダリアは思った。

 折角の美味しい紅茶を吹き出してしまった。


「ねぇねぇ、ダリア? 教えてくれないの?」

「えーと……」


(あー……、うー……。)


 正直言ってダリアは男性と付き合ったことがなかった。色恋に興味があった時期もあったが、今は行商人として生きていくのが生きがいであり、男のことなど必要ないと思っていた。


「あ、そうだ姫様さっき話した『ゼリー』をお出ししますね! あははは、忘れてましたどうぞお食べください!」


 そう言うとダリアは急いでアイテムボックスから『ゼリー』を取り出してシャルの前に置いた。


「え? あ、う? あ、ありがとうダリア」


 早口言葉で捲し上げられたシャルは戸惑いながらも出されたお菓子を一口食べる。


「うーん、美味しい。このプルプルがたまらないわ。 あれ? ダリアは食べないの?」

「わ、私は現地で食べたので大丈夫です。シャル様がお食べください」

「そう? ぱくっ! むふー、美味しいわ」


(い、言えない。シャル様の好物のゼリーの原料がスライムだなんて)


 ダリアはダラダラと汗を流しながら目をそらした。


「んー? 変なダリア」


 シャルがゼリーをぱくぱくと食べている間に、ラピの森が騒がしいくなっているのにダリアは気づいた。


(なんだ? 森が騒がしい……)


 テラスから森へと視線を移したとき、シャルの侍女が駆け足で近寄ってきた。


「た、大変です姫様! も、森の魔物たちが一斉に暴れ出しました!」

「な、なんですって!? まさか、神樹を狙いにここに!?」

「い、いえ、それがここではなくて南に……、森の外へと向かっているようなのです」

「南に? 何かあったかしら?」

「重要な施設はないかと――」


 ダリアは侍女の話を聞いて思案に暮れる。


(南……。確かここから南には獣人の集落が――)


 ダリアがアリサ達の村があったことを思い出した時、遥か空の上から地を響くような咆哮が聞こえてきた。


「なっ、レッドドラゴンだと!? なんで火の国の竜が!! シャル様お逃げください!!」 

「えっ、えっ、えっ!?」


 突然の竜の出現にダリアの初動が遅れる。


 シャルと侍女は竜の咆哮に腰を抜かし、その場にへたり込んでしまう。


 ダリアはアイテムボックスから魔弓を取り出そうとしたが、竜の咢から火炎が吐き出されようとしていた。 


(間に合わな――、、、)


 ――刹那、ダリア達の頭上を一筋の光が通り過ぎ、レッドドラゴンをのみ込んでいった。


 体半分が消し飛んだレッドドラゴンは絶命し、そのままラピの森へと落下していく。地面に落ちた時、森からは土煙が上がり沢山の野鳥が空へと飛び立っていった。


 その場に居た者たちはその光景に言葉を失っていた。

 騒がしかった森に静寂が訪れていく。森で騒いでいた魔物たちの気配が遠のいているのだ。

 ありえない光景に、ダリアは光の柱が飛んできた方向へと目を向ける。


 方角は南――。

 それは獣人たちの子がいる村の方角だった――。


(確かめる必要があるな……)


 ダリアは静かに村の方角へと見つめるのだった。



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