12.ふぁ!? ★
魔物が襲ってくる少し前――。
リユが魔物が近づいてくると言われた俺は、急いで外に出た後『管理ツールアプリ』を起動しゲーム『アンノウン』から、『フォトン・ガンソード』を具現化させた。
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アイテム名:フォトン・ガンソード
ランク :『 HR 』
説明 :
2対のガンソード。
両刃の刀身にはフォトンガンが取り付けられている。対中型エイリアン用の武器。
フォトンガンには連射・レーザー射出の2種類の機能がある。
使用にはバックパックのエネルギー残量に注意が必要
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リユも家から出てくる。ガンソードを装着した俺の姿を見てリユは目を輝かせていた。
「わふー! リンタローかっくいいー!」
両手を万歳しピョンピョン跳ねるリユ。今は構っている暇はない。リユに魔物がどの方角から向かって来ているのかを聞く。
「リユッ。魔物はどっちから来る?」
「んっと、あっち!」
リユが指さした方向へ身構えていると、獣の咆哮が轟響いてきた。
近い……。
生い茂っている森の方から、咆哮と共に足音も聞こえてきた。この感じだとかなりでかいな。
突然、視界の端にレーダーのような映像が表示され、脳内に機械音声が響いてきた。
『警告――。敵影捕捉――。距離50――』
何度も聞いたことのある音声。そう、ゲーム『アンノウン』の戦闘時に流れてくるサポート音声だった。確か網膜にMR映像として情報がアウトプットされるんだっけ。レーダーに赤い点が表示されている。これが近づいてきている魔物だろう。
さらに追加で装備しているガンソードの情報も表示された。耐久値・エネルギー残量だ。
これは背中にあるバックパックにエネルギージェネレーターがあり、フォトンエネルギーを回復させる。
身の丈程あるガンソードを持てるのは柄とバックパックに接続されている補助アームのお陰だ。
これほど心強い武器は無い。
レーダーに点で映る魔物は一直線にこちらに向かって来ている。緑の点もその後ろに表示されていた。これって仲間表示だよな?
リユは不安になってきたのか俺の脚にギュッとしがみついてきた。
「リンタロー……?」
ブルブル震えているのが伝わってくる。俺はなるべく落ち着いた声で話しかける。
「大丈夫。魔物は俺がやっつけるから」
「わうぅー……」
森を見据える。樹々が揺れ激しい音と共にバカでかい熊が突進してきた。その後ろにライ達の姿が見えた。
後ろからはアリサの叫ぶ声、前方からはライ達の叫ぶ声が聞こえてくる。
俺はガンソードのトリガーに指をかけ、グリップにあるスライド式のスイッチを親指で『バレット』から『ブラスター』へとスライドさせる。
『モード:ブラスター』――。サポート音声の声が響く。
俺は飛び掛かってきた魔物へと照準を合わせ――。
「いらっしゃい! そしてさようなら!」
トリガーを引いた――。
ガンソードの先端から眩い光が放たれ魔物の体を貫く。遥か彼方の空へと直線状の光が伸びていき、空に広がる雲を霧散させていく。
『敵殲滅の確認――。通常モードに移行します』
2対にガンソードが補助アームによって背中のバックパックへと装着された。
ふぅー。一時はどうなるかと思ったぜ。『管理ツールアプリ』様様だな。
リユの方へと見ると、ぽけ~っとした顔をしていた。次第に目をキラキラさせる。リユは表情豊かだなと思う。
頭を撫でてやるとピョンピョン跳ねだした。
「わぁ……! リンタロー凄いっ……! 凄ーいっ!」
俺はリユを抱っこし、頭を撫でてやる。
「わふっ!」
「り、林太郎さん……リユ……無事でよかった……うぅ……」
いきなりアリサに抱きつかれられた。その身体は震えていて、涙を流している。
どうやら心配させてしまったようだ。俺は落ち着かせるようにアリサの頭を撫でる。
よしよし、もう大丈夫だから――と。
俺は暫くアリサの頭を撫でていった――。
◇
「林太郎っ! リユっ!!」
ライとミリィが息を切らせながら駆け寄ってきた。全力で走っていたんだろう。全身汗びっしょりだった。
「ぜぇ……はぁ……、ったく、冷や冷やしたぜっ……いきなり、フォレストベアーが村の方に向かっていくしよ……はぁ……、はぁ……」
「こほっ……ほ、本当ね。はぁ……はぁ……すぅぅ……はぁ……。こほんっ。推測だけど、この匂いにフォレストベアーが引き寄せられたんじゃないかしら」
匂い? ああ、もしかして――。
「俺が作った飯の匂いか?」
「ああ、やっぱり林太郎の作る飯の匂いだったか。すぅぅ……はぁぁ。こんな良い匂いしてたら魔物もよってくるわな」
地面にぺたんと尻もちついていたライは、上半身を無くした魔物の方へと視線を向ける。フォトンブラスターによって蒸発した断面は焼け焦げていた。
「大型の魔物を一瞬で倒しちまうなんてなぁ。すげー剣だなそれ」
「林太郎、貴方何者なの? 光の剣を持っているなんて……」
ライとミリィが詰め寄ってきた。
ミリィにはこれが『光の剣』に見えたらしい。まぁ、この世界の人間にとってレーザーは光の剣に勘違いしちゃうのかも。
ん、んー……。なんて答えよう……。
「ねー、リンタロー。お腹減った」
返答に困っていると「ぐ~」とお腹を減らせたリユが頬をぺたぺた触ってきた。
「あー、そうだなとりあえず飯にしよっか。ライ達も食べてくか? 用意するぞ?」
「食う食う! へへへ、ラッキー! やったなミリィ!」
「ライ、あんたね……。はぁ、話しをはぐらかされた気が……」
「あん? 食べねぇってのか? じゃー、ミリィの分まであたいが食う!」
「ちょっ、まっ――。わ、私も食べるわよ!」
「がー!」と唸るミリィにライが逃げ回る。ほんと、仲がいいな。
「すんすん……すぅー……はぁ……」
ん?
下を向くと抱き着いたまま顔を埋めていたアリサが匂いを嗅いでいた。
「あの……アリサ?」
「ふぁ!? ひゃ、ひゃい!! あ、いや、これはその……!!」
がばっと顔を上げて「ずざざっ!」と後ずさるアリサ。その顔は真っ赤だった。
「おねえちゃん、どうしたのー? あ、おばあちゃん!」
「了承」
にっこり顔のお婆さん。
え? 何が?
いつの間にか居たお婆さんは俺とアリサのやり取りを見てにこにこしている。
抱っこしていたリユはもぞもぞと動き、俺から降りるとお婆さんの元へ駆け寄り抱き着いた。
「おばあちゃん、おばあちゃんっ! リンタローが美味しそうなご飯作ってくれたよっ! 一緒に食べよっ!」
「はいはい、アリサから聞いてるわ。林太郎さん、ありがとうね」
相変わらずにこにこ顔のお婆さんにお礼を言われて「構いませんよ」と返事をする。
『フォトン・ガンソード』を解除し、アリサの方を見る。
ぎゃあぎゃあ騒いでいるライ達はそっとしていて、俺は未だに照れているアリサに声をかけた。
「アリサ、食事の準備するから手伝ってくれ」
そう答えると「は、はい!」と嬉しそうに付いてきた――。




