11.ガンソード ★
三人称視点です。
なるべく一週間に1話は投稿したい。
村から少し離れた場所でライ達は狩りをしていた。生い茂る森の中で息を潜め、今晩の食料になる獲物を探す。
ライ達が住んでいる森は、ラピの森と呼ばれ自然豊かな場所だ。動物以外にも魔物もいるが、村は比較的森の浅い場所にあるので魔物に遭遇することは少ない。
加えて「魔除けのブーケ」が村周辺に設置されている。これは薬師であるアリサの祖母お手製の魔除けのアイテムである。
森の奥に行けば魚や木の実も豊富に採れるが、大型の魔物がいるためライ達の実力ではまだ無理だった。ライ達は今日も樹の上で小動物が現れるのを待つ。
「はぁ……、あのお菓子美味しかったなぁ。ミリィもそう思うだろ?」
先ほど食べたホットケーキの味を思い出し、ライは涎を垂らす。あんなふわふわなお菓子があるのかと、ライは打ちひしがれていた。
「ちょっと、ライ? 集中しなさいよ。彼に獲物を多く獲ってあげるんでしょ?」
隣の樹の上に居るミリィに窘められてライは口を尖らせる。
「なんだよー。余韻に浸ってもいいじゃんかよー」
「まぁ。気持ちは分からなくはないわ」
「だよな! だよな!」
ミリィもまた、ホットケーキの美味しさに虜になった一人だ。ただ、ライみたいには浮かれない。今は狩りに来ているのだ。
ちょっとした油断で魔物に襲われるかもしれない。
(そう言えば初めて甘いお菓子を食べた時って、兄さんが買ってきてくれたんだっけ)
ミリィは無き兄を思い出す――。
ライ達獣人は集落を作り、狩猟で生計をたてる。魔物の素材を剥ぎ取り、街に赴いてはお金に換え、生活に必要なものを取り揃えていた。
ミリィの兄は初めて自分で狩った魔物の素材を売り、そのお金でミリィに買ってあげていた。
その時の感動は今も忘れない思い出だ。
(まぁ、悪い奴じゃないみたいだし、料理も美味しいし。アリサが気になる気持ちも分からなくは無いわね。
「とにかく、狩りに集中するわよ」
「へいへい、分かった分かっ……ん? すんすん……。なぁ、なんか匂ってこないか?」
「え? すんすん……。本当ね、これ村の方角から漂ってきてない?」
獣人は鼻がいい。嗅いだ事のない匂いに、2人は樹の上から飛び降りる。
「な、なんだこの凄くいい匂いは……」
ライはぷるぷると震え、ミリィはすんすんとずっと匂いを嗅いでいた。
「きっと、林太郎がまた何か作っているんじゃない?」
ミリィの一言にライは目を見開く。居ても立ってもいられなくなり、そわそわし始めた。
「よし、帰ろう!」
「こらこらこら、まだ一匹も獲ってないじゃない」
「ばっか、ミリィ! 林太郎の作るご飯だぞ! 呑気に狩りしている場合じゃねぇー!」
ミリィはダッシュで帰ろうとするライのリボンを掴んだ。
「ぐふぇ! って何すんだよミリィ!」
「まったく、あんたは――」
ライを咎めようとしたら、ミリィは異変に気付き耳を澄ませた。森の奥からこちらに向かってくる足音。凄い勢いで近づいてくる。
咄嗟に樹の上に隠れるようにライに伝え、樹の葉に隠れて様子を伺っていると、大型の魔物が村の方向へと向かって行った。
「おいおい、フォレストベアーじゃないか! まずい! 村に向かっているぞミリィ!」
「分かっているわよ! ライ、死ぬ気で仕留めるわよ!」
2人は樹の上から飛び降り、フォレストベアーを追いかける。
――フォレストベアー。
ラピの森の奥深くに生息している熊型の魔物。硬い毛皮に覆われた体は弓矢を通しにくい。性格は獰猛で冒険者の間では討伐ランクCに分類される。
実際、今までライ達が戦った魔物は高くてもランクDの猪型の魔物くらいだ。これほどの魔物が森の浅い場所にまで来るとは、ライもミリィも思ってもみなかった。
「図体がデカいくせに、森を搔い潜る速度が速いじゃねーかっ!
「くっ、追いつけない!」
森を抜けてフォレストベアーが村に侵入。ライ達もすぐさま村に入った時、フォレストベアーの前に林太郎が立ち塞がっていた。
その両手には2本のロングソード。しかし、変わった形状だった。逆手持ちだが刀身の向きが違う。トンファーのような形状の武器。剣の柄から背中に向かって合金フレームが伸びている。
それは『アンノウン』から具現化された2対の『フォトン・ガンソード』だった。この世界にはない機械製の近未来武器。
ガンソード武器を構える林太郎の足元にはリユがギュッとしがみついていた。
さらに家からアリサも出てきて、その光景をみて叫んだ。
フォレストベアーが林太郎へと襲い掛かる。
ライとミリィは叫ぶ。
「リユっ! 林太郎ぉぉぉ!」
ライ達は思う。ロングソードではフォレストベアーの突進を止められない、と。襲い掛かる暴力に2人はぐちゃぐちゃにされてしまうだろう。大切な者をまた無くす恐怖が3人を襲う。
「ミリィ!!」
「分かってるわよっ!!」
2人が弓矢を構えた時には、突進していたフォレストベアーが林太郎へと飛び掛かっていた。
間に合わない――。
そう思った時、林太郎から不適の笑みが垣間見えた。
「いらっしゃい! そしてさようなら!」
2本のガンソードを突き出しトリガーを引いた瞬間、一筋の光がフォレストベアーの体を貫いた――。
フォレストベアーに向けられて放たれたフォトンブラスターは雲を突き抜け、光が収まった時にはフォレストベアーの上半身は消し飛んでいた。フォトンブラスターの余波によって、空に浮かんでいた雲が円を描く様に霧散している。その光景にその場にいた全員が驚いていた――。
「う、うそだろ……」
「光の……剣……」
ライとミリィはポツリと呟く。構えた弓矢を解き空を見上げる。幻想的な空の光景に2人は放心していた。
リユもまた、林太郎の凄さと空の光景に見惚れていた。ぽけっとした表情からリユの顔が輝く。
「わぁ……! リンタロー凄いっ……! 凄ーいっ!」
両手を上げてピョンピョン跳ねるリユ。抱っこしてほしいような素振りを感じた林太郎は、リユを抱き上げ頭を撫でる。
リユを抱きかかえ頭を優しく撫でる林太郎のもとに、アリサは駆け寄り2人を抱きしめた。
「り、林太郎さん……リユ……無事でよかった……うぅ……」
突然の出来事にアリサは戸惑いを隠せないでいた。足が震える。2人を失う恐怖にアリサは涙を流す。
林太郎はアリサも片手で頭を撫で、優しく声をかけた――。




