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1.異世界転移 ★

 スマートフォンという携帯電話ができて十数年――。


 通話とメールだけだった端末機器に、『アプリ』という機能が付き携帯でゲームができる時代がきた。


 学生時代にスマホを購入してから今日まで、数多のゲームをプレイしてきた。


 ハマったゲームには課金し、そこそこ面白いゲームは微課金でしばらく遊んでたりもしていた。


 サービス終了したゲームもかなりあった。普通はサービス終了したらアプリを消す人が大半だろう。


 だが俺はサービス終了したアプリであっても、『コレクション』として保有し続けた。


 機種変更しても、バックアップデータを移行して保有し続けたんだ。理由は課金したのにゲームを消すのが悔しかったから。


 だけど、そうしているうちに溜まっていく『アプリ』が自分のこれまでの軌跡として、一期一会で出会ったゲーム仲間の思い出を思い出させる物として、俺の中で『コレクション』としての意義に変わっていったんだ。


 現在、しがないサラリーマンである俺は今日も今日とて、電車での通勤途中にスマホで新しいゲームを探していた。


 ストアで新着ゲームを探すが新しいゲームは出ていないようだった。まあ、あらかた興味のあるゲームはダウンロードしたからな。


 基本的に俺は事前登録キャンペーンで貰えるアイテムや、チュートリアル・ガチャをリセマラしていいのを出てからやり始める。んで、面白ければ課金してハマっていくパターンだ。


 だけど、新しいゲームが出ると今までプレイしたゲームは放置してしまうこともあった。


 時間は有限。如何にリソースを割くか、楽しく人生を過ごすかが大切だ。


 なのでその日の気分で遊ぶゲームを選んでいる。ゲームで作業になったら本末転倒だしな。


 ストアを閉じようとしたとき、『あなたにお勧めアプリ』の項目に目がついた。普段、あまり見ないのだが何となくタップしてみた。


 表示されたのは『アプリ』を管理する『アプリツール』だった。


 説明文に『アプリを綺麗に整理しよう!』と書かれていた。


 あー、そういえば無造作に『フォルダ』の中にゲームを突っ込んだるだけだからな。こういうので『ゲームアプリ』を整理するのもいいかもな。


 そう思った俺は『アプリツール』をダウンロードし終えた途端、待ち受け画面にあった『アプリ』や『フォルダ』が消えた。


「うえぇ!?」


 驚いた俺の声に満員電車に居た人たちが何ごとかと、俺の方へと視線を向けてきた。


「あ、すみません。何でもないです。ははは……」


 謝ると他の人たちは興味を失ったかように視線を戻した。


 俺は慌てて画面へと視線を戻すと、其処には『管理ツールアプリ』のアイコンのみ。通話・メール・ネットの基本『アプリ』も無くなっていた。


 終わった……。起動してもないのにこのバグ仕様……。別の意味で整理されてしまった……。


 途方に暮れた状態でもう一度画面を見ると、『管理ツールアプリ』のアイコンの絵が変化していた。


 あれ? こんな扉絵のアイコンだったっけ?


 無意識に俺はソレ・・をタップしていた。


 瞬間、スマホの画面から眩い光が溢れる――。


 あまりの眩しさに右腕で両目を塞ぎ、光が収まった気配を感じると目をそっと開けると――。


 ――広大な青空が広がる丘の上に俺は立っていた。


 眼下には透き通る青い海、大きな樹々の森――。


 遥か遠くにはそびえたつ大きな山、城のような建物を囲う街並みなどが見えた。


「え……」


 いきなりの状況の変化に戸惑ってしまった。


「俺、さっきまで電車に乗っていたよな……。え、マジか……」 


 頬を強く抓る。


「痛てぇ……。マジだ……」


 これはアレだ。俗にいう異世界転移ってやつだ……。いやいやいや、まてまてまて。


 スマホを弄ってそんな――。って、スマホがない! 鞄もない!


 俺は焦った。こんなラノベ的な展開が起きるとは誰が思うだろう。しかし、目の前には非現実な世界が広がっている。


「うぉぉぉ……マジか。と、とりあえずラノベとかだと特殊な能力だとか……」


 そうだ、アレだアレ! 異世界と言えば定番のアレ! アレをやるってみるしかない! 


「――ステータスオープン」


 ……。


 ん?


「ステータスオープン! メニュー! プロパティ! コンテニュー! 設定っ!」


 ……。


 アレェェェェェ!? でてこねーーーー!


 終わった……。詰んだ……。


 地面に両膝を崩し、両手で頭を掻きむしった後、地面に手をついた。


 シャリン――。


 お?


 小さな音が目の前から聞こえてきた。顔をあげると其処には一つのアイコンが空中に投影されていた。


「お、おぉぉ!! なんか出てるぅ!」


 もしかして手の動きか? そうか、そうなのか?


 腕を振り下ろしたときに出たのだ。人差し指を伸ばして下から上へと空中をなぞると、アイコンが消えた。逆に上から下になぞるとアイコンがでてきた。


「よ、よかった。とりあえず、確認だ」


 出てきたアイコンを観察してみると、さっきダウンロードした『アプリ』だった。


 『管理ツールアプリ』と書いてある。なんかもう嫌な予感しかしないんだが……。


 これが表示されているってことはもうこれが原因だよな……。


 とりあえず、押してみるか……。


 一つしかない『アプリ』を押すと、目の前に数多の『アプリ』が前面に表示された。


 よく見るとそれは俺のスマホの中にあった全ての『アプリ』だった。


 ほえぇー、VRゲームやったことあるけど、まんまソレのウィンドウ表示だ。リアルでこういうのって、なんかワクワクしてくるな。


 とりあえず、通話の『アプリ』があったので押してみる。別のウィンドウが開き、登録者欄が表示されたが名前は表記されていなかった。


 もしかして現実世界の友達と通話できるかと思っていたが、その登録先が消えていた。まっさらな状態。


 「ふむ………。……ん?」


 ふと登録者欄の右上に四角いマークの中にハテナマークが掛かれているものがあった。


 それをタップすると『通話アプリ』に対しての説明欄が表示された。


-------------------------


 ・『通話アプリ』


  説明 :異世界で出会った相手の顔と名前を知った時、自動で登録される。

   

 登録された名前をタップすると、相手に通話案内のウィンドウが出現する。


 相手が通話アイコンをタップすればスピーカー状態で通話が可能になる。 


 通話料金は発生しない。


-------------------------


 うぉぉぉ! 凄い! 何この機能! 便利!


 ふむふむ、なるほど、なるほど。


 もしかしてこの『管理ツールアプリ』は俺のスマホに入っていた『アプリ』を異世界仕様に変換しているってことか?


 だとすると……。


 俺は数多のゲームの『アプリ』を見つめる。


 これを押した場合、何が起きるか……だな。


 ちょっと押すのが怖いなぁ。


 説明文みたいなのはないのか? とりあえず、『アプリ』長押ししたらどうなんだろ?


 ダメもとで長押ししてみたら、新たなウィンドウが開いた。


 -------------------------


 ・『ゲームアプリ』:『ユグドラシル』


 説明 :転移前にゲームで手に入れたアイテムを具現化・魔法スキル習得などができる。


 アイテムをタップ、又は念じることにより出し入れができる。


 魔法スキルはタップすることで取得できる。


 アイテム個数は『無限』に固定されているため、いくつでも取り出せる。 



 -------------------------


 ふぉぉぉ! マジか! このゲームのアイテム使えるの!? マジで!?


 しかも個数無限とかチートじゃん!


 はやる気持ちを抑えながら、数多あるゲーム『アプリ』の一つを押すと、新たなウィンドウが出てきた。しかも、本当に俺が手に入れてきたアイテム名が表示されていた。


 それはカテゴリー別にされていて、『武器』『防具』『アイテム』『魔法・スキル』と表記されている。


 このゲームは『剣と魔法のファンタジー』だ。武器類は当然『剣』『弓』『杖』『斧』などetc……。


 試しに『ショートソード』をタップしてみた。


 -------------------------


 アイテム名:ショートソード

 ランク  :『 N 』

 説明   :


 冒険者の初心者によく使われる武器。


 安価で手に入りやすい。



 -------------------------


 説明文が表示され『取り出しますか?』と出たので、『はい』をタップする。


 すると、目の前の空間がガラスのように割れ弾けて一本の『ショートソード』が具現化した。空中に浮かぶソレを手に取ると、ずっしりとした重量を感じた。


「やべぇ……本物だ」


 え、てことはこのゲームには『付加エンチャント』系の武器があるから――。


 急いで『ファイアー・ソード』探してタップする。


 -------------------------


 アイテム名:ファイアー・ソード

 ランク  :『 R 』

 説明   :


 火属性のロングソード。


 刀身は赤く焼け炎を纏う。


 炎のダメージは『ファイアーボール』と同等の威力。



 -------------------------


 『ファイアー・ソード』を具現化させると、刀身に炎を宿した剣が空中に浮かぶ――。


 ふぉぉぉぉ! 剣が……炎を纏っている!! かっけぇ! てか、あっつぅ!


 空中に浮かぶ『ファイアー・ソード』の柄を恐る恐る握ると、突然熱さを感じなくなった。


「ほ。ほうほう。なるほどなるほど」


 装備すれば熱さは感じなくなると。凄い仕様だなこれ。


 でも、これ炎エンチャント系だと一番弱い奴なんだよなぁ。


 俺は剣を念じてしまうと、次のゲーム『アプリ』をタップした。


 次だ次っ!


 -------------------------


 ・『ゲームアプリ』:『アンノウン』


 説明 :転移前にゲームで手に入れたアイテムを具現化・重火器スキル習得などができる。


 アイテムをタップ、又は念じることにより出し入れができる。


 重火器スキルはタップすることで取得できる。


 アイテム個数は『無限』に固定されているため、いくつでも取り出せる。 



 -------------------------


 さっきのゲームとは真逆の『SFファンタジー』だ。


 近未来風な作風のゲームで、武器も『重火器系』『エネルギー系』や医療アイテムなどの特殊なアイテムが様々だ。


 その中で俺は『フォトン・ガンソード』を選ぶ。


 -------------------------


 アイテム名:フォトン・ガンソード

 ランク  :『 HR 』

 説明   :


 2対のガンソード。


 両刃の刀身にはフォトンガンが取り付けられている。対中型エイリアン用の武器。

 

 フォトンガンには連射・レーザー射出の2種類の機能がある。

 

 使用にはバックパックのエネルギー残量に注意が必要

 


 -------------------------


 これの強さは中級だけど恰好よくて好きで使ってたんだよな。


 背中に背負うバックパックに2本の補助アームが接続され、更にその先には2対のガンソードがある。これは重量があるため機械補助を受けないと扱えないものらしい(アイテム説明分より)


 要するに機械アーマーのようなものだ。


 うーん、、リアルでこれを装備できるとか俺感無量……。


 装着して一通り振り回した後に、元にもどして別のゲーム『アプリ』を長押しして説明文を確認する。


 -------------------------


 ・『ゲームアプリ』:『マイクラフト』


 説明 :転移前にゲームで手に入れたアイテムを具現化することができる。


 アイテムをタップ、又は念じることにより出し入れができる。


 具現した物は経年劣化する。


 アイテム個数は『無限』に固定されているため、いくつでも取り出せる。 



 -------------------------


 ふふふ、このゲーム奥が深くてかなりやり込んだゲームだ。なんせ、自分好みの建設物を造ることができるのだ。


 まぁ、俺としては石ブロック系より温かみのある木造系の家が好きなんだよなー。


 折角だし、休憩場所をここで作るか。個別にある木造の材料を組み立てるだけだから直ぐにできる。


 えっと、丸太をタップっと。……おお、丸太が空中に浮いている。まんま、『マイクラフト』のゲーム操作と同じだな。


 イメージすると、丸太が思い通りに移動するので俺は簡易的な壁のない丸太の柱4本の屋型天井の建物を造った。


 土台のない地面に乗せた感じで倒壊しないかと思ったが、地面にがっちりと固定されていた。これなら安心だ。


 剥き出しの地面の上に焚火のアイテムを具現化し、丸太の椅子を焚火の近くに置く。


 そして丸太の椅子に座る。


 おおぉぉ……野外キャンプしているみたいだ……。


 丘の上にいるため景色は最高だった。これで食べ物とかあれば――。


 あ! そう言えばずっと前に遊んだ『料理』ゲームがあったな!


 数ある『アプリ』からそれを探す。あいうえお順になっているから探すのは凄く楽だった。


 他にも『ジャンル別』に切り替えるタグもあたった。


 目当ての物を見つけ長押しで説明文を確認する。


 -------------------------


 ・『ゲームアプリ』:『料理対決 ザ・ワールド』


 説明 :転移前にゲームで手に入れた素材・調味料・調理設備・調理レシピスキルを具現化し料理ができる。


 アイテムをタップ、又は念じることにより出し入れができる。


 調理された料理には特殊なステータス効果が付加される。


 アイテム個数は『無限』に固定されているため、いくつでも取り出せる。 



 -------------------------

 

 ん? ステータス? そんなのあったっけ?


 俺はウィンドウをくまなく確認したがそれらしき物はなかった。唯一あるとしたら右上に小さく書かれた『Lv』表記だけだった。


 うーん、隠し要素的なものがあるのかもな。


 まぁ、いいや。それより、今は食い物だ! 


 折角焚火が目の前にあるんだから、これを使った素材を選ぶか。


 俺は沢山ある素材の中で、『鮎の串焼き(生)』を選び、3本具現化させて焚火の前に突き刺した。

挿絵(By みてみん)


 あとは、飲み物だけど……。暖かいお茶かな。


 『ヤカン』『急須』『茶葉』『湯呑』を具現化。『マイクラフト』の『アプリ』からはヤカンを焚火の上で支える道具を具現化させセットする。


 俺は鮎が焼けるまでぼうっと景色を眺めていた。


 気持ちのいい風が丘の上を通り過ぎていく――。


 晴天の青空の下、俺はぼんやりと元の世界を思い出す――。


 まぁ、両親も彼女もいないし、元の世界に未練はないかな……。


 親しい友人は皆結婚して、ほとんど疎遠になっているし……。


 それにこの能力があれば俺は『自由』に生きていくことが出来る……はず!


 ま、なんとかなるだろう。


 いい具合に焼きあがった鮎の串焼きを食べながら俺は空を見上げた――。


 穏やかな天気につられる様に、俺の心はワクワクしていた――。



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