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『俺はパーティーメンバーに殺されたとさ。』  作者: 盛嵜 柊 @ 書籍化進行中


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2/4

***2***

全4話中、2話目。

第1話より一時間おきに投稿しております。



 時を遡る事約二時間前。


 このダンジョンに潜ってからは三日目で、俺は皆に遅れまいと明かりの乏しい洞内を一歩一歩慎重に進んでいた。

 四方は土壁に囲まれ、足元からはジャリジャリと五人が立てる土を踏む音だけが響いていた。

 明かりと言えば先頭で浮かんでいる魔法で作った光の球だけで、前を進む四人の後ろを歩く俺の足元までは照らされていない。

 だが足元が見えずとも、トラップはないはずだ。

 そんなものは前を行くパーティーメンバーが確認しているはずで、俺はそう信じて背中の重たい荷物を担ぎ直し、黙々と彼らの後を付いて行った。


「次の階層でいよいよボス部屋だ」

「やっとね」

「ああ」

「お宝は宝珠(オーブ)か魔法具か? 楽しみで仕方ねえな、クックック」

「あら、気が早いわよ。けれどこのダンジョンでなら、きっといいお宝が出るはずよ?」

「うふふ。気が早いといいながら、あなたも期待しちゃってるじゃないのよ」

「あら本当ね!」

「「「「ハハハッ」」」」


 浮かれた声がダンジョン内に反響し、仲の良いパーティーが楽しそうに会話している様子がうかがえた。

 俺は前を行く四人の最後尾で、肩に食い込む荷物のバランスを変えながら、ただ取り残されないようにと足元だけに注意を向けていた。



 このダンジョンは地中をアリの巣の様にくり抜いた形のもので、今まで数々潜ってきたダンジョンの中では地味な造りだと言える。

 なぜ地味かと言えば、あるダンジョンはまるで古代遺跡の中を歩いているかの如く磨かれた大理石の床と、細かな彫刻が施された支柱に囲まれた道を辿る。かといえば凍えるような吹雪が続くダンジョンや熱帯雨林の中を進むダンジョンなど、五感からして楽しめる多面的なダンジョンが多い中で、ただの洞窟の様で面白みもなく地味という意味だ。

 そんなダンジョンを歩きながら、なんだか俺みたいだなと思ったのは自分だけではなかったらしい。


「はぁ~。行けども行けども土・土・土、ちっとも変わり映えしないわねぇ」

「しかし景色がこうも変わらねえと、確かにつまんねえよな」

「誰かさんみたいに地味ですね……。けれどここは魔剣の噂もあるし、もう少しだけ我慢しましょう」


 アントワネットを口火にサーフとエミリエが文句を言えば、ここに来たがった張本人であるジョアンが、気まずそうに言った。


「悪いな皆。俺はどうしても魔剣を手に入れて、冒険者の頂点に立ちたいんだ」

「ジョアンが魔剣を手に入れれば、Sランクも夢じゃないものね」

「俺達も天辺への道が開けるってもんで、悪い話じゃねえぜ」

「ふふ。Sランクともなれば今までよりもギルドの待遇も良くなるからねぇ」

「ああ。俺は絶対に不死の体になって、パーティーを押し上げるから待っててくれ」

「楽しみにしているわよ?」


 俺は今回、こんな地味なダンジョンに潜った事を不思議に思っていたが、今のジョアンの言葉で納得した。

 ここにも魔剣の噂があったのかと、今更ながらに俺はここに来ている意味を知ったのだ。


 ジョアンは昔から一貫して魔剣を追い求めており、だからこのパーティーはダンジョンばかりに潜り、宝を漁っているのだ。そしてAランクになった今でもその殆どをダンジョン探索に当て、魔剣を追い求めていた。

 そして魔剣を追い求める理由は、“不死”という言葉に集約されている。


 冒険者達の間では、魔剣を持つ者はその魔剣の力によって、たとえ死んでも蘇らせてもらえるという噂がまことしやかに流れている。俺はその噂の真相を知らないから何とも言い難いが、事実だと書かれている書物さえあるらしいので、“絶対に嘘”とも言い切れないのだろうとは思っている。

 ただジョアンはその“不死”という言葉に取りつかれているようにさえ見え、仮令これが男のロマンだと言われても、俺はそんな夢を追いかける事などしないだろうし、実はその魔剣自体が殆ど存在しないのだろうと密かに思ってもいた。―――このジョアンが何年も追い求めている事を考えれば。



 俺がこのパーティーに加わったのは、今から5年前。

 その時の俺はソロで剣を振るうDランク冒険者ではあったものの、特に腕っぷしも強くなく、特殊なスキルや魔法を使える訳ではなかった。その為これからは自分一人では限界があると悟り、一緒に切磋琢磨する仲間を探してパーティーを組んでいる冒険者達に声を掛けていた。

 しかしとりえのないDランク冒険者など誰も相手にしてくれるはずもなく、日々心もとなくなる財布に眉を下げていた、そんな時だ。今目の前にいる四人のパーティー、“黎明の光芒(れいめいのこうぼう)”が声を掛けてくれたのである。


 その彼らは当時、国内のダンジョンを渡り歩くCランクの新進気鋭の冒険者パーティーとして多少名が売れていて、勿論俺はそんな彼らの誘いを断るなんて微塵も考えるはずもなく、即答で頷いていた。

 それからの毎日はただ目まぐるしく過ぎていき、Cランクパーティーだった彼らも、今では一目置かれるAランクパーティーにまで昇りつめていた。


 リーダーは剣士のジョアン。肩まで伸びた金髪は緩く纏められ、薄暗いダンジョンの中でも顔を縁取るように輝いている。そんなリーダーは行く先々で黄色い声援を浴び、言い寄る女性たちと闇夜に消える事もある。

 他のメンバーは大盾使いのサーフ、魔法使いのエミリエ、弓士のアントワネットだ。


 その彼らもまるで容姿で集められたかのように整っており、サーフは堂々たる体躯と切れ長の眼が野性的であると、こちらも女性によくモテる。

 エミリエはローブから覗く細い足と口元の黒子が、その妖艶さを引き立てている美人だ。

 アントワネットは、スラリと伸びた四肢に程よく筋肉を付けながらも女性らしさを際立たせ、その動きはまるで豹のようにしなやかで、大きな胸と細い腰を強調するかのような、体に沿った服を纏い男達の視線を釘づけにしている。

 ただし、彼女たちが簡単に誘いに乗る事はないだろう。


 この5年で分かったところでは、どうやら四人はそれぞれ体の関係があるらしく、俺だけ一人部屋に押し込んだ後、彼らが何をしているのかは騒がしい部屋から漏れる声で簡単に想像がついた。


 そう、俺だけこの中で地味なのだ。


 俺の容姿と言えば、癖ッ毛のボサボサ頭は茶色く鳥の巣の様で、伸びた前髪が目元を隠している状態だ。とはいえ、彼らとパーティーを組んだときはスッキリと整えていたのだが、「辛気臭い顔を見せないでよ」とか「華がない顔は目障りだ」とか言われている内に、手入れもしなくなった髪で真っ黒な目も隠すようになっていたからだ。

 元々釣り合いの取れていないパーティーに入れてもらった負い目もあって、俺は黙って彼らに従っていた。

 まあそのお陰でDランクだった俺もCランクまで昇格したので、文句を言えるはずもなかった。


 そんな冴えない俺がなぜこのパーティーに入れてもらえたかと言えば、それは俺のスキルに期待したからだろうと今ならわかる。

 俺のスキルは“授ける者(ギフター)”といって知名度が低くよくわからないものなのだが、文字通りバフなどで支援が出来たからだと思う。

 始めの頃こそ俺の力量を計るために剣を振って共闘していたものの、大して強くないとわかったのか、いつしか俺は戦闘には参加させてもらえなくなり、バフを掛け、皆の荷物を持つだけの下僕のような扱いとなった。

 それでも今まで俺がパーティーから外されなかったのは、俺の力を少しでも必要だと思ってくれているからだと考えていた。


 今日この日までは……。





次話は一時間後に投稿いたします!

誤字報告、いつもありがとうございます。

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