第59話 青空の下、お弁当を食べる
無線から上原さんの声が聞こえた。
「お昼ごはんでーす! お弁当を取りに来て下さい!」
俺たちのいる国道246号線の部隊だが今日は前進することなくお昼ごはんになってしまった。
バリケードの内側に、お弁当をデリバリーする白いワンボックスカーが三台並ぶ。
お弁当は三種類あって自由に選べる。
・高級料亭の和食弁当
・一流ホテルの洋食弁当
・有名焼き肉店の焼き肉弁当
お昼ごはんはみんな楽しみにしていたようで、冒険者が一斉にワンボックスカーに群がった。
「押さないで下さい!」
「数は十分にあります!」
「はい! お疲れ様です! 頑張って下さい!」
俺、モッチー、神宮司君たちもお弁当をゲットして、指揮所の近くの地面に腰を下ろして上原さんと一緒に食事だ。
俺、モッチー、レオ君は、一番人気の焼き肉弁当だ。
「やっぱ焼き肉だね!」
「焼き肉は正義!」
「肉は力がつくでしょ!」
バクバクと焼き肉弁当をかきこむ。
柔らかいロース。
ジューシーなカルビ。
タレが染みた白飯。
さすが有名店の焼き肉弁当だけあって旨い!
上原さんと女性陣は、高級料亭の和食弁当。
神宮司君は高級ホテルの洋食弁当だ。
「子供の頃から食べ馴染んだ味に安心するんですよ」
「「「おっ……おう!」」」
洋食弁当を食べた神宮司君のコメントに、俺、モッチー、レオ君の庶民トリオが震える。
高級ホテルの弁当を食べて、『子供の頃から馴染んだ味』ってどういうことだよ。
高級ホテルの食事なんて『おいくら万円』の世界だから食べたことがない。
雰囲気からなんとなく感じていたけど、神宮司君は良いところのご子息なんだな。
昼食は和気あいあいとした雰囲気で進む。
神宮司君が上原さんに話しかけた。
「上原さん。かなり高いお弁当だと思いますが予算は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。魔石を回収して自衛隊と按分しているので、売り上げは上がっています」
「父から魔石がエネルギー源になると聞いたのですが?」
「それ、本当ですよ。魔石発電のことですよね? 実験段階は過ぎていて、来年には一号機が始動するそうですよ。あと魔石エンジンの開発も進んでますし」
「魔石の価格が高騰しそうですね」
「だから、遠慮無用です。お弁当は沢山注文してますから、おかわりして下さい」
俺、モッチー、レオ君の庶民トリオは焼き肉弁当を片付けると、洋食弁当獲得に走った。
洋食弁当は、デミグラスソースのかかったハンバーグ、和牛のステーキ、和牛のビーフシチュー、エビフライ、サラダ、ライスの組み合わせで、それぞれ丁度良いサイズで弁当箱に収まっている。
俺、モッチー、レオ君は、洋食弁当を一口食べると宇宙空間を漂う表情をした。
「異次元の旨さだ!」
「これを子供の時から食べてるんだ……」
「スゲエな!」
「ちょっと裕福な家庭に生まれただけですよ」
神宮司君は謙遜しているつもりかもしれないが、謙遜になってないぞ!
ワイワイと神宮司君にツッコミを入れながら洋食弁当を食べていると、隣から暴力的な匂いが漂ってきた。
お隣を見ると自衛隊さんが食事をとっている。
カレーである。
俺は隣に座る隊員さんに話しかけた。
「カレー旨そうですね!」
「自衛隊のカレーは美味しいよ。そっちの弁当も美味しそうだね」
「ちょっと交換しますか?」
「良いね!」
俺はステーキ肉とカレー一口分を交換した。
「あっ! 本当に美味しい! 自衛隊のカレーも凄い! 高級店に負けてない!」
「いやいや、このステーキも旨すぎでしょ! 和牛? 口の中でとろけたよ!」
俺と自衛隊さんは声を上げて笑った。
青い空の下、ノンビリした昼食が続いた。





