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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第四章 渋谷奪還作戦

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第58話 災い転じて福となす

 俺たちは六本木通りを出発して国道246号線に戻った。

 途中で魔物をボチボチ狩って魔石を回収するノンビリとした行程である。


 この辺りは平和な時代はお金持ちが住んでオシャレな店が沢山あったエリアだろう。

 だが、今は瓦礫と崩れかけた家屋があるだけだ。

 渋谷奪還作戦が成功して、このエリアも早く復興すると良いなと思った。

 上原さんとデートするのだ。


 国道246号線に戻り指揮所へ向かい、上原さんに報告を行う。


「狭間さん……!」


 なぜか上原さんはご立腹だ。

 怒りに額をピクピクさせている。


 この怒りを収めるには愛……。

 そう、愛だ!


 上原さんは愛を忘れ我を忘れているに違いない。

 愛を思い出せば、この怒りは秒で鎮まるはずだ!


 俺はシャラーンと髪をかき上げ、上原さんに手を差し伸べポーズを決めた。

 そして甘い声でささやく。


「怒った顔も素敵だよ……。マイベイベー」


「誰がマイベイベーですか! 狭間さんが原因で怒ってるんですよ!」


「痛い! 痛い! グーパンはダメです! グーパンは禁止です!」


 今日もまたグーパンである。

 まだ、午前中なのになぁ。

 上原さんが俺を殴りスッキリした顔をしたところで話を切り出す。


「えっと、東口ギルドの冒険者をKOしたことですよね?」


「そうです! 神宮司さんから報告を受けましたが、いきなりプロレス技をかけたそうですね?」


「いや! 待って下さい! からんできたのは、東口の連中ですよ! 俺は女性陣を守っただけです!」


 俺はフン! と、胸を張り鼻息を荒くする。

 上原さんは、深くため息をついた。


「女性を守ろうとしたのは立派です。ですが、倒す前に私に連絡して下さい」


「上原さんに?」


「ええ。無線でもスマホでも連絡をもらえれば、私から東口ギルドへ連絡して、東口ギルドから当該冒険者にストップがかかります」


「「「「「「「あー……」」」」」」」


 俺たちは全員で空を仰いだ。


「そうか、その手があったか!」


「そりゃ、いざとなったら反撃しても構いませんよ。ですが、実力行使に出る前に所属している冒険者ギルドに話を通していただけると後処理が楽になります」


 なるほど、上原さんの言う通りだ。

 職場でも他所の部署や他所の会社ともめたら上司を呼ぶよな。

 自分たちだけで解決しようとせずに、上に頼れば良かったんだ。


 俺は素直に上原さんに謝った。


「いやあ~、ごめんなさい。とっさのことで、そこまで考えが及びませんでした」


 神宮司君も俺に続く。


「上原さん、すいません。レオ君が交渉している間に、僕が上原さんに連絡すれば良かったです」


「トラブルの現場では、なかなか上手く立ち回れないと思うので仕方ないです。次はギルドにご一報下さい」


「わかりました」


 やっと場が収まった。

 指揮所には自衛隊さんもいて、ヒヤヒヤした目で俺たちを見ていたが、明らかにホッとした雰囲気に変った。

 まあ、指揮所のアイドル上原さんがピリピリしていたら、ヒヤヒヤするよな。


「上原さん笑顔が素敵ですよ!」


「どうも」


 あっさりスルーされた!


「それで東口ギルドや六本木通りの警察との調整は大丈夫なんですか?」


 神宮司君にもスルーされた!


「ドンマイ」


 モッチーの優しさが痛い!


 俺を置いて話は進む。


「現在、ここ246の自衛隊は停止中です。冒険者は周囲の探索と残った魔物の駆除をお願いしています」


 そういえば、六本木通りから帰る途中で西口所属の冒険者に出会うことがあった。

 246に戻ってきたら、自衛隊はバリケードの前に戦車を並べているだけで前進していなかった。

 全体的に弛緩した空気が流れている。


 前進してないのはなぜだろう?

 渋谷に到着しなくてはならないのだが?


 神宮司君がアゴに手をやって考えを声にした。


「やはり六本木通りは進まないですか……。あちらと足並みを合わせないと不味いですよね」


「ええ。ここに来て、六本木通りの遅れが全体に影響を及ぼしています。他のエリアでも前進が止まっています」


「それって責任問題になりますよね?」


「上の方では会議が開かれて大変らしいですよ。とはいえ、今さら配置換や他所から戦力を引っ張ってくることも出来ないですから、六本木通りの部隊にやってもらうしかありません」


「うーん、僕らが六本木通りに行ってきたけど、無意味でしたし……」


「それが、そうでもないんですよ」


「え?」


 上原さんがニタッと笑った。


「狭間さんが暴れたでしょう? それで東口ギルドや警察からクレームが来たんです。『冒険者が弱いから負けた。だから六本木通りの進みが遅いんですか?』と言い返しました。上にも同様の報告を上げました」


「それって大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ。上の方は喜んでました。これで現場にヤレと言えると」


「つまり圧力をかける材料になると?」


「そう。後は上の方が上手くやると思います」


 なるほど、災い転じて福となす。

 俺が東口ギルドの連中をKOしたことで、事態が進むかもしれないわけだ。


「いやあ、予想外の活躍をしてしまったわけですね! このご褒美は上原さんのキッスで――痛い!」


 横っ面に上原さんの右ストレートが炸裂した。


「狭間さんは反省が足りないみたいですね……」


「痛い! 痛い! グーはダメだって! あっ! あっ!」


 指揮所が笑いに包まれた。

 全ては俺のおかげだ!

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