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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第四章 渋谷奪還作戦

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第57話 日本よ! これがテンプレだ!

 俺は狂喜乱舞した。

 冒険者となり活動していたが、ここは日本だ。

 マンガやアニメで見た、いかにも冒険者的な展開にはならない。


 だが、ついに来た!

 チンピラ冒険者にからまれる主人公!


『イイ女を連れている!』


『俺たちにも分けろ!』


 ああ、これぞまさに王道!

 ありがとう!

 新宿東口ギルドの冒険者さん!


 俺が感動に打ち震えていると、神宮司君が肘で俺を小突いた。


「狭間さん? 大丈夫ですか?」


「今、俺は猛烈に感動している!」


「えっと……大丈夫じゃなさそうですね……」


 どうやら神宮司君には、俺が感動した理由が分からないらしい。

 俺が説明しようとすると、東口ギルドの冒険者がズイッと前に出て来た。


「何をゴチャゴチャ話してやがる? あー?」


「くおおおお! 感動をありがとう!」


「狭間さん?」


 東口ギルドの冒険者が俺にからみ、俺が感動し、神宮司君が呆れる。

 冷静に考えればカオスだが、俺は嬉しくて涙が出そうだ。


「テメーなめてるのか?」


「感動をありがとう!」


 俺は感謝の言葉を東口ギルドの冒険者に伝えた。

 ガラの悪さ、言葉遣いの汚さ、要求の理不尽さ、全てが完璧だ!


「勝手に感動してろ! オメーらが連れているキレイな女たちを俺たちにも――」


「ウィイイイイイ!」


「グハッ!」


 俺はウエスタン・ラリアットをからんできたチンピラ冒険者にお見舞いした。

 チンピラ冒険者が吹っ飛び一回転した。

 失神したようで、ピクリとも動かない。


「ありがとう! 君の笑顔を忘れない!」


「ちょっ!」


「狭間さん!?」


 いきなりのウエスタン・ラリアットに、レオ君と神宮司君が驚く。

 東口ギルド冒険者の一団も何が起こったのかと目を見開いている。


「ちょっと! 何してるの!」


 俺の後ろにいたモッチーが血相を変えて、俺の肩を揺すった。


「モッチー。これはテンプレ展開というヤツだ」


「テンプレ?」


「マンガで読んだことないかな? 主人公冒険者がチンピラ冒険者にからまれて、逆襲してやっつけちゃう展開」


「あー、あるね。えっ? じゃあ、今のラリアットは?」


「テンプレだよ!」


 俺はモッチーに力強く宣言した。

 テンプレであるからには、盛者必衰! 見敵撃滅!

 これぞ冒険者の醍醐味だ!


「やっぱこれだよね!」


「いや、狭間さん……」


「そういうことじゃないから!」


「誰だよ! コイツ連れてきたの!」


「モッチー?」


「私のせいじゃない!」


 俺は納得と興奮の中にいるが、俺の周囲では何やら苦情が出ている。

 悪党相手に何をためらうのか?


 俺はさらに力を込めて、神宮司君やレオ君たちに伝えた。


「諸君! 悪党には死あるのみ!」


「いや、狭間さん! 殺しちゃダメですよ?」


「イヤイヤイヤ、殺しはヤバイって!」


 神宮司君とレオ君が焦っている。

 視線を悪党どもに向けると、悪党たちはジリジリと後ずさりした。


「待ってくれ! 悪かった! 俺たちが悪かった!」


「謝るから!」


「スイマセンでした!」


「冒険者同士、仲良くしようぜ!」


 ガーン!

 もう日和った!


「そうじゃないだろう! ここはもっと悪役らしく『お姉ちゃん、おっぱい揉ませて!』くらい言えよ!」


「スイマセン。言ってる意味がわからないです!」


 悪党の一人が神宮司君に視線を向けた。

 神宮司君はヤレヤレといった感じで首を降る。


「この人、『首折り』です」


「コイツが!? あの!? 考えなしの!?」


 神宮司君が俺を紹介し、悪党冒険者がビビる。

 何気にヒドイことを言われた気がするが、まあ、俺の名が轟いているということでヨシとする。


「こちらの女性は『首切り』です」


「ゲエ! 超獣かよ!」


 悪党たちの顔色が悪くなった。

 当然だ。

 モッチーは物理的に首を切断するのだ。

 魔法で手加減は出来ないし、首を切られたらどうやっても助からない。


 ということは、モッチーが魔法を使うより俺がラリアットした方が良いということだ。

 コイツらラッキーだな。


「そんなわけで、あきらめて下さい」


「いや、止めてくれよ!」


「無理ですよ」


 神宮司君のオーケーが出た!

 俺は喜び勇んで駆け出し、右腕を振るう。


「ラリアット! ラリアット! ラリアット! ウエスタン・ラリアット! ウィー!」


 一瞬で悪党どもは地面に沈んだ。

 まあ、手加減したから生きてるだろう。

 フルスイングは自重したのだ。


 神宮司君のパーティー『白騎士』の女性魔法使いが心配そうに神宮司君に聞く。


「神宮司くん、良いの?」


「まあ、自衛の範疇でしょう。上原さんに報告しておけば、調整してくれるでしょう。さあ、行きましょう!」


 そうだ! これは自衛行為!

 正義の鉄拳をぶち込んだだけなのだ。


 俺たちは246に戻るべく、六本木通りを後にした。

 こんな殺伐とした所とは、オサラバさ!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >こんな殺伐とした所とはおさらば すみませんでした→知らん!とりあえずラリアット!な狭間さんのが、だいぶ「サツバツ!(忍殺並感」してらっしゃるんですがそれはww それでは今日は…
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