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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第四章 渋谷奪還作戦

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第54話 帰りたい

 俺とモッチーの冒険者パーティー『超獣』と神宮司君、レオ君たちのパーティー『白騎士』は、六本木通りへ向かった。


 目的はわからないが、とにかく行ってこいと上原さんからのお達しだ。


 骨董通りを歩いて六本木通りへ向かう。

 俺は横を歩く神宮司君に話しかけた。


「ねえ、神宮司君。俺たちって応援の戦力なのかな? それともケンカの仲裁なのかな?」


「どうでしょうね……。微妙ですよね……」


 神宮司君は歯切れが悪い。

 神宮司君でも状況が読めないのだろう。

 レオ君が話に乗ってきた。


「そもそも滅茶苦茶ッスよ! 警察の部隊とギルドの冒険者がケンカになったところに、俺たちが送り込まれるわけでしょう? 受け入れる体制が出来てるんですかね? 誰が仕切ってるんですかね?」


「そりゃ……、そうだよね」


 レオ君の言うとおりだ。

 仕切りの問題がある。


 国道246号線は、作戦全体の指揮は自衛隊がとっている。

 自衛隊の下に新宿西口冒険者ギルドが入っている。

 自衛隊の要請を受けて、新宿西口冒険者ギルドのオペレーターが俺たち冒険者に指示するのだ。


 こういう風に誰が仕切るかがハッキリしていないと、俺たち冒険者も動きづらい。


 冒険者はそもそもパーティー単位で自由に活動しているのだ。

 進む、撤退する、休憩する、今日は終わり――全てパーティー単位で決断、実行している。


 さらに、冒険者の強さ、レベルもバラバラだ。

 俺や神宮司君のようにキャリアがありレベルが高い冒険者もいれば、まだ登録して一週間経ってない新人冒険者もいる。


 だから、渋谷奪還作戦のような大規模な作戦では、仕切り役が重要になる。

 パーティー単位で小回りが効く冒険者の特長を理解した上で、作戦にフィットする指示を出す。

 強い冒険者と弱い冒険者を上手く配置する。


 これが出来ないと、冒険者は烏合の衆になってしまう。

 新宿西口冒険者ギルドのオペレーター――上原さんたちは上手くやっている。

 だが、これから行く六本木通りは?


 みんながウーンと考えていると、モッチーが開き直った。


「まあ、出たとこ勝負でしょ」


「そうだな。到着してから考えよう。エネルギーバーでも食べておくか」


「グッドアイデア」


 俺たちはエネルギーバーをかじりながら骨董通りを進んだ。

 六本木通りが近くなると、魔物が出現しだした。

 ゴブリンやオーク、低級、中級の魔物だ。


「グア!」


「ウインドカッター」


「グハ!」


 モッチーと白騎士の魔法使いが魔法で秒殺する。

 俺とレオ君が魔石を素早く回収するので、歩みは止まらない。


「何か魔物が増えているよね? 裏道で魔物狩りをしてないのかな?」


「あり得ますね……。警察と冒険者がもめた影響ですかね……」


 俺の疑問に神宮司君が答えた。


 俺たち246の部隊は、大通りを自衛隊が火力で圧倒し、脇道や裏道は冒険者が入って魔物を狩っている。

 つまり線ではなく、面で制圧をしているのだ。


 だが、こうしてチョコチョコ魔物が出てくるということは、六本木通りの方は面制圧が不十分ということだ。


「東口ギルドって、冒険者の数は多いよね?」


「西口ほどじゃないですが、かなりの数の冒険者が所属しているはずですよ」


 俺と神宮司君は首をひねる。


 骨董通りを抜けて高樹町の交差点に出た。

 ここが六本木通りだ。

 六本木通りの上は、高架で首都高が走っている。


 上の首都高には警察車両が沢山停止していて、下の六本木通りには機動隊や警察官がわんさかいる。

 そして、冒険者と機動隊がもみ合いになっていた。


「テメーらふざけんなよ!」


「冒険者は所定の位置につけ!」


「なめてんのか!」


「オマエらこそ警察なめんなよ!」


「上等だ! こっちは東口だぞ! 歌舞伎町なめんなよ!」


 本当にケンカしている……。

 俺たちは全員うんざりした。


「帰りたい」


 モッチーが遠い目をしてこぼした言葉が、俺たちの気持ちを代弁していた。


 これ、どうすんだよ!

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