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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 西新宿の首折り魔

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第45話 モッチーの装備

 俺はちょっと考えて、エイホックさんにモッチーの装備品を相談した。

 エイホックさんは、アゴのヒゲをさすりながらブツブツつぶやき考えている。


「モッチーの装備……、魔法使いだよな……、杖はねえよな……、あっ! あれが良いんじゃねえか?」


 エイホックさんは倉庫の中に入り、ゴソゴソと探し出した。

 モッチーに合った装備を思いついたのだろう。


「えーと、どこに仕舞ったかな? 作ったのは結構前だからな……。いや、確かこの下に……」


 エイホックさんが探している間、モッチーは期待のこもった目で倉庫を見ていた。


「モッチー、ビールは? 酔ってない?」


 モッチーがホワイトボードにサラサラと書く。


『美味しかった。酔ってない』


 サン・ゴー缶を飲みきったらしい。

 表情に変化はないから酔ってないのだろう。


「装備が見つかると良いね」


 また、ホワイトボードにサラサラ書く。


『楽しみ!』


 モッチーがヒョコヒョコ動きながら、遠くから倉庫をのぞいている。

 エイホックさんは、まだ探している。


 どれだけ装備品をため込んでいるんだ。

 多分、ヒマがあれば叩いてるんだろうな。


「あった! あった!」


 倉庫の中でエイホックさんの声がした。

 エイホックさんは、折りたたまれた黒い布を両手で抱えて倉庫から出て来た。


「ほらよ! モッチー、それを持ってきな」


 エイホックさんは、モッチーに向かって黒い布を放った。

 モッチーはエイホックさんから受け取った折りたたまれた黒い布を広げる。


 黒い布はローブだった。

 あちこちに銀糸で刺繍がしてある。


 モッチーが今着ているローブを脱いで、エイホックさんから受け取ったローブを身にまとう。

 フード、袖、胴体に何カ所も複雑な模様が刺繍されていた。


「そいつは魔法陣を刺繍したローブだ。防御が強化されているし、魔法も強化される。かなり昔に作ったので細かいことは忘れちまったが、まあ、役に立つだろう」


「「おお!」」


 俺と上原さんがうなり声を上げた。

 魔法陣というのは、俺たちには未知の技術だ。


 上原さんが食いつく。


「エイホックさん。どの魔法陣にどういった効果があるか知りたいです」


「あー、その辺は門外不出ってやつでな。師匠から弟子が教わるモンだ。昔、俺も師匠から魔法陣を教わっただけだ」


「なるほど。では、エイホックさんの師匠が開発したのでしょうか?」


「いや、魔法陣は遙か昔に賢者が考えついたらしい。それで、物作りが得意なドワーフや魔法が得意なエルフ、それから人族の賢者の弟子に教えられた。代々受け継がれたモンなんだ。弟子以外に教えるわけにはいかねえ」


 エイホックさんは、ガンとした態度だ。

 魔法陣について聞き出すのは難しそうだ。


「わかりました。魔法陣について探らないように、私たちの間でも周知しておきます」


「おう。そうしてくれ」


 上原さんは、アッサリ引き下がった。

 まあ、ここで強引に聞き出そうとして、エイホックさんにヘソを曲げられる方が困るよな。


「では、そろそろ私たちは失礼いたします」


「おう! また、いつでも来いよ! アンタに頼まれた剣は打っておく」


「よろしくお願いします」


 上原さんが、エイホックさんと別れの挨拶をかわす。


 俺もエイホックさんに別れを告げる。


「エイホックさん、ありがとう。モッチーにも装備をもらえて、本当に嬉しいよ」


「おう! 喜んでくれたなら俺も嬉しいぜ。まあ、あんまり気を使うなよ。次に来る時は手ぶらで良いぜ」


「いや、エイホックさんのリアクションが面白いから、また何か買ってくるよ。今度は日本酒や焼酎にする。俺の国の酒を持ってくる」


「そいつは楽しみだ! ガハハハ!」


 俺たちはエイホックさんの家を後にした。

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