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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 西新宿の首折り魔

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第35話 人見知りとの立ち話

 俺は望月弥生さんとパーティーを組むことにした。

 早くダンジョンに行きたいのはやまやまだが、望月さんは極度の人見知りだ。

 このままダンジョンに行って良いかどうか迷う。


 俺は冒険者ギルドを出てダンジョンの入り口へ向かっているが、望月さんは一定の距離を置いてついてくる。

 何だか尾行されているみたいだ。


 俺は新宿西口地下街で立ち止まりスマホを取り出す。

 他の人の邪魔にならないように隅に寄って、望月さんにメッセージを送った。


『望月さん。人混みは大丈夫なんですか?』


『大丈夫です! 気を使っていただいてありがとうございます!』


 すぐに望月さんから返事が来た。


 どうやらメッセージアプリなら人見知りしないようだ。


(ダンジョンに潜る前に、アプリ経由でも交流して打ち合わせておいた方が良いな……)


 今の状態だとダンジョンに入ってから問題が起きるに違いない。

 俺は地下街の壁に寄りかかって、望月さんとメッセージのやり取りを続けることにした。


『望月さんのローブはどこで買ったんですか? 魔法使いっぽくて良いですね』


『ありがとうございます! 自作です!』


 あっ……自作なんだ……。

 深掘りして聞いてみると、ローブは普通の布製で、ローブの下に普通の装備を身につけているそうだ。

 自分で黒い生地を買ってきて、ミシンで作ったらしい。

 コスプレみたいで楽しいと言っている。


 こうしてメッセージアプリでやり取りをしていると、いたって普通の人だ。


『極度の人見知りと聞きましたが、学校ではどうしてたのですか?』


『意外と学校は大丈夫だったんです』


 望月さんから予想外の返事がきた。

 いじめられたりしていたのかなと心配したが、そうでもないらしい。


 学校でも人見知りだったが、一週間、一月と時間が経つにつれ同級生に慣れていき、普通に友だちも出来て学校生活は楽しかったそうだ。


 どうも社会人になって躓いたらしい。


(あー、確かに社会人になると学生時代と違うよな)


 人見知り話題は、どこに地雷があるかわからない。

 俺は話題をダンジョンに変えた。


『ダンジョンは一階層から行けば良いのかな?』


『いえ。一階層はクリアしています』


 意外だ。

 人見知りでパーティーをクビになってばかりと聞いていたから、まだ一階層かと思った。


 メッセージをやり取りした結果わかった。

 望月さんは、色々なパーティーに参加してはクビにされたが、一回だけ参加したパーティーでボス部屋をクリアした。


 積極性はあるんだ。

 やる気一万パーセントはウソじゃない。


『まさかゴブリン相手に人見知りは?』


『ないです。容赦なく叩きます』


 魔物との戦闘はOKなのか。

 それなら戦力になるからありがたい。

 幸い望月さんは魔法使い――遠距離攻撃職だ。

 俺がゴブリンと対峙している時に、離れた場所から魔法を撃てば問題ない。


 あとはコミュニケーションだよな。

 ダンジョンの中はスマホが使えない。


 そこで俺は望月さんとハンドサインを決めた。

 映画やドラマによく出てくるグーの『止まれ』など、簡単なヤツだ。


 これで最低限の意思疎通は出来る。

 大丈夫だろう。


 俺は望月さんとメッセージを通じて三十分ほどおしゃべりした。


『そろそろダンジョンに行きましょうか?』


『はい。よろしくお願いします』


 俺はスマートフォンを仕舞う。


 おや?

 望月さんが近づいている。


 スマホで話す前は十メートルくらい距離が空いていたけど、今は五メートルくらいの距離になっている。


 良い傾向だ!

 俺はちょっと満足した。


 少しずつ望月さんと心の距離を近づけていこう。

 その為にも、信頼されるように行動しよう。

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