第31話 パワー!
「そうか! レベルアップ!」
上原さんに指摘されて、俺は気が付いた。
一階層のボスも倒したし、そろそろレベルアップしていても良い頃だ。
早速、ステータスを開いてみる。
■―― ステータス ――■
【名前】 狭間駆
【LV】 1→2
【ジョブ】魔法使い
【HP】 D
【MP】 F
【パワー】D→D+
【持久力】D
【素早さ】E
【器用さ】F
【知力】 F
【運】 D
■―― スキル ――■
【剛力】
【精神耐性】
→【初級火属性魔法】
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俺はステータスを見て喜びと失望を味わう。
とても微妙な気分だ。
俺の様子を見て、上原さんが優しく声を掛けてきた。
「狭間さん? どうですか?」
「レベルアップしていました。でも……」
「でも?」
「えっと、良いニュースと悪いニュースがあります」
上原さんは、受付カウンターの向こうで『むむむっ!』とうなる。
「では、良いニュースからお願いします」
「レベル2になりました。魔法スキル【初級火属性魔法】をゲットしました」
「おお! おめでとうございます! 初級の火魔法はファイヤーですね! 狭間さん、ファイヤーメイジですよ! 良かったですね!」
うむ。ここまでは良いニュースである。
本当に喜ばしい。
これで名実共に魔法使いだ。
「では、悪いニュースを聞かせて下さい」
「パワーがDからD+に……」
「あれ? 魔法関連のステータスは伸びなかったんですか? MPとか? 知力とか? 器用さとか?」
「伸びませんでした!」
「あー、狭間さんはパワー系ステータスですもんね。ご愁傷様です」
上原さんが同情のこもった視線を向ける。
なぜだ!
俺は魔法スキルを得たのに、なぜ同情されているのだ!
なんとういう理不尽!
「まあ、まあ、狭間さん。そうガッカリしないで下さい。魔法スキルが生えたのは良かったですよね。ほら、エイホックさんからもらった新装備を使えるじゃないですか!」
「そ、そうだよね!」
そうだ。エイホックさんから魔法使い用近接戦闘装備をもらったのだ。
魔法使いは長距離職だろうというツッコミが入りそうだが、気にしてはいけない。
人それぞれの戦い方があるのだ。
「じゃあ、早速ダンジョンに行きましょう。狭間さん一人では心配ですから、私が同行します」
「お願いシャス!」
やった!
上原さんとダンジョンデートだ!
そう考えると、俺は興奮を抑えられなかった。
上原さんが怪訝な顔をする。
「あれ? 受付カウンターが浮いてませんか?」
なぜか重くて頑丈な受付カウンターが浮き上がっている。
なぜだろうか?
「狭間さん。何かしましたか? あっ!」
上原さんがのぞき込む。
俺も上原さんと視線の先を見る。
すると、もっこりした俺の股間が受付カウンターを押し上げていたのだ。
「狭間さん……」
「待って! 上原さん! これは違うんだ! パワーがD+になったのが悪いんだ!」
「パワーは、そのパワーじゃないでしょうが!」
「パワー!」
「ふざけんな!」
「痛い! 痛い! グーで殴るのは止めて下さい!」
例によって例のごとく、上原さんにボコボコにされるのであった。





