表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武装戦姫スクランブル  作者: 夢乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/41

038 最終戦初戦

「せ、先輩、どうしてあたしなんですかっ!?」

「そうです。わたくしよりも3年生の方が」

 マリナとエリカは、指名したミコトに抗議の声を上げた。しかしミコトは柔らかく微笑んだ。


「いいえ、ここは2人が最善です。まず茅吹(かやぶき)さん、あなたなら力押しも可能でしょう?」

「え? あ、はい、まあ……」

 マリナの装備は、オーキス・リアクターの出力こそ2基合わせて1MWだが、オーキス・ブースターのお陰でアーマードギアのパワーは跳ね上がる。ミコトはそれを知らないはずだが、今日の闘いを見ていて察したのだろう。


鷹喰(たかばみ)さんも、その武器を使えば大抵の相手には勝てるでしょう?」

「……はい、多分」

 百合華(ゆりはな)学園との戦闘が始まってから、エリカが長剣から持ち替えた2本の短剣。バトルロイヤルでもエリカが使ったその短剣の特性も、ミコトはモモカと闘いながら確認していた。


「だから、2人が最善なのよ。それに学年はまったく無関係ね。アーマードギアを使った戦闘経験なんて、1年生も3年生も期間は同じなんだから」

 それもそのはず、ここ10年近く井久佐野(いくさの)高校では男子争奪戦はなかったのだから、在校生の中で学年による戦闘経験の差は皆無だ。


 マリナとエリカが他の生徒を見回すと、ミコトの提案にみんな納得しているようだ。少なくとも、反対意見の出る様子は見えない。

 2人は顔を見合わせてから、ミコトに向き直った。


「解りました」

「精一杯努力します」

「それじゃ駄目よ。必ず勝ってもらわなくちゃ」

 にっこりと微笑むミコトに、マリナとエリカはたじろぐも、すぐにその視線を返した。


「はい。必ず勝利します」

「大船に乗ったつもりでいてください」

 マリナとエリカは言い切ったが、その目は自信に満ち溢れているとは到底言えなかった。


「任せたわよ」

 対してミコトは、自信に満ちた笑みで2人に頷いた。



 ××××××××××××××××××××××



 ミコトとモモカが話し合い、最後の決戦は1対1の対戦となった。1勝1敗になった場合は、勝者同士での最終戦を行う。


「でも、2戦ともこちらが取るから、最終戦はないわね」

 笑顔で言うミコトに、マリナとエリカは内心どんよりしつつ、いや、先輩がこれだけ信頼してくれているのだから応えよう、と思い直して奮起する。気持ちを落ち込ませていたら、勝てるものも勝てなくなる。


「1戦目は鷹喰さんね。よろしく頼むわよ」

「はい。あの、アドバイスを貰えるとありがたいのですけれど……」

「そうね。短期決戦、10秒以内に決めなさい。それを超えるとあなたの場合、色々と不味いでしょう?」

「10秒……ですか……。でも、長引くと不利なのは確かですね。解りました」

「頑張ってね」

 エリカはミコトに頷き、マリナに微笑んでから、前に出た。

 対戦する相手は皐月(さつき)ナノカ。両手に長剣を携えている。


「悪いけど、叩き伏せさせてもらうわよ」

 ナノカは右手の剣を鋭く振って、不敵な笑みを浮かべる。


「ギアを壊してしまうことになるでしょうけれど、ごめんなさい」

 エリカもナノカを煽るように言う。ナノカがピクッと身体を震わせた。


 エリカは両手の短剣の他、左腕に盾を装着している。メインウェポンの長剣は外して他の生徒に預けた。この対戦では不要と判断して。

 ミコトのサブウェポンの短剣は、バトルロイヤルの時から装備している。あまり訓練していないために普段は長剣を使っているが、実はこの短剣の方が攻撃力は高い。

 長剣をレーザー剣として使えば短剣の攻撃力を優に超えるものの、燃費が悪い。オーキス・リアクターが満水状態であればともかく、ここまでの戦闘で消費した状態での使用は危険だった。


(それでも、10秒で終われるなら問題ないのですけれど。長剣では10秒で決めるのは厳しいですし)

 それに、ミコトはエリカの短剣の機能に期待しているようでもある。ならば、彼女の言葉を信じて短剣での短期決戦に挑もう、と覚悟を決めた。


 開戦の合図は、副崎(そえざき)ネリイが務めた。彼女の武装の一つ、レーザー拳銃を空に向けて引金を絞る。


 ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。


 射線が現れると同時に、ナノカはエリカに向けて突っ込む。エリカは短剣を構えて迎撃の体勢。

 ナノカが振り下ろした右手の剣を、エリカは左腕の盾で受ける。


 バチッ。


 電磁シールドが反応するが、ナノカは力任せに押し込んでいく。……と思いきや、そうして盾に意識を割かせつつ、左手の剣による攻撃。しかしエリカもその手には乗らず、右手の短剣を振り上げる。

 振り下ろされる長剣と振り上げられる短剣、それにオーキス・リアクターの出力の差。だれが見ても、エリカが押し切られると思う場面。

 2本の剣が交わる寸前、エリカの短剣の刃がブレた。そして。


 キィンッ。


 ナノカの剣が綺麗に切断された。


「え??」

 ほとんど抵抗もなく武器を破壊された驚きで、ナノカの右手の力が弱まる。エリカは右手の短剣でナノカに斬り付け、ナノカは一瞬で思考を切り替えエリカから跳び退って距離を取る。

 考える時間を与えまいと、エリカはナノカに肉薄、両手の剣を振るう。霞む刃がナノカを襲い、受けるのは危険だと判断したナノカはそれを辛うじて避ける。

 エリカは足に力を込め、瞬間的にエネルギーの大部分を脚部に集中、離れたナノカとの距離を一気に詰めると続けて腕に力を込め、両手の短剣を勢い良く振り抜く。

 ナノカはその攻撃を躱しきれず、剣で受ける。


 キンッキンッ。


 切断された剣先が宙を舞い、地面に突き刺さる。短くなった剣を構えつつ、ナノカはさらに後退するが、エリカは左手を振って短剣をナノカに向けて投擲する。

 ナノカは身を捻って飛んで来る短剣を回避、それで一瞬、エリカから視線が逸れた。ナノカの行動を予測していたエリカはナノカの後ろに回り込み、躊躇うことなく右手に残した短剣で背中のオーキス・リアクターを切り裂いて、すぐに跳び退いた。


 ナノカがエリカを振り返るが、そこまでだった。苦し紛れにジェネレーターに残ったエネルギーを使って半分の長さになった剣を投げ付けるも、盾で簡単に弾かれた。オーキス・リアクターを破壊され、エネルギー供給を失ったアーマードギアの動きはすぐに精彩を欠き、ナノカは敗北を宣言した。




「勝ちましたっ」

 投げた短剣を拾って仲間たちのところへと戻って来たエリカは、笑顔でミコトに報告した。


「お疲れ様。良くやったわね」

「はい。次はマリナね」

「うん。エリカが勝ってくれたお陰で、気が楽になったよ。それにしてもその剣凄いね。どうなってるの」

「それはちょっと……」

 質問に表情を曇らせたエリカを見て、マリナはピンときた。自分も同じなので。


「あ、いいよ、言えないことなら言わなくて」

「振動刃剣でしょう?」

 ミコトが言った。エリカが口を開きかけ、固まる。


「あ、なるほど、それで斬れ味を上げているのか」

「詮索はここまでにしましょう。鷹喰さんも困っているから」

「はい。次はあたしですね。あの、先輩からのアドバイスは戴けますか?」

「そうね。茅吹さんは、短期決戦に拘る必要はないわね。もちろん、可能なら短期で済ませて構わないけれど。とにかく力押しで、ただしパワーに振り回されないように注意なさい」

「はい、ありがとうございます」

 マリナはミコトに礼を言うと、グラウンドの中央へと出て行った。


(気は楽になったんだから、勝たなきゃね。エリカに負けてはいられないっ)

 最後の対戦に向かいながら、マリナは気持ちを引き締めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ