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武装戦姫スクランブル  作者: 夢乃


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24/41

024 大乱戦

「もらったあっ」

 ギインッ。

 上空から飛び降りると同時に振り下ろされた槍を、ミコトは両手の剣を交差させて難なく防いだ。


槍蔵(やりくら)キョウコさんね。攻撃が当たる前に大声を出したら、受けてくれと言うようなものです、よっ」

 最後の言葉と同時にミコトは2本の剣で槍を押し返し、槍を逸らして剣で身体に斬りかかる。

 キョウコは弾かれた槍の柄を使ってミコトの攻撃を防ぎ、そのまま槍を縦に回転させてミコトの顔をかち上げようする。

 ミコトは半歩横に移動しただけでその攻撃を避け、2本の剣でキョウコに追撃。キョウコは槍の中ほどを握って、穂先と柄で剣を弾く。


 キョウコは、最初に攻撃を仕掛けたものの、剣の間合いに入り込まれて防戦一方。しかし、それを予期していなかったわけではない。

 剣を防ぎつつ、左下腕がミコトに向いたタイミングで、左腕の小盾の内側からドスッと鈍い音と共に短剣が射出される。

 ミコトは剣でそれを弾き飛ばすが、その一瞬の攻撃の隙をついてキョウコは一歩後退、間合いを槍のそれにして素早い突きを繰り出す。

 その攻撃もミコトは剣で受け流すが、攻めに転じるまではいかない。2本の剣をもってしても、キョウコの槍を捌くので手一杯。


 しかし、その攻防も長くは続かなかった。

 突然、横の少し離れた林から緑色のアーマードギアが吹っ飛んで来た。突然の乱入者に、火花を散らしていた2人はパッと左右に距離を取る。


(あれは……2年の蒼旗(あおはた)アンナさんね)

 キョウコに意識を向けながら、ミコトは乱入者を素早く確認する。

 アンナは空中で体勢を整え、ズザザッと地面を僅かに抉りつつ着地、両手の鉤爪を構える。


「逃がすかぁっ!!」

 アンナが出て来た林から、黄色のアーマードギアを着た参加者が飛び出して来た。両手で長い棍を振り被り、アンナに向けて振り下ろそうとした時。


「邪魔っ!」

 キョウコが思い切り横に振った槍の柄が、飛び出して来た参加者の腹部にめり込んだ。電磁シールドがバチチッと音を立て、身体が出て来た林の方へと飛ばされ、立っている木に叩きつけられた。


(隣のクラスの伸上(しんじょう)ミチルさん?)

 ミコトは吹き飛ばされた参加者を横目で見る。


「余所見してると危ないですよっ」

 ミチルを殴り付けた槍をそのまま一回転させ、その勢いで続けてミコトへの攻撃に移るキョウコ。ミコトは左手に握った剣で槍を受け流す。

 その戦闘にアンナが割り込む。着地した体勢から地を蹴って二人に近寄り、左手の鉤爪でミコトの胸を狙う。

 ミコトは右手に持った剣で鉤爪を受ける。そこへキョウコの槍が突き出され、次の突きはアンナへ向かう。アンナも引かず、両手の鉤爪を駆使して防御と攻撃を繰り返す。


「こんのぉっ!!」

 そこへ、裂帛の気合とともに、長い棍が振り回される。2メートルほどだった棍を5メートルほどまで伸ばし、3人全員を薙ぐつもりで振り回すミチル。

 最初の標的となったミコトは地を蹴り空中に跳んで攻撃を回避、アンナは体勢を低くして棍を交わす。3人目のキョウコは槍の柄で棍を受け止めた。


 ガギンッ。


 鈍い音が辺りに響く。

 身体を低くしたアンナは地を這うようにミチルに突撃、低い体勢から鉤爪で斬り上げる。

 ミチルは棍を短く戻しながら地面に突き立て、アンナの攻撃を防ぐ。


 受け止めた棍が消えてやや体勢を崩したキョウコを、ミコトの剣が襲う。すかさず後退しながら槍を突くが、ミコトは身体を半身にするだけでそれを躱し、さらに踏み込んでキョウコを追い詰める。

 キョウコはミコトの剣を受けつつも、危険を承知でミチルとアンナの方へと回り込む。

 ミチルの棍の突きをアンナが避ける。それを、後ろを見ることもなくキョウコは身体を少しだけ横にずらして躱し、棍に合わせて槍を突く。

 ミコトが両手の剣で棍と槍を逸らす。逸らされた勢いのまま、キョウコは足を斜め前方に踏み出し、ミコトの背後へと素早く回り込んだ。


 ミコトはすぐさま向きを変え、まるで相棒のようにアンナと背中合わせになる。それを両側から槍と棍を構えて挟み込むキョウコとミチルも、まるで共闘しているかのよう。

 突き出される槍と棍の攻撃を捌きつつ、ミコトとアンナは反撃の機会を狙う。


「やっ!」

 そこへ、横から5人目の少女が飛び出す。両手で持った薙刀を横に振り、4人の脚を斬り払う軌道で刃が閃く。

 最初の犠牲の位置にいたキョウコは咄嗟に後退、薙刀の切っ先を掠めつつ避ける。バチッと電磁シールドが反応する。

 続けてミコトはジャンプして躱し、アンナの躱したミチルの棍の先が、薙刀と衝突し、偶然にもアンナを助けることになる。


 アンナも異常を察知、その場を跳びのき、ミチルも混乱した状況に一旦距離を取る。

 しかしミコトが中断を許さない。


住崎(すみさき)ユイさんね。退場してもらうっ)

 ユイの薙刀を上空に避けたミコトは、空中で身体を回転させつつユイの後方に着地、すぐさま右手の剣を横に薙ぐ。しかしユイも黙って攻撃を受けるわけもなく、ミチルの棍で崩したバランスを即座に回復、後ろも見ずに薙刀を回転させてミコトの剣を弾く。さらにその場で薙刀をグルンッと回転させ、4人との距離を確保する。


 ユイが回転を止めて薙刀を構えた瞬間、彼女の斜め後方にいたアンナが鉤爪でユイに攻撃、呼応するようにほかの3人もユイを狙う。

 5人がほぼひとところに集まったその時。


 ドビュビュビュビュビュビュビュビュッ。


 横の林からレーザーが連続で発射され、5人を襲う。


「きゃっ!!」

 レーザーの発射点に一番近かったミチルが吹き飛ばされる。電磁シールドである程度相殺したものの、思わぬ方向からの攻撃にかなりのダメージを負った様子。

 さらにレーザーはキョウコとアンナとユイに当たるも、3人は電磁シールドを強化して防御しつつ散開。大ダメージを避ける。

 ミコトは一番離れたところにいたこともあり、ミチルにレーザーが当たった瞬間には回避行動に移っていたため、レーザーを何発か受けるも電磁シールドで完全に無力化する。


「やぁっ!」

 レーザーの掃射は5秒ほどで停止。その途端にユイが林へと飛び込み、薙刀を横に振り抜く。その1振りで3本の木が薙ぎ倒され、そこにいた連打(つらうち)レンゲが両手で持った巨大なガトリングレーザーガンで薙刀を受け止めた。


「倒すわよっ」

「こっちがねっ」


 ユイとレンゲが戦闘に入る後ろで、アンナが倒れミチルの後頭部に肘打ちを浴びせた。


「んぐっ」

 そのまま力なく崩折れるミチル。そしてアンナの後ろから、ミコトの剣とキョウコの槍の攻撃が襲い掛かる。しかしアンナはミチルが堕ちると同時に振り返っていて、その攻撃を両手の鉤爪で防ぐ。

 すかさずもう一方の剣で追撃するミコト。しかし、そこにユイの身体が吹っ飛んで来た。


「「「きゃあっ」」」

 ユイはキョウコとミコトの2人に激突し、3人ともに地面に倒れる。が、すぐに3人とも跳ね起きた。

 その間にフリーになったアンナは、林から出てきたレンゲに向かって跳躍し、両手の鉤爪を繰り出す。レンゲはガトリングレーザーガンで鉤爪を受ける。


「飛び道具だからって、近接戦が苦手と思わないことねっ」

 レンゲは片足を上げてアンナの鳩尾に叩き込む。その蹴りが当たる寸前でアンナは後ろに飛ぶも、強烈な勢いを流しきれずに吹き飛ばされる。

 アンナは苦痛に顔を歪めるも、すぐに地面を転がる。アンナの倒れていたところに、レンゲの巨大なガトリングレーザーガンが、ズッドォッと叩きつけられた。


 素早く起き上がるアンナの左右をユイとミコトが駆け抜け、レンゲに攻撃をかける。アンナも攻撃を続行しようとした。が、後ろから首元を強打され、地面に崩れ落ちる。

 アンナを石突で堕としたキョウコは、油断なく槍を構える。その目に入るのは、巨大なガトリングレーザーガンを丸太のように振り回し、ミコトとユイの2人を相手に暴れるレンゲの姿。


(何あれっ、やっぱっ)

 しかし、ここまでやって逃げる選択肢はない。レンゲの死角になるようにミコトの背後に隠れると、タイミングを見計らってミコトの背中に向かって最速で槍を突き出す。

 ミコトは即座にジャンプ、キョウコの槍はミコトの向こう側に位置していたレンゲに向かう。

 ユイの薙刀を弾いていたレンゲのほとんど無防備の右腹に、キョウコの槍が迫る。


(もらったっ)

 しかし、レンゲは身体の向きを武器とともに素早く変えて、キョウコの突きを銃身で受け止めた。

 レンゲはニッと笑みを浮かべると、 槍を弾き飛ばして銃口をキョウコに向ける。咄嗟に脚に力を込め、斜め後方に跳びのくキョウコ。

 ガトリングレーザーガンが唸りを上げる。


 が、レンゲの後ろに、先程跳び上がったミコトが上空から回り込み、双剣を振るう。バギャンッという音と共に、レンゲのアーマードギアの動力源たるオーキス・リアクターが破壊された。


「え?」

 しばらくはオーキス・キャパシタに蓄えたエネルギーで動いていたのだろうが、ガトリングレーザーはエネルギーをかなり消費するらしく、1秒と保たずにレーザーは消え、ズシンッと銃口が地面に落ちた。


 無効化したレンゲを無視して、ミコトはユイへと標的を変える。ミコトの猛攻を何とか防ぐユイ。そこへ、体勢を立て直したキョウコも割り込む。

 ユイとキョウコに挟撃される位置に立ったミコトだが、両手の剣をそれぞれに向けて、まったく引かない。突かれる槍と薙刀を剣1本ずつで防ぎ、攻撃を逸らす。さすがに、攻めには転じられないが。


 そして両側から槍と薙刀がほとんど同じ軌道で突かれた時、ミコトはさっと身体を地に沈めた。


「「!?」」

 防ぐ者のない空間を槍と薙刀が交差する。キョウコの槍がユイの脇腹を抉り、ユイの薙刀がキョウコの右上腕を掠めた。バチバチッと電磁シールドが反応するも、両者から血が飛び散る。


「「ぐぅっ!」」

 呻き声を上げるキョウコとユイ。その2人を、両手を地面についたミコトの蹴撃が襲う。キョウコもユイも、ミコトに顎を思い切り蹴り上げられ、身体を仰け反らせて背中から地面に倒れた。

 ミコトはクルンッと脚を回転させ、両手で身体を浮かせてスタッと着地する。


「はぁ、こんな乱戦になるとはね。でも、みんなかなりの高得点所持者だし、かなり稼げたわね。あと何人残っているのかしら?」

 ミコトは剣を納めると、運営に連絡し、残る参加者を探すために歩き出した。


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