40.リリちゃんの魔力は私が毎日フル充填してますが何か?
「ば……か……な……。こんな……ことが……あっていいわけが……ない……」
「最弱の……はず……」
「ありえない……ありえ……ない……」
リリちゃんの攻撃を受けた、三体の死者たち。
元魔王リリちゃんの配下たちは、信じられないといった言葉を吐くか、あるいは茫然としている。もはや悪態を吐く気力もないようだ。倒れたまま動かない。
「ふ~……。は~……」
一方のリリちゃんは完全な魔王モードだ。
私より一回りも小さいはずの可愛い女の子の姿なのに、彼女からあふれ出る魔力は禍々しく、その圧力だけで教会内部のガラスにひびが入り、地面は鳴動し、祈りの祭壇や木製の長椅子がみしみしと音を立てて崩壊していく。
「「「ひ、ひいいいいいいっ……!!!!」」」
とうとう元配下さんたちは悲鳴を上げ始めた。
リリちゃんは魔王モードになってしまって、説明どころではなさそうなので、私は口を開く。
「先代魔王様に本当の力を出させてしまいましたね。それはさすがに勝てませんよ」
微笑みながら伝える。
「あ、あんなに弱かったのに……。現魔王様との戦いでも、逃げるようにして国を出た負け犬だったはずなのに!」
「それはリリちゃんが優しすぎたせいじゃないですかね?」
「……は? な、なんだと……? どういうことだ?」
意味が分からないとばかりに、三体の死者は戸惑う。
私は言う。
「リリちゃんが本気を出したら、歯止めがきかないから、手加減が難しいんですよ。リリちゃんは魔王にしては優しすぎますからね。それで相手を殺してしまうくらいなら、負けた方が良いと思ったんじゃないですか?」
「で、でたらめを言うな。どうしてお前ごときにそんなことが分かるのだ」
「え? それは私がリリちゃんの魔力を毎日満タンにしているからですよ」
「……え?」
呪われた者の王は茫然とする。そして言った。
「今更嘘をつく意味もない。お前は真実を言っているのだろう。だが、だとすれば……」
漆黒の死者は崩れ落ちる骸骨の顔をこちらに向けて、怯える様にして言った。
「お前があの化け物を呼び起こした張本人ということか。ああ、恐ろしい奴。恐ろしい奴ら。こんな化け物どもを相手に我らは戦いを挑んでいたとは……」
「いえいえ、本当に強いのはリリちゃんですので。ところで勝利の暁に一つ聞きたいのですが」
「なぜ貴様の質問に答えねばならぬ……」
「だって、あなたたちはリリちゃんとの約束はもう守れないでしょう? 既に身体は消滅しかかっています。だから、代わりの対価を要求します」
「分かった。良いだろう……」
言ってみるものだ。というか、リリちゃんと同じくらい、私怯えられていません?
「どうやって魔貴族ほどの上級魔族が大結界を超えて人間の王国へ侵入できているのですか? 大結界がある限り、超低レベルの魔族以外は侵入不可能なはずです。もちろん、自分の魔力貯蔵庫を壊すぐらいのことをすれば、超低レベル魔族として入ることも出来るかもしれませんが」
「簡単なことだ。一時的に大結界の一部にほころびが出来た。そこから侵入したのだ。すぐに塞がったがな」
「そうですか。おかしいですね、イゾルテさんには引継書をしっかりと残しておいたのですが……」
「待て。もしやお前があの大結界を維持していたのか?」
「はい。ですが今はクビになりまして、こうやって癒しまくれる自由の身になったんです」
「……そうか。我もそうだったように……。真の実力を見抜けぬ愚者につける薬は……な……い…………な………………。こうして滅ぶしか、救いが……ない………………………………」
そう言いながら、呪われた者の王たちは一斉に塵へと還って行きます。
こうして、ティアムールの街の『ゾンビ化病』事件は一旦の解決を見たのでした。
ところで、
「ふしゅー、ふしゅー」
「あのー、ミューズさん。リリちゃんが暴走モードのようですので、止めて頂いて良いですか?」
「し、師匠!? それはないですよー!?」
魔王状態のリリちゃんを落ち着かせるのに、その後大変苦労したことは言うまでもないのでした。
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