表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/63

21.ミューズさんの魔法の欠陥

「師匠様! では宜しくお願いします!」


「師匠ではないのですが。弟子は取ってませんので……」


「その通りじゃ。あと、ちーと距離が近いのじゃ。しっしっ」


そんな会話をしているのは、森の中のひらけた原っぱのような場所だ。


馬車をとめて、このエルフのミューズさんが、風魔法が使えない原因を探ることにする。


「じゃあ、とりあえず一度、風魔法を使用してみましょうか?」


「でも、発動しませんよ?」


「はい。ただ、発動しないにしても、どういう感じで発動しないのか、見ないことには分かりませんからね」


「分かりました……で、では」


ミューズさんが少し緊張した面持ちになった。


まぁ、使用できずに里を追い出されたのだ。


魔法自体に積極的になれない気持ちは分かる。


私も王宮でのテーブルマナーなりなんなり、舞踏会なりはなれなかった。


いちおう妃候補だったので、色々仕込まれたが、もう二度とやりたくないのが本音だ。


「い、行きます!」


ミューズさんが詠唱する。


「風の精霊シルフよ。その大気を司る権能において……」


(『風の弓(ウインド・ショット)』ですね)


初級の風魔法だ。


詠唱をすると、ある種の召喚陣が生成され、そこから精霊が現れて魔法が使用できるのだ。


魔法は精霊の加護による奇跡である。


そして、召喚できる精霊は、種族によって得手不得手がある。


エルフは風の精霊たちと相性が良い。


というか、風の精霊たちの子孫がエルフだとすら言われている。


ゆえに、初級魔法すら使用できない訳がないのだが……。


「この地を撫でる風韻を起こせ……あっ」


と、途中までうまくいっていた魔法陣が、詠唱の最後あたりで突如消滅してしまった。


「あううー、やっぱり」


長い耳をシュンとうなだれさせて、ミューズさんがへこんでいる。


「なかなか重症じゃな。じゃが、どうして急に魔法陣が消滅したんじゃろ?」


うーん、と私はさっきの魔法陣を思い出す。


そして、


「ちょっといじってみましょうか」


と提案した。


「はい? な、何をですか?」


ミューズさんが疑問符を頭に浮かべた。


「もちろん、ミューズさんの魔法陣に書いてある、精霊言語を、ですよ」


そう言うと、ミューズさんどころか、リリちゃんも驚いた表情でこちらを見た。


あれ?


「わ、分かるんですか!? 精霊言語が!?」


「あ、はい」


「どうやって!? 精霊言語を読める方なんて、ありえませんよ!? 昔から伝わる魔法陣を使用するものでしょう!?」


「ああ、普通はそうなんですか?」


私は淡々と頷きながら、


「でも、何か書いてあるなら気になるし、調べたくなるじゃないですか」


「じゃがセラよ。魔王領でも解読は難しいとされておったし、恐らくじゃが、人間の国でもそうだったはずなのじゃ。調べても研究しても解明は不可能とされておったはずじゃが……」


「あー、私は教えてもらいましたからね」


「す、すごい! 誰にですか!? 精霊言語を解読した、そんな凄腕の魔法使いがいらっしゃるんですか!?」


「いえいえ。御本人に」


「え?」「はい?」


二人が頭に疑問符を浮かべるが、私はあっけらかんと言った。


「精霊さんたちに直接聞いたんですよ。最初は全然相手にしてもらえませんでしたけど、何度か話しかけてたら、ちょっと仲良くなれまして。ふふふ、最初は『いつも助けてくださりありがとうございます』って伝えられるよう、言葉を習ったものです」


「と、友達になったんですか!? 精霊と!?」


「うーん、聞いたことが無いのじゃ。あまりに規格外すぎて、なんも言えぬ」


二人が頭を抱えてしまった。


まぁ、それはともかくとして。


「というわけですので、もう一度魔法陣の発動をお願いします、ミューズさん」


「は、はい!」


「そして、その際の注意点としてですが」


私ははっきりと言った。


「詠唱は最後まではしないようにしてください。恐らく呪いの言葉が書かれています」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ