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【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
第四章 『虚ろの魔王』編 前半

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第261話 『王佐の在り方』①

「ファルラさん、ルクレツィアさん、ありがとうございました。僕たちにとってもすごく有意義な模擬戦になりました。エリザとフレデリカもお疲れ様」


 獣人種(セリアンスロープ)戦、亜人種(デミ・ヒューム)戦、それぞれの模擬戦が終了した4人に対して、ソルが掛けていた椅子から立ち上がって労いの言葉をかけている。


 これはなにもお世辞の(たぐい)ではない。


 まさに実戦からしか得られない新たな知見に対して、ソルは本気で満足しているので上機嫌なのである。


「というわけで僕はファルラ・ドゥルガーを獣人種(セリアンスロープ)の代表、ルクレツィア・シュステンを亜人種(デミ・ヒューム)の代表として認めます」


 よってソルの言葉に膝をついて会釈で応えるフレデリカとエリザとは違い、2人の真似をしながらも、どういうリアクションが正解なのかを測りかねていたらしいルクレツィアとファルラに対して、ソルは今2人が一番欲しいであろう言葉を勿体ぶることなく伝えた。


「ありがとうございます!」


「感謝致します!」


 ルクレツィアもファルラも、まずはその言葉を聞けただけで大いに安心してしまい、フレデリカとエリザに倣って下げていた頭を反射的に上げて、ソルを感謝の瞳で見つめてしまった。


 ファルラはともかく、ルクレツィアは「面を上げよ」とも言われていないのに勝手に上げてしまったことに一瞬ひやりとしているが、元よりソルはそんなことを気になどしていない。


 礼儀作法とは、その所作によって感謝や彼我の立場の差をわかりやすく表現するためのものとも言える。

 ゆえに真の絶対者にとって、感謝されていることが分かるのであれば細かい部分に拘る必要を感じないものでもあるのだ。


 公的な場であればまた意味合いは違っても来るのだが。


 とにかくソルからその言葉を引き出せた以上、真の獣としてあるまじき姿や奥義を使いながらもみっともなく気を失うという醜態を晒した甲斐が、お互いにあったというものである。


 これでまちがいなく亜人種(デミ・ヒューム)獣人種(セリアンスロープ)には安寧が約束されるし、自分たちを代表とした鬼人族、銀虎族の面目を保てたことも間違いない。


 それはとりもなおさず、ルクレツィア、ファルラ共に己が身を捧げてでも叶えたい望みが叶う可能性が、一気に現実的なラインまで浮上してきたということでもある。


 そうでなければ可能性という言葉を使うことすらおこがましい、妄想の(たぐい)といった方がより正しいのが、2人それぞれの望みだったのだ。


 だが少なくともこの大陸における人の社会――汎人類連合に属するあらゆる国家は、ソルの意向を無視して立ち回ることなどもはやできはしない。

 つまりどれだけ不可能ごとに思えても、それが実現可能な事象である限りソルが「そうしろ」と言えばそれは実現されるのだ。


「その上でお2人には、僕の直属パーティー・メンバー入りをお願いします。問題ありませんか?」


「もちろんです!」


「許可さえいただけるのであれば、もとよりそのつもりでございました」


 その上「できれば」程度であった絶対者(ソル)の側付きとなる許可も下りたとなれば、これはもう最上の結果だとしか言えない。


 きちんと絶対者(ソル)の方から要請するという(てい)を取ってくれていることもありがたい。


 だからこそファルラもルクレツィアもソルの言葉に間髪入れずに了承を表明し、感謝の意を伝えるために深く頭を下げている。


 2人とも模擬戦を経て、すでに嫌というほどに思い知っているからだ。

 ソルの側付きになれるということは、世間一般で思われている絶対者の寵愛、庇護を受けられる強みを得るだけではないということを。


 ソルの威光だけでも、2人の望みを叶える程度であれば確かに容易いことだろう。


 だがそれ以上にルクレツィア、ファルラそれぞれが相対したフレデリカ、エリザのような力を与えてもらえるのであれば、ソルの意に反さない限り自分の手で己が望みを叶えることすらも可能になる。


 それに2人はもとより、絶対者が望むのであれば己の生涯を捧げる覚悟はできていた。

 ()()()()()で種族の、一族すべての安全な生活が保障されるのであれば、高い安いで語ることすらバカバカしいほどの供物(犠牲)に過ぎない。


 もはやソルは実在し、供物に応じて本当に願いを叶えてくれる神様となにも変わらないのだ。


 ゆえに先のソルの言葉が「今晩2人揃って僕の部屋に来るように」であったとしても、ルクレツィアもファルラもまるで変わらぬ返事をしていたことは疑いえない。

 ともすれば絶対者の側付きとなることがより明確になるがゆえに、より喜んでいたかもしれない。


 当のソルにしてみれば「僕を一体なんだと思っているんだ!?」とも言いたくなるではあろうが、突き抜けた絶対者というものは、被支配者たちからそうみられるのだということを受け入れるしかないだろう。


 もっとも2人ともにそう自己評価の高い方ではないルクレツィアとファルラにしてみれば、リィンやフレデリカ、エリザを目の当たりにしてからは、ソルがわざわざ自分なんかを相手にはしないだろうとも思っている。


 それ以上にソルが自分たちに示した興味の種類が、色欲ではなく戦闘能力の方だというのは実感できているので、実は嬉しかったりもするのだが。

 

「じゃあ今日からパーティー・メンバーとして攻略に参加してもらいます。って言ってもまずは最低限の()()()確保と、それを前提にした()()()()()になりますから、しばらくは一緒に行動してもらえればそれで構いません」


 だがさっそくソルはとんでもないことをさらりと口にしており、ルクレツィアもファルラも流石にあっけにとられるしかない。

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