表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
前日譚 『無限剣閃 序 出逢い』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/283

第190話 『アライアンス』⑥

「すっごい……」


 弓使いであるリズは、今まで経験したことのない対階層主(ボス)戦闘を自分たちが完封してのけたことに素で茫然としている。 


盾役(ダンク)回復役(ヒーラー)……素敵です」


 意外なことにクール・ビューティーと見なされているユディトは、戦闘終了と同時にへたり込んでしまっている『盾役(リィン)』と『回復役(ジュリア)』を熱のこもった瞳で見つめながら、頬を染めている。

 ソルの指揮は別次元のものと置いておくとして、今の戦闘の機能的な(かなめ)がその2人であることを理解できているがゆえの感嘆である。


 もちろん不安も恐怖もあった。


 それでもユディトが『双剣士』という(ジョブ)を授かってから今まで、先の戦闘のように自分の能力を十全に機能させた経験など1度たりともなかったのだ。


 接敵(エンカウント)した魔物(モンスター)に自らの『技』を当てた結果、敵意(ヘイト)を取って狙われる。

 他のパーティーメンバーへ魔物の敵意(ヘイト)が移るまでは、その攻撃を全力で回避する。


 その繰り返しで魔物が倒れるまで攻撃を喰らわなければ、ユディト個人の勝利ではある。

 だが今までは10回も戦闘をすれば、1度は魔物の攻撃を喰らってしまうパーティーメンバーが生まれていた。

 それでも未だ王立学院生であり、最弱級の魔物を訓練相手としているだけに、さすがに死者が出ることは滅多にない。


 とはいえ通常攻撃とはいえかなりの怪我を負うことは避けられないし、運悪く特殊技の直撃を喰らってしまった場合は、訓練とはいえども死に至ることもある。


 魔物(モンスター)と戦うということは、自分もそうなる覚悟をした上でなければ務まらない。

 たとえ学びの過程とはいえ、その過酷さが低減されることなどありはしないのだ。


「これがラルフ会長をして、単独(ソロ)攻略を放棄させた能力ですか……」


 リズとユディトの感嘆している理由を、ルディも当然理解している。


 『盾役(タンク)』が十全に機能し、『回復役(ヒーラー)』が支援と万が一の回復に備えてくれているだけで、対魔物戦闘はここまで洗練され、美しいと表現できる域へまで昇華するのだ。


 物理もしくは魔法。

 あるいは近接ないしは遠距離。


 それらを問わず、自分の『能力』を完全に機能させることがこれだけ達成感を――いや言葉を飾らないのであればただ単純に「気持ちいい」とは知らなかったのだ。


 それはなにも、安全を保障された上でのべつまくなしに魔法や技をぶっぱなし続けられるということを意味しない。

 それどころか戦闘で経過した時間だけでいえば通常よりも相当長くかかっているのは事実であるし、技や魔法の発動は指揮官(ソル)の指示に従い、全力斉射とは程遠い。


 それも当然、通常の戦闘であれば初撃を一斉に叩き込んで以降、再使用可能待機時間(リキャストタイム)が終われば即発動させるのが今までの定石(セオリー)だったのだ。


 先の戦闘のようにソルの指令に従い、タイミングをはかったり貯めたり、ましてや通常攻撃を当て続けるなどという、一見無駄にしか見えないことなど普通は絶対にやらない。


 敵意(ヘイト)を向けられた者が回避に専念している間に別の仲間が魔法か技を当て、敵意を引き継ぐ。

 その繰り返しが倒せるまで続くのだ。


 それと比べれば先の戦闘は開始から討伐完了まで、戦いのすべてを自分たちが支配していると言っても過言ではないだろう。


 『盾役(タンク)』が敵の敵意(ヘイト)をしっかりと固定し、『回復役(ヒーラー)』がそれを崩れないように適時『回復』を行使する。

 『攻撃役(アタッカー)』は必要以上に敵意(ヘイト)を稼いでしまわないように通常攻撃も交えて敵を削ってゆき、敵の大技行使を契機に技後硬直(フォロースルー)被弾硬直(ヒット・ストップ)を活かして一気に削り、終盤の『暴れ』そのものを発生させる間もなく倒しきる。

 

 スポーツでいえば個々の能力では劣れど連携(チームワーク)を駆使して、個人技頼りの格上集団を完封してのけたようなものといえる。

 

 その中核となった戦力が、ユディトが見惚れるとおり『盾役(リィン)』と『回復役(ジュリア)』であったことは間違いない。


 だがその指揮を完璧にこなして見せたソルこそが最も規格外なのだと、ルディはきちんと気が付いているのだ。


 そもそも対魔物との戦闘で、役割分担をするという発想すらルディは持ったことなどなかった。


 もちろん知識としてはルディも技後硬直(フォロースルー)発動待機時間(キャストタイム)再使用可能待機時間(リキャストタイム)被弾硬直(ヒット・ストップ)が存在していることなど知っている。

 だがそれを実戦に取り入れて戦術を組み上げ、それを完璧な指示のもと実現できるとなれば、ソルの能力の有効性は「攻撃力」だの「防御力」だの「回復力」だので語れる範疇では無くなる。


 ソル個人は先の戦闘において、魔導人形(ゴーレム)に対して一切の痛痒(ダメージ)を与えてなどいない。


 だがソル抜きで同じことがルディたちにできるかと言えば、絶対に不可能だと断言できる。

 『盾役(リィン)』と『回復役(ジュリア)』がいてくれてたとしても、その能力を十全に発揮できる指揮をとれる者などいないからだ。


 烏合の衆とて、王を戴けば強兵へと化ける。

 まだ尻の殻すら取れていない王立学院生(自分たち)が、高脅威階層主(魔導人形)を完封してのけるほどまでに。


 それを理解して愕然としているルディに、ラルフは苦笑いで肩を竦めてみせる。

 それは「さもありなん」半分、「ソル君の本当の力はこんなものでは済まないんだよ」というのが半分と言ったところだろう。


 そのラルフが「ソルの真の力」と見做しているものですら、実は本質ではないあたりがソルの最も規格外なところなのであるが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ