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【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
前日譚 『無限剣閃 序 出逢い』編

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第189話 『アライアンス』⑤

 だがソルとリィンのコンビは、その神技を完璧にやってのけて見せた。


 数えきれない光弾が魔導人形(ゴーレム)の周囲へ一斉に撃ち出され、その後怒涛の奔流となってリィンへと殺到する。

 対物理攻撃特化の『盾受(パリィ)』ではもちろん受けきれず、対魔法攻撃用で『反射魔導盾(リフレクト・シールド)』と似た力場を展開する『祝福盾(ディバイン・シールド)』でも現H.Pの大部分を持っていかれるであろう飽和攻撃。


 だがそれをジャスト・タイミングで展開された『反射魔導盾(リフレクト・シールド)』がすべて吸収する。

 その過程において、リィンのH.Pは一切削られていない。


 魔導人形(ゴーレム)からの光の奔流が収まった直後、リィンの盾が展開していた『反射魔導盾(リフレクト・シールド)』が消滅し、それと同時に盾を中心として強烈な光が生じる。


 受けた攻撃の50%を、それを放った魔導人形へと盾大の直径を持った魔導光砲(レーザー)としてぶっぱなすのだ。


 特殊技を放った魔導人形は、大技故にこそ未だ技後硬直(フォロースルー)が解けていない。

 そこへ『反射』の魔導光砲がぶっ刺さる。


 多段ヒットするその攻撃は轟音と共にごっそりと魔導人形のH.Pを削り取ると同時に、被弾硬直(ヒット・ストップ)(かさね)て強いてゆく。

 低レベルの能力者たちが放つ技、魔法など比べ物にならない勢いで膨大なH.Pを消し飛ばしてゆくが、そのまま削りきるまでには至らない。


 ソルの表示枠ではフルから見てちょうど10%を切ったあたりで、魔導人形のH.Pの減少は停止した。


 H.Pがその領域に突入するということは領域主、階層主といったボス系の魔物特有の危険域――通称「暴れ」とも言われる特殊行動、特殊攻撃を法則性なく行う断末魔、死に際の最後っ屁とも言える最大の難関戦闘期間への突入を意味する。


 そこまでは有利に戦闘を進めていたパーティーが、一気に壊滅に追い込まれることも決して珍しくはない、対ボス戦闘の最大の鬼門。

 幾度も討伐履歴がある魔物であっても、それがいつ発生するかなどわからないがゆえに多くの能力者を死に至らしめる「理不尽な逆撃(アンリィザナブル)」ともいわれる時間帯なのだ。


「今です! 全員大技発動してください!」


 だがそれをすでに理解しているソルは、その危険域で敵に何もさせないように戦闘を組み立てている。


 今のタイミングに各自最大技、魔法で畳みかけるためにこそ、リィンの『反射魔導盾(リフレクト・シールド)』を決める前に攻撃役(アタッカー)たち全員へ、発動待機時間(キャストタイム)へ入るように指示をしていたのだ。


 『反射魔導盾(リフレクト・シールド)』を完全に決めたおかげで、敵意(ヘイト)はがっちりリィンに固定されている。

 特殊技発動後の技後硬直(フォロースルー)だけではなく、跳ね返された自分の攻撃を喰らったことによる被弾硬直(ヒット・ストップ)も重なった結果、回避も迎撃も出来なくなっている魔導人形(ゴーレム)に、マーク、アラン、ルディ、リズ、ユディト全員の大技が直撃、残り少ないH.Pの大部分を消し飛ばす。


 それでもなおごくわずかにH.Pを残した魔導人形に対して、リィンがとどめの大技――『魔創大剣』を叩き込む。


 『反射魔導盾(リフレクト・シールド)』の際と同じくリィンが右手に構える長剣を中核に巨大な蒼く澄んだ魔力でできた巨大な剣身が形成され、巨人が振るう剣の如き斬撃が未だ動けない魔導人形へと直撃する。


 その一撃が僅かに残ったH.Pを完全に削り切り、不可視の障壁による庇護を失った魔導人形の巨躯が轟音と共にその場に崩れ落ちた。


 魔法や魔力系の技で止めを刺した場合、魔物の遺骸をほとんど傷つけることなく仕留めることができることは知られているが、いつ倒しきれるかなどわからない普通の能力者たちにとっては運任せでしかない。


 だからこそ魔導人形ほどの希少魔物素材を、傷1つなく入手できることなど滅多にはない。

 もちろんソルは狙ってそう仕向けはしたのだが、その価値がどれほどのものかはまだわかっていないのだ。


「改めて傍から見ていると、神技だとしか言えないな」


「……ありがとうございます」


 一連の戦闘を1人だけ距離を置いて見ていたラルフが、完全に決着がついたことを確認してソルへと近づき、称賛の声をかけている。


 この生徒会パーティーとロス村パーティーの同盟(アライアンス)におけるラルフの立ち位置は「緊急安全装置」である。

 基本的には戦闘に参加せず、実戦経験を積んでいる中でソルが危険だと判断すれれば、即座に『無限剣閃』によって戦闘を終了させるのが役目というわけだ。


 声をかけられたソルは複数の表示枠を確認することに夢中で、勝利の喜びを表現することもなく、ラルフの賞賛に対しても気も(そぞ)ろの返事である。


 その結果次第で、ラルフにもう1つ期待している役割が成立するかどうかが確定するので、ソルにしてみれば魔導人形の撃破程度で喜んでいる場合ではないのだろう。


 そのことを事前に聞かされていたラルフは苦笑いと共に溜息を1つつき、こちらはこちらで歓声を上げることも忘れて、半ば茫然としている生徒会メンバーの方へと歩いてゆく。


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