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【書籍版6巻発売中!】怪物たちを統べるモノ ~能力『プレイヤー』使いは最強パーティーで無双する!~【コミカライズ2巻発売中!】  作者: Sin Guilty
前日譚 『無限剣閃 序 出逢い』編

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第165話 『駆け引き』③

 なにが(たち)が悪いと言って、それらから身を守る手段をソル自身が持ち合わせていないらしいことだろう。

 

 ラルフは自分がソルの能力の恩恵にあずかりたいと思っていることを充分に理解した上で、それでもソルの幼馴染たちがソルを守るに足る強さを手に入れるまで、自分が守ろうと素直に思えたことに戸惑いを覚えている。

 

 ラルフが『無限剣閃』と呼ばれるようになってから、近づいてきた者など数えきれない。

 善意や悪意、尊敬や妬み、あらゆる感情が綯交ぜになっているとはいえ、それはすべてラルフが「強者」だとみなされたからこそ寄ってきた者たちだ。


 悪意がないことは充分に理解しつつも、生徒会の仲間たちであってもやはりその本質は変わらない。


 それは「強者」が決して逃れられない孤独だろう。

 贅沢な悩みであることも確かだ。

 こんな世界で自分と力を切り離して、素の自分自身だけを見て欲しいなどというのは感傷的(センチメンタル)を通り越して、惰弱と切り捨てられても仕方がない。


 だからこそラルフは自分以上の強者であるソルに対して、今度は自分こそが今まで『無限剣閃(自分)』に集まってきた者たちと同じ立場で行動できることが嬉しいのかもしれない。

 自分が莫大な利益を受けつつもソルに対して善意で接することを貫くことができれば、自分に集まってくる者たちの善意も信じることができるような気がするからこそ。


「いました。会長、一定間隔をあけて『零式』を発動させることは出来ますよね?」


 しばらく歩いた結果、やはりソルの方がラルフよりも先に単体でいる魔物――『牙鼠』を発見した。


「どれくらいの間隔がお望みかな?」


 そのことに驚きとともに納得を感じながら、ソルのリクエストに対してより詳しい条件を尋ねるラルフである。


「長ければ長いほどありがたいですけど、あれの攻撃がこちらに届くまでに倒しきれる感じでお願いします」


「了解」


 ソルがなにを確認しようとしているのかまではわからないが、そこまでゆっくりする必要もないらしい。

 であれば5秒間隔程度で使用して、想定以上に間合いを詰められた場合は瞬殺すればいいとラルフは判断した。


 そういうことを自在にできることが『無限剣閃』が無敵と見做される一因である。

 実際、本当に無限に放てるのであれば、無敵の看板も大げさではなくなるほどに強力な能力なのだ。


 同時にラルフは、ソルが近接戦闘を危険だときちんと認識していることにも感心している。


 H.Pを持ち得ない人類にとって、魔物の攻撃はすべて致命の一撃となる。


 魔物の強靭な体躯を活かした物理攻撃だけでも、まともに喰らえば重装の鎧を身に付けていてもただでは済まず、特殊攻撃に至っては(かわ)すことが出来なければ当たった場所を間違いなく持っていかれる。

 つまり魔物支配領域のような場所で魔物の攻撃をまともに当てられた場合、即死かそうではないかの差でしかないということなのだ。


 単独(ソロ)でさえなければまだ、助かる可能性もあるのだが。


 だからこそ神様から授かる能力において、遠距離系の攻撃能力こそが重宝される傾向が強い。

 魔物に近寄られる前に倒してしまえる能力こそが、脆い人類には必須だからだ。

 『無限剣閃』もまた、圧倒的な遠距離から一方的に飽和攻撃を仕掛けられるがゆえにこそ最強と見なされているというわけだ。


 その特性を十全に活かし、ラルフはまだ50メートル以上も離れている場所から『零式』の初撃を撃ち込んだ。


 ソルから見ればそのラルフの様子は、魔法使いよりもよほど魔法使い然としている。

 視界に捉えるだけで身体的な挙動はなにもないまま、技が発動する。

 そういう『瞳術』なのだと言われたら、だれもが素直に信じてしまうだろう。


 まったく警戒していなかった牙鼠が直撃を喰らってすっ飛ばされ、それでも即座に立ち上がって周囲を警戒している。


 その様子はラルフであってさえ未だ慣れない、魔物の異常なまでの強靭さそのものだ。

 人間が魔物のように生身だった場合一撃必殺の攻撃を喰らってなお、傷1つ負うことなく万全の動きを維持できるというのは正直、魔物の1番恐ろしいところだろう。


 H.Pという概念を正しく理解できていない人類にとって、死ぬ寸前まで魔物の動きが衰えない理由というのは最大の謎の1つなのである。


 それを解明できるようになる1点だけでも、『プレイヤー』という能力はやはり破格なのだ。

 それも解明だけには留まらず、人の身でH.Pを備えられるようになるとあればなおのこと。


 毛を逆立てて戦闘体制に移行している牙鼠だが、自身の索敵能力では50メートルも先で気配を殺しているラルフとソルを捉えることができない。

 それでも警戒してきょろきょろと周囲を見回しているところへ、もう間隔は充分にあけたと判断したラルフが2撃目を撃ち込む。


 再びすっ転がった牙鼠は、今度は起き上がると同時に逃走へと転じた。

 己の知覚外からの攻撃を加えてくる相手に勝てぬことを本能で理解して、やみくもな方向へであれ、とにかく今いる場所から離れることを選択したのだ。


 よってそんなに間隔は開いていないが、逃がすわけにもいかないのでラルフが3撃目を叩き込む。

 その3撃目を以って嘘みたいに牙鼠は断末魔をひしり上げ、傷一つないままにもかかわらずその場で絶命した。


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