タイムリープ
午前1時。残業から戻った俺は疲れ果てていた。家についた途端、玄関に倒れ込み30分程寝てしまう。
帰りに買ったコンビニの牛丼は、すっかり冷めてしまった。レジ袋からビール缶が転がり出ている。
ビールを開けて、牛丼を食べた。ビールが苦い。牛丼は味を感じない。早く寝なければいけない。
※
目が覚めると、俺は小学3年生の夏休みに戻ってた。
「起きたかい?シンちゃん。お寝坊さんだね。友達が来ているよ」
おばあちゃん?おばあちゃんの家?
時計を見ると、早朝6時だ。
「おばあちゃん、まだ6時じゃないか」と、僕が頬を膨らますと、おばあちゃんは「クワガタを捕りにいくから、起こして。と言ったじゃない」と困った顔をした。
そうだった! 昨日、おばあちゃんにお願いしたんだ! ユウくんと、クワガタを捕りに行くって約束したからって、言ったんだった。
「ごめんね。おばあちゃん」
「良いんだよ。はい、おにぎり」
「ありがとう。ユウくん!ごめんごめん!」
「もう! 大きいクワガタはいないかもよ! シンちゃんのおばあちゃん、おにぎりありがとう!」
「晩ごはんはー?」
「コロッケー!」
そう言って僕は、ユウくんと駆け出した。
※
近所の雑木林まで、全力疾走だ。身体が軽い。足を運ぶ度にぐんぐん前に進む。
「わー、あはははは」
意味もなく、叫び笑ってしまう。
「シンちゃん!赤馬だっ!おっきいよ!おっきい!」
「ユウくん!凄いよ!凄い!凄い!カッコいいね、カッコいいね」
小学3年生の僕らは、大きいノコギリクワガタを手に入れ興奮し阿呆のように叫び喜んだ。
体力が無限にあるように思えた。自分が無敵と信じてた。こんな気持ちは忘れていた。
一日中遊んで、おばあちゃんの家に戻った。
夕ごはんのコロッケは、あんまり美味しくなかった。おばあちゃんはコロッケの作り方を知らないんだ。
「おいしい」と、僕は言った。
「優しいね。シンちゃんは。もう、帰らないとね。大人になってもおばあちゃんを忘れないでね」
※
俺が、目を覚ますと母からのLINEの通知があった。俺はその通知の内容を確認したくない。
今の仕事は辞めよう。
田舎に帰ろう。
ユウくんは、まだ俺の友達でいてくれるだろうか。




