第28話 金を稼ぐことだけが人生じゃねぇ
吾郎の発言に驚いた俺は、誤解していたことに気づいた。金を稼ぐためだけの仕事じゃないのか?他のことを求めても良いのか?
少なくとも今まで俺が会ってきた人間たちは、お金の為に仕事をしていた。というよりも、本当の目的はお金以外のかけがえのないものにあって、そのために仕方なく仕事をしていた。
人間になってしまった俺にとって、そのかけがえのないものなんかない。そこがずっと引っ掛かっていた。そこを吾郎に救ってもらったんだ。
「仕事で一番大切なのはなぁ、感謝されることだぁ」
普通に聞いたらお説教くさいようなこの言葉も、吾郎の口から発せられると自然と頭に溶け込んでいった。なるほど、感謝か。言いたいことは分かるが、仕事って以上やっぱりお金や能力の評価が関わってくるんじゃないのか?
戸惑う俺を見透かしたのだろう。吾郎は、これなんかどうだ、と1枚のチラシをカフェのご自由にどうぞスペースから拾ってきた。
【どなたでも大歓迎!】ご老人の見回りボランティアを一緒にしませんか?
ボランティア、初めて聞く言葉だった。この仕事なら俺も、変わることが出来るのだろうか、続けることが出来るのだろうか。
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