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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
二章 星の代理戦争 後編

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九十九話 知覚力の極み

 その頃、光葵は志之崎と一進一退の戦いを続けていた。


「前より、かなり魔法の威力が出てるな……」


 光葵は魔法を放ちつつ言葉に出す。


「お前達に報復するために魔法を奪ってきたからな……」


 志之崎は静かに殺意を滲ませる。


「そうか……。でも俺も負けられない……! 《合成魔法》《火炎魔法×闇魔法×風魔法――灰燼砲かいじんほう》……!」


 光葵は灰燼の浸食を纏う風の大砲を放つ。


「《風魔刀――駆天乱斬くてんらんざん》!」


 志之崎は迎え撃つために、空中で乱反射する暴風の刃の塊を放つ。


 魔法同士が衝突した瞬間、とてつもない風切り音がする。

 そして威力、キレが上だった駆天乱斬が灰燼砲を打ち破る。


 駆天乱斬に追従する形で、志之崎が光葵の目の前まで迫る……。


 猛烈な風切り音、風魔刀の斬撃音が聞こえる。


「《合成魔法》《生成魔法×氷魔法――想像的生成、擬似聖盾ぎじせいたてアイギス》……!」


 左手を前に出し、その一メートル程先に浮遊する形で聖盾が生成される。

 中央にメデゥーサの首が模されている光り輝く盾だ。


 凄まじい音を響かせながらも志之崎の攻撃を防ぐ。


「こんな魔法まで使うのか……。底が知れん男だな。だが、近距離では俺に分がある」


 志之崎は更に突っ込んでくる。


「分かってる。お前と近接戦でまともに戦う気はない……!」


 アイギス越しに志之崎に向かい《合成魔法》《風炎砲》を放つ。


 志之崎はアイギスに押し出される形で二十メートルほど奥にある店に突っ込む。


 そこに間髪入れず、《想像的生成、擬似神槍グングニル》を生成し投擲する。

 神々しく光る槍が神速の勢いで轟音と共に店ごと破壊する――。


 ◇◇◇


 近くでも轟音が何度も響いていた。

 頂川とインビジブゴーレムの戦う音だ……。


「ゼェゼェ……。頑丈な上に速い。しかも修復もされるとなるとキツイな……」


 頂川は息を切らす。

 全身血まみれで額からはドクドクと血液が絶え間なく流れ落ちる……。


「もう、そろそろだね。次は天パのお兄ちゃん、次は赤髪のお姉ちゃん…………」


 美鈴は殺していく人を頭に浮かべ、順番に並べていっているようだ。


「ハハ、俺もなめられたもんだな……。これでも番長張ってたんだぜ……! 仲間守れず、こんなとこで終われるかよ!」


 頂川は叫びと共に《覚醒の霆》を極限まで高める。

 自分の雷で身体が悲鳴を上げているのが分かる――唐突に意識が飛ぶ感覚がある……。


 どういうことだ? 限界超えちまったのか……?

 でも、自分の身体の輪郭がはっきりと分かる。なんだ、コレ。


 自分の身体を廻るマナが把握できる……。損傷している箇所、逆に健康な箇所……。今なら超高精度のマナ操作ができる……。


 瞬間、頂川は意識が覚醒する。


「あぁ……コレが綾島さんと目指してた『極み』か……。知覚力が……感覚が別物だ」


 頂川はよだれを垂らしながら、放心状態で呟く。


「あれ? 金髪のお兄ちゃん壊れちゃった……? まあ、殺すけど」


 美鈴は淡々と話す。


 直後、ゴーレムの六本の腕による連撃が頂川を襲う……。

 しかし、そこに頂川はいなかった。


「全部がスローモーションに見えるぜ……」


 頂川はそう言い、ゴーレムの両足に《雷神鎚》を打ち込む。両足が崩壊し、ゴーレムは地に伏す……。


「ええっ……。何が起こったの?」


 美鈴は素直に驚いた顔をする。


「悪ぃな。多分あんまり『この状態』維持できそうにねぇ。一気に決めるぜ」


 次の瞬間、ゴーレムは身体中が雷神鎚による攻撃で崩壊していく。


「インビジさん!」


 美鈴が叫ぶと同時に、頂川は美鈴の後ろに回り首に手を添えている。


「嬢ちゃん……。終わりだ。降伏しろ」


 静かに、ただ一切の油断なく頂川は告げる。


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