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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
二章 星の代理戦争 後編

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九十二話 獣と狩人の饗宴①

 時は十日後へと移る。


 とある人けがない森の中に、大柄なスキンヘッドの男がいた。


「かなり《毒魔法》《召喚魔法》は使えるようになったな……。だが、何人か参加者と戦ったが、倒しきれてはいない。ムカつく話だぜ」


 貫崎は木に寄りかかる。


 すると、守護センサーが反応する。

 相手は一人で見覚えのある男だ。

 ウエストバッグ、矢筒、弓を背負い武装している。


「よお、貫崎……! お前にリベンジすることが楽しみで鍛え続けてきたぜ……」


「伊欲だったな……。俺にボコられたのに懲りずに来たか……」


 貫崎は少しばかり心が躍っているのを感じる。


「クハハ。いつの話してんだ? 強い奴が勝つ。それだけだろ?」


 伊欲はスリングを持つ。


「フンッ! 来いよ! 白黒はっきりさせようぜ……。《召喚魔法――ケルベロス》……!」


 三首で四メートルはある巨大な漆黒の番犬が魔法陣から出現する。

 口には凶暴な牙が見える。そして三首それぞれ〝属性が違う〟。口から、炎を出している首もあれば、闇を出しているもの、毒を出しているものがいる。


「お前らしい『獣』だな。さながら俺は狩人か……!」


 伊欲の瞳に獲物を狩る鋭い光が奔る。


「ヤルかヤラれるかの殺し合いしようぜ……」


 貫崎がケルベロスと共に突っ込む。


 まず、ケルベロスの三属性のブレスが伊欲を襲う。


「《風魔法――風纏+高速移動》……!」


 伊欲は風魔法の同時使用にて超高速で躱す。


 移動先に、先回りした貫崎が獣の如き低い姿勢からの攻撃を仕掛ける。


「相変わらず、速いな……」


 伊欲はスリングでの高速投擲をする。


「当たるかよ、んなノロい攻撃……!」


 貫崎は反射神経で投擲を躱す。


「今のは布石だぜ」


 そう言い、伊欲はもう片方の手に持っている五つの魔石を振り撒く。

 炸裂した魔石が貫崎を包む……。


 しかし、爆撃が〝紫の掻き痕〟でかき消されていく……。


「《毒魔法――毒爪ヴェノムクロー》……」


 貫崎は静かに呟き、両腕から発生させた獣のような毒の爪で爆撃を溶かしつつそのまま伊欲へ突っ込む。


「クハハ! やっぱお前いいな……! その魔法更に欲しくなったぜ……!」


 伊欲はスリングでの攻撃はやめ、近接戦の態勢に変える。


 貫崎は毒爪、《毒弾ヴェノムバレット》で息つく間もなく攻撃し続ける。


 対して伊欲は《風魔法――風打かざうち》にて、風の塊を棍棒こんぼうのように振り回しぶつけつつ、《魔石放射》を放ち続ける。


 そこにケルベロスが凶悪な爪で伊欲へ鋭利な一撃を入れにくる。


「クハハ、邪魔すんなよ。ワンころ……! 《魔空砲まくうほう――七色ななしき》……!」


 伊欲は、両手を貫崎とケルベロスの両方に向けて砲撃を放つ。風魔法の砲撃に魔石の〝火水雷土光闇〟の六属性が加わっている。


 凄まじい威力の砲撃は貫崎とケルベロスを吹き飛ばす。


「ガハッ……! やるな……」


 貫崎の獣のような瞳に歓喜の色が滲む。


 ケルベロスは十メートル程吹き飛び、大きな咆哮を上げる。


「獣二体相手にするのも愉しいが、勝てなきゃ意味ねぇからよ……」


 伊欲はマナ出力を上げ、高速移動で木が多い方へと身を隠す。


「待ちやがれ! 追え! ケルベロス!」


 貫崎がケルベロスに追うよう命令する。


 追いかける途中のケルベロスの上空から無数の矢が降り注ぐ。


「《魔石弓射――五月雨射さみだれうち》……耐えきれるか?」


 伊欲は静かに呟く。


 ケルベロスは矢数が多くかつ、炸裂する広範囲の魔石爆撃を躱せなかった。

 身体中に矢が突き刺さり、魔石の炸裂で傷だらけになる……。

 だが、その瞳の闘志は消えていなかった……。


「弓の発射位置で、場所が丸分かりなんだよ。俺が殺す……!」


 貫崎は伊欲のもとへ駆ける。


「よう……獣。気を付けろよ。森の中には罠が色々あるぜ……」


 木の上から伊欲は声を出す。


「フンッ! 狩人気取りが……。罠なんざ俺には関係ねぇ。全部溶かしてお前を殺すだけだ……!」


 ――貫崎にはプロとしてテニスを続けたことで獲得した〝圧倒的な野性の勘〟がある。その勘をフルに使い〝魔石の罠〟を避けながら伊欲へ狩猟豹チーターの如き速さで迫っていく――。


「おいおい……折角用意した罠躱しながら来るかよ。まあ、その分狙いやすいがな……」


 伊欲は弓を引き絞る。《魔石弓射》で幾度となく貫崎の急所へ弓を射る。


 貫崎は射られる矢、罠を躱し、適時毒で跡形もなく溶かしきり突き進む。


「クハハ。いいねぇ……」


 伊欲が気づいているかは不明だが、伊欲の後方からケルベロスが来ている。


「狩人気取り、もう少しだ……。ぶち殺してやるよ……!」


 貫崎の飢えた獣の瞳は凶暴な光を宿す。


「……決めたぜ。『こいつ』はお前に使う……。《魔石魔法――特大魔石ボム》……」


 伊欲はウエストバッグから、直径十五センチメートル程の巨大な魔石を取り出し、風魔法も使い両手で貫崎目掛けて投擲する。


 既に形が崩れ始めている巨大魔石は貫崎の手前で大炸裂する――。


 直後、伊欲は特大魔石ボムの爆風を受けながら、俊敏にケルベロスの足元へ滑り込む。

 そして腹に向けて《魔石放射――七色》を放つ。


 ケルベロスは反応する間もなく、腹部に猛烈な一撃を受ける。


「グオオォォオ……!」


 ケルベロスは唸り、そのまま倒れ込む。


「獣狩り完了だ。相当な時間使って準備した甲斐があったぜ。あとは止め刺すだけか……」


 伊欲は満足げに呟く。


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