九十一話 二組の修行計画
アジトに辿り着く。
頂川と綾島が出迎えてくれる。
二人に今日の出来事を共有する。
「そんなに危険な戦いだったんだね……。ごめんね……私……」
綾島が謝り始める。
「いや、謝るところじゃないよ。戦いは無理強いしてするものでもないし、みんな無事帰れたんだ。それで十分だ……」
光葵は心の底からそう思う。あの豹変した少女と戦っていたら、全員で帰ってこられたとは限らない……。
「そうだよね。ごめんね。すぐ湿っぽい話にしちゃって。回復魔法で治療するよ」
綾島が顔を上げて、回復魔法の準備をし始める。
◇◇◇
――その時、頂川は他の仲間とは異なる想いを心に浮かべていた。
幸一郎の死……頂川が監禁されていた時とはいえ、あの三人の〝微笑ましいやり取り〟は本物だった。
コレは戦争だ。分かってる……。分かっているが……。それでもあの〝優しい時間〟を奪うことは正しいのか…………? ……答えは出なかった――。
◇◇◇
志之崎達との戦闘後、十日間は回復と修行の時間にあてることになった。
(みっちゃん、相談があって。生成魔法で強力な武器を生成できないかな?)
影慈が光葵に尋ねる。
「強力な武器か……。漆原が使ってた武器以外でってことか?」
光葵は一人でいるため、声に出して質問を返す。
声に出せる時は、声に出した方が会話しているような感じがするのだ。
(そう。漆原が使ってた〝近代武器〟も強力で戦闘時に役立ってることは多い。ただ、どんどん強くなっていく敵に対応するには更に強力な武器が必要だと思う)
影慈は真面目な声だ。
「それはそうだな……。でも、武器の仕組みを理解したりできるかな……」
光葵はつい不安な声になる。
(そこで思ったんだけど、魔法って結構〝解釈の余地とか幅がある〟と思うんだよね。特に合成魔法とか、僕らが〝イメージしたものを形にする〟感じじゃん? 生成魔法でも似たようなことができれば〝神話に出てくる武器〟とかも〝想像的に生成〟できるんじゃないかな?)
影慈が少し高音の声を出す。
新しいアイデアを出せてテンションが上がっているのだろう。
「たしかに……! その発想はなかったわ。影慈お前……すごいな……」
光葵は単純に感心する。
(あはは、ありがと。僕神話とか好きだからイメージはしやすいと思う。しばらく、主人格交代してもらって、生成魔法を極めるのに時間使ってみない?)
影慈が優しい口調で提案する。
「オーケー! 昨日の三人との戦闘でも強くなる必要性は感じたし。やろう!」
光葵は思う。もっと強くなりたい! みんなを守るために……。敵が襲ってくるなら、返り討ちにしてやる……!
◇◇◇
一方、頂川と綾島も修行の相談をしていた。
「頂川君、私もっと強くなりたい。でも、マナ出力を高めるだけじゃ足りない気がするんだ」
綾島は真剣な表情だ。
「そうだな。出力勝負だけが戦いじゃないのは俺も痛感してる。何が効果的なんだ……?」
頂川は頭を捻る。
「前にルナ姉と一緒に清宮と至王って人と戦った時に、いくら強力な攻撃をしても『当たらなかったら意味ない』って感じたんだ。あの二人は感覚が鋭かった。私達の攻撃を躱すのも上手いしカウンターも的確だった……。極めるべきは『知覚力、感覚』なのかも……」
「綾島さん……! それだ! 俺も言葉にできてなかったけど、今のを聞いてビビッときたぜ! 『知覚力、感覚』を磨く修行をしようぜ!」
頂川は力強く答える。
「うん……! 一緒に修行しよう!」
綾島は思う。ルナ姉の仇を討つ……! もう守られてばかりの存在なんて嫌だ! 戦える強い自分に変わるんだ……!




