八十三話 綾島の想い
それから、三日間は頂川、朱音の治療を続けた。
頂川の傷は非常に深かったが、交代で回復魔法の治療を続けた甲斐もあり、ある程度手と足が自由に動くようになっていた。
朱音は傷は治ったが、魔法を多く使用した影響でマナが回復しきっていない状態だ。
「頂川の骨折と足の怪我が治りそうでよかったよ。回復魔法じゃ治しきれないかと心配してたからさ。朱音も改めてありがとな」
光葵は二人が回復傾向にあり、安心した声色で話しかける。
「みんなには迷惑かけちまった。早く治して借りを返すぜ!」
頂川は快活な声を出す。
「役に立ててよかったよ。マナが回復したら私も戦うね」
朱音が両腕を曲げてみせる。
「おう、よろしく頼む。あと、みんなに提案があるんだけどいいか?」
光葵が全員に問いかける。
全員が頷く。
「本当は頂川と朱音の傷が完全に治るまでアジトで待機したいと思ってたんだけど、敵も待ってくれる訳じゃない。仲間探しと索敵をしていきたいと思ってる。どうだろう?」
特に仲間を集めることは代理戦争を有利に戦うためには必要だろう。また、敵の数も把握しておく方がよい。
「俺は今全く戦えない訳じゃない。待機してもらわないで大丈夫だぜ」
頂川が答える。
「私もマナが完全に回復してないだけだから、大丈夫だよ」
朱音も同様の答えだ。
「ごめんな、二人とも。綾島さんにお願いがあるんだけどいい?」
光葵は綾島の方を見る。
「……どんなお願い?」
綾島がゆっくり目を合わせる。
「二人と一緒に綾島さんには待機しててほしいんだ。回復魔法での治療も継続してほしい」
「待機組と外出組を分けるんだね。いいよ。私も二人のこと心配だし」
綾島は優しく微笑む。
ルナ姉とカイザーもその案で構わないとのことで、今から光葵達は外出することになる。
「じゃあ、三人とも行ってきます! また戻ってくるな」
光葵は三人の目を見る。
「ゆっくり休んでてね。綾島ちゃん、二人をお願いね」
ルナ姉が笑顔で手を振る。
◇◇◇
「お留守番してる間に回復魔法で頂川君の傷を治すね」
綾島は回復魔法を発動する。
「ありがとな、綾島さん! しかし、日下部は頼りになるな。前に一週間くらいアジトに戻ってこない時期があったけど、それ以降の日下部はどことなく人が変わったみてぇだ……」
頂川は不思議そうに呟く。
「そうだよね。日下部君何か雰囲気変わった。強くなったというか……覚悟が前に会った時とは違うような感じがする……」
綾島も不思議そうに声を出す。
「たしか、朱音ちゃんが日下部と来た時からだよな。何かあったのか?」
頂川が朱音に尋ねる。
「かなり色々とあったんだよね……。光葵が細かい内容までみんなに言ってないなら、私の口からは言えないけど……。ただ、光葵にとって『人を守る』ことの意味が変わるほどの出来事だったんだと思う……」
朱音は儚げに呟く。
「そうだったのか……。悪ぃ、無神経に聞いちまって……」
頂川がばつが悪そうに答える。
「いいよ! 光葵の変わりぶりはみんな驚くよね」
朱音は少し笑いつつ返答する。
「……本当に驚いた。この前アジトが襲われた時も日下部君が指示を出して、結果的にみんな助かった。正直……かっこよかった……」
綾島は顔が赤くなっているのを自覚する。
「みんな言ってたね! あの時の光葵は本当に頼りになったって」
朱音が嬉しげに答える。
「こんなこと朱音ちゃんに聞くのよくないかもだけど。日下部君とはお付き合いしてるの?」
綾島は意を決して聞いてみる。
「ええっ! いや、付き合ってないよ? ただの幼馴染!」
朱音が顔を赤くし、焦りながら声を上げる。
「そっか……。あ、ごめんね。変なこと聞いて。頂川君の回復に集中するよ……」
綾島はそう言いながらも、顔に残る熱はしばらく戻らなかった――。
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