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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
二章 星の代理戦争 後編

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七十九話 頂川救出作戦①

 ――指定された廃工場に着く。


 そこには三人の敵、傷だらけの頂川が椅子に縛られていた。


「お前が日下部か?」


 志之崎が淡々と問いかける。


「そうだ。言われた通りに来たんだ。金髪の彼を解放して!」


 影慈は睨みながら声を出す。


「勘違いするな。お前が来たら解放するなどの約束はしてないだろう? 幸一郎、周りを確認してきてくれ」


 幸一郎はその言葉を聞き、外に出て周囲を確認しに行く。


「さて本題だ。この金髪を傷つけられたくなかったら、抵抗はするな。『ルール上戦わずに降伏』が許されていないからな。ある程度攻撃は受けてもらう。その後、降伏しろ」


 志之崎の目と声には何の慈悲も感じさせない。言われた通りにしなければ、頂川を殺し、お前も殺すというのがひしひしと伝わってくる。


「……そんな話、素直に受けると思うか?」


 影慈はやや低い声で返答する。


「金髪の左足も使い物にならなくして欲しいならその調子で話せ。嫌なら言う通りにしろ」


 その時、幸一郎が戻ってくる。


「シノさん、周辺には人が三人いた。念のためセンサーに反応するか五十メートル圏内に入ってみたけど反応はなかった。本当に一人で来てるみたいだよ」


「そうか。お前の覚悟、称賛に値する。悪いな、避けるなよ。最低限の痛みにしてやる」


 志之崎はせめてもの慈悲といった口調だ。


 次の瞬間、影慈のスマホのバイブが鳴る。


 ……今からが伸るか反るかの戦いだ。




 廃工場の窓際から密集する敵に向けて《炎帝魔法――焔の矢》が窓と壁を貫き放たれる。


「危ない、みんな!」


 美鈴が叫び《使役魔法――インビジブルゴーレム》で焔の矢を防ぐ。


 防ぎきれなかった焔が周りに爆散し、工場内の温度が一気に上がる。


 影慈は〝バイブによる知らせ〟と同時に頂川の周りに《合成魔法》《氷黒壁》を創出させた。


「お前、最初からこのつもりで……!」


 志之崎が怒りと焦りの混じった叫びを発する。


「僕はこれ以上仲間を失いたくない……。《風魔法――高速移動》……!」


 敵三人との距離を一気に詰めて、三人同時に《闇魔法》で廃工場の外まで押し出そうとする。


 しかし、幸一郎には〝ワープ〟で躱される。

 結果的に美鈴と志之崎を、闇魔法の大波で、廃工場の壁をぶち破り外にまで押し出す。


「くっ、一人逃したか……。でも、この二人は僕が相手する……!」――。


 ◇◇◇


「君の相手は私達だよ!」


 朱音がそう言い〝ルナ姉の分身〟と共に幸一郎の前に立ち塞がる。


「君達参加者だよね? なんで守護センサー反応しないの?」


 幸一郎は首をかしげる。


「悪いけど、答える気はないよ。ルナ姉いこう!」


「ええ、この仮面ちゃんを倒して頂ちゃんを助けましょう!」


 ルナ姉も気合を入れる。


「……それじゃ、今から幸一郎のハッピーマジックショー開演といこうか!」


 幸一郎の透き通る声が響く。


「まずは、頂川君から離れてもらう! 《炎帝魔法――焔の魔球》!」


 朱音は燃え盛る魔球を幸一郎へ放つ。


「すごいマナ出力だね《空間転移――転移返し》」


 幸一郎が詠唱を終えると、焔の魔球の前に大きなワープホールができる。

 焔の魔球はワープホールに吸い込まれた後、朱音達の後ろから出現する。


「朱音ちゃん、危ない!」


 ルナ姉が朱音に飛びつき回避する。


「……ありがとう、ルナ姉。仮面の人の固有魔法《空間転移》なんだね」


 朱音が静かに声を出す。


「多分、攻撃を転移させることもできるし、自分も転移できるんじゃないかしら」


 ルナ姉が推測を口にする。


「あら、躱されちゃいましたか……。ショーはまだ始まったばかりです。ぜひお楽しみください」


 軽くお辞儀をしつつ、幸一郎は「《水魔法――水製道具アクアツール、カッティングトランプ》……!」と言い、水のトランプを自分の右下に投げ込む。


 すぐにワープホールが出現し吸い込まれる。

 そして、朱音とルナ姉の周辺にワープホールが複数出現する。


 ワープホール間を何度も高速でカッティングトランプが移動し、朱音とルナ姉に斬撃のダメージを入れる。


「痛ったい……。いい加減止まって!《炎帝魔法――焔の渦》!」


 朱音はカッティングトランプを相殺する。


「マナ出力の高さには目を見張るよ……。でもそんなに連発して大丈夫? 僕の《転移手品(トリッキーワープ)》はまだまだ続くよ」


 幸一郎はハッタリなのか本心なのか読めない口調で話す。


「朱音ちゃん。あまり大技は使わない方がいいかもしれないわ。仮面ちゃんの空間転移の消費マナがどの程度かは分からないけど、一つの技をトリッキーワープで再利用できるとなると、マナの残量負けする可能性がある」


 ルナ姉が冷静な声で分析を伝える。


「そうだよね……。どうしよう。近接戦に持ち込んでもいいけど、ワープされたらすぐに頂川君の所まで戻っちゃうだろうし……」


 朱音は真剣な表情で考える。


「とりあえず、近接戦に持ち込んでみましょうか。どのみち遠中距離で戦っていても、ワープで攻撃を返されたら厄介だわ。二人で一気に距離を詰めてみましょう」


 ルナ姉が素早く判断し、提案する。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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