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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
二章 星の代理戦争 後編

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七十二話 急襲

 突入すると、そこには傷だらけのルナ姉と綾島がいた。

 ルナ姉が前に出てかばっている。


「日下部ちゃん、カイザーちゃん、戻ってくれてありがとう」


 ルナ姉はふらつきながら話す。


 敵は二人だ。清宮、そして見知らぬ男がいた。


 三十代前半、髪は肩まであるホワイトベージュ、目つきは鋭く顔立ちが良い。身長は高くスラっとしていて、品のある高級ブランドの黒いスーツを着用している。また、左手につけている金時計が目立つ。


「ルナ姉、綾島さん大丈夫か? 俺達も戦う。無理はしないでくれ!」


 光葵は大声で叫ぶ。


 ――〝人格共存〟左右の瞳は琥珀色、陰のある黒へと変わる――。


 敵との間に《闇魔法》と《氷魔法》を放つ。

 そして、カイザーを抱えながら《風魔法――高速移動》でルナ姉達のもとへ行く。


「……日下部、気安く我に触れるな」


 カイザーが不機嫌に呟く。


「カイザー、俺はこれ以上大切な人を失いたくない。後で文句は聞く。今は手を貸してくれ」


 光葵はカイザーを鋭く一瞥いちべつする。


「……フッ、よかろう。汝の覚悟気に入った。敵を討ち破るぞ。結界、罠の看破は任せろ」


 カイザーが語気を強める。


「君、闇魔法も使えたのね。一気に決めましょうか……。上道院じょうどういんさん」


 清宮が穏やかな口調で声を出す。


「そうだな……。『温井ぬくい』いや今は『ルナ』と呼ぶべきだったか。降伏すれば命だけは助けてやるぞ」


 スーツの男は慈悲深さというより、傲慢さを感じさせる。


至王しおうちゃん。ご忠告どうも。でも降伏する気はないわ」


 ルナ姉が強い口調で返答する。


「そうか……。では、このまま四人を殺す。いくぞ……!」


 至王の目つきが殺意を帯びる。


 ――今の状況はどちらかというと劣勢だ。ルナ姉、綾島の傷が深い。光葵とカイザーで隙を作る必要がある。どうする……? ふと奥の台所に〝ルナ姉の分身〟が一人いるのが目に入る――。


「時間がない、一方的に言うぞ。カイザー、綾島さんは後方支援。ルナ姉は『最後の一撃』を頼む」


 光葵は全員に指示を出す。


「ウォオオオ!」


 光葵は《高速移動》で至王と清宮に突っ込む。


「無策で突っ込んでくるか……。《合成魔法》《雷魔法×火炎魔法――雷火砲らいかほう》!」


 至王が雷と火炎の合成砲撃を放つ。


「上道院さん。油断なさらず。《水魔法――水の大砲》……」


 清宮も同時に砲撃を放つ。


 対して、光葵は「《合成魔法》《氷魔法×闇魔法――氷黒ひょうこくの盾》」で威力を殺す。

 そして、氷の刃で薙ぎ払う。


「すごい魔法ね」


 清宮は驚いた風な口振りで攻撃を躱す。


 至王も同様に躱している。


「日下部! あと三歩先に『罠』がある! 他は周辺にない」


 カイザーが叫ぶ。


「ありがとう。カイザー!」


 光葵はそれが分かった上で最短距離にて敵に詰め寄る。

 そのために、更に加速して跳び上がる。


 〝罠〟は〝炎のような刻印〟が浮き出たかと思うと爆発した。


 その一瞬前に「《合成魔法》《氷魔法×闇魔法――氷黒壁、仙人掌サボテン》」を発動する。

 氷黒壁は光葵の身体を覆い隠す。そして、氷黒壁の表面にはサボテンのように大きな棘が複数創出される。それらは清宮と至王を貫いた。


「ガハッ……。フハハ、自爆覚悟か貴様……」


 至王が呟き、雷火砲を放とうとしてくる。


「まだ、終わってない……」


 光葵はそのまま《氷黒壁――仙人掌》を周囲に爆散させる。


 至王は雷火砲から瞬時に魔法を切り替え「《刻印こくいん魔法――空盾うつろたて》」と詠唱する。

 空気中に〝刻印〟を打つことで盾を作り出したようだ。


「黒スーツ。このタイミングで防ぐのか……」


 一方、清宮は反射神経である程度躱したようだ。


 光葵は考える。清宮は〝五感が鋭い〟のか? どちらにせよ、このまま攻め切る……!


 その時声が聞こえる。


「日下部、我等も攻撃に加わる! 《魔眼散弾まがんさんだん》……!」


 カイザーの魔眼から発する散弾型のマナが清宮目掛けて放たれる。


「《光魔法――穿ち光線うがちこうせん》……!」


 綾島も同様に清宮目掛けて攻撃をする。


 綾島の指先から放たれる光線と魔眼散弾が、清宮を撃ち抜き、台所まで吹き飛ばす。


「ルナ姉『最後の一撃』をお願い!」


 光葵は叫ぶ。そして至王に霧状の闇魔法を雪崩の如くぶつける。


「ハッ、こんな物量押しで俺を倒す気か?」


 至王は雷火砲を放とうとしている。


 しかし次の瞬間、台所にいた〝ルナ姉の分身〟が雷を纏った拳の一撃を至王のこめかみに打ち込む。

 至王は頭から吹っ飛び椅子にぶつかり、椅子が大破する。


 光葵は瞬時に思考する。敵を倒したいが、ルナ姉と綾島の怪我と体力が限界だ。今しか逃走のタイミングはない……!


「このまま離脱する! カイザー俺の腹にしがみつけ! 《身体強化》《風魔法――高速移動》……!」


 光葵は《身体強化魔法》で脚力、腕力を大幅に引き上げる。そして、《風魔法――高速移動》を使い、一気に仲間三人のもとに向かう。


 カイザーは一瞬「は?」と言うも光葵の鬼気迫る表情を見たからか、言われた通りに動いてくれる。


 光葵は、ルナ姉と綾島を両手で担ぎ、身体にプロテクトを張りつつ一階の窓を突き破り離脱する。


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