六十三話 炎帝
「朱音……お前も……?」
だが守護センサーは反応していない。どういうことだ……?
「私も分からない……。でも、今回も目の前で戦いが起こって、光葵が守ってくれてるのを見てると身体の奥から『朱雀様』の声が聞こえた。力を貸してやろうって」
「朱雀……? 危ない朱音!」
伊欲が突っ込んできている。
「よく分からないが、嬢ちゃんも危険人物みてぇだな。悪いが魔石の残数も気がかりでよ……。手早く済ませるぜ……!」
スリングによる投擲、魔石放射が放たれる。
「何度も言わせないで……」
朱音は右手を横に振る。
「《炎帝魔法――焔の壁》」
伊欲の攻撃諸共に焔が焼き払う。
伊欲は焔に巻き込まれ数十メートル吹っ飛ぶ。
「はぁはぁ……。大丈夫、光葵? 助けに来るの遅くなってごめんね」
朱音は息を切らす。
「……はは、朱音助かった。だが、あいつはまだ生きてる。もっと話したいところだが、もう少し力貸してくれ」
光葵の守護センサーが伊欲の生存を知らせるからだ。
「オーケー!」
朱音が短く返答する。
「おいおい……。守護センサーで知覚できない参加者なんて聞いてねぇぞ。流石にこれ以上はキツイぜ。逃走させてもらう……! 《合成魔法》《圧縮空気砲×魔石魔法――魔空砲》……!」
大きな風切り音と共に魔石が含まれる圧縮された空気の塊が飛んでくる。
「朱音……俺も補助するから一緒に焔で盾作れるか?」
「やったことないけど、イメージは湧いてくる……。多分できるよ!」
朱音は強い瞳を光葵に向ける。
「ぶっつけ本番だがいくぞ!」
「《複合魔法》《火炎魔法×プロテクト×炎帝魔法――業火の盾》……!」
業火の盾が魔空砲を防ぐ。
魔空砲を焼き尽くす轟々とした音だけが響く。
そして、守護センサーが伊欲は逃走したと知らせる。
「ありがとな、朱音。それと…………」
話している途中で光葵は気を失う――。
◇◇◇
光葵は気が付けば、布団で眠っていた。
どこだここ……? そこへ足音が聞こえてくる。
「あっ! 光葵起きた! よかった~! このまま目覚めなかったらと思うと心配だったんだから!」
朱音の明るい声が耳を抜けていく。
「朱音……? あの戦いは夢じゃなかったのか……」
「夢じゃないよ! ほら」と言い頬をつねってくる。
「痛い痛い。こういうのって自分でするんじゃないか?」
光葵は頬をさすりながら言葉を返す。
「まあまあ。いいじゃん! とりあえず、お水飲む? 今は休んでる方がいいと思うけど」
「水もらえると助かる。というか、ここ朱音の家か?」
光葵は周りを見渡す。
「うん、そうだよ。あんまり気にせず寛いでて」と言い、水を取りに行ってくれる。
しばらくは水を飲んで、休んでいた。
再度朱音がやってくる。
「傷の治療もしないといけないと思って勝手に包帯とかは巻いてるよ。調子はどんな感じ?」
「おかげでだいぶ回復した。ありがとう。あと、聞きたいことがあるんだけど」
「それは私も! どっちから話そうか」
朱音は純真な瞳で問いかけてくる。
「じゃあ、とりあえず俺から……」
星の代理戦争に参加していることや、命懸けの戦いをしていることを再度詳しく伝えた。
影慈のことは説明しても理解がすぐには難しいと思い控えた。
「そんなことになってたんだね……」
朱音は思いつめたような顔をする。




