五十二話 加入
翌日になり、頂川からメッセージがある。
「今日はいつもと違う場所で修行しないか? 少しでも気持ち変えたくてな……」という内容だ。
光葵は「俺もそうしたい」と返信する。
予定していた廃工場で落ち合う。
「よう! 頂川」
光葵は軽く手を上げる。
「おう! 強くなるために修行……もだが、これからどうする?」
頂川に真剣な目で尋ねられる。
「修行をひたすらしてればいい訳でもないよな。環さんの死を絶対無駄にできない……」
光葵は拳を握りしめる……。
「だよな。一人一人が戦えるだけじゃダメだ。前も連携ができてなかった訳じゃないが、柔軟な対応ができてなかった……。柔軟な戦いの思考や、仲間との連携をもっと強化する必要があるかもな」
頂川は顎に手を添える。
「そうだな……! 俺も似たようなこと考えてた」
「そうか! これから一緒に頑張っていこうぜ」
頂川はやや明るい声を上げる。
それから一時間程、光葵達は連携を中心に修行した。
その後不意に守護センサーが反応する。
「頂川……こっちに向かって三人来てる」
光葵は思わず声がこわばる。
「そうだな」
頂川も緊張感のある返答をする。
そして三十秒後に参加者と邂逅する。
「よかったわぁ! 悪魔サイドだったらどうしようかって話し合ってたところだったのよ!」
肩まである艶のある黒髪。顔のパーツに合わせたナチュラルメイク。髭は無く眉等も綺麗に整えられている〝男性と思われる人物〟が話し出す。
もう少し補足すると、エラが張っており、目力があり男らしさも共存しているイメージだ。身長は一八〇センチメートル程、細マッチョで美しい体型だ。
「言ったであろうルナ姉。我が魔眼が見紛うなどあり得ぬ」
やや低い声が聞こえる。
特徴的な小柄な少年だ。
ツンツンに尖った銀髪。黒い眼帯を右眼にしており、両腕には包帯を巻いている。着ている漆黒の外套は端々がボロボロだ。見たところ中学二年生程だろう。
「えーと、天使サイドだし仲間にならないか? って話でいいのか……?」
光葵は困惑気味に問う。
「そうよ! 私達も既にチームは三人で組んでるんだけど、多い方がいいかなって思ってね」
ルナ姉と呼ばれる人がフワっと微笑む。
「あ~、ちょっと連れと相談していいか?」
頂川が頭をかきながら問いかける。
数十メートル離れて話し合う。
「日下部……大丈夫と思うか?」
頂川はやや不安げな様子だ。
「頂川……たしかに、組むとなると不安になるような感じはする。特に中二っぽいやつ」
すると銀髪の少年が話し出す。
「組むか迷っているのか? 心のゆらぎが視えているぞ」
「お前、心のゆらぎが視えるのか?」
光葵は驚きつつすぐに質問する。
「ああ、我が魔眼は心のゆらぎや嘘などを見抜くことができる」
銀髪の少年は淡々と答える。
「この子の固有魔法は《魔眼》なのよ。普通の魔法と違い『常時発動』してるから眼帯をして、見え過ぎて疲れないようにしてるのよ」
ルナ姉がすぐさま、補足する。
「なるほど……。もしかして、魔眼の力で俺達を見つけたのか?」
光葵は予測を確認する。
「そうだ。我が魔眼は特別でな……守護センサーが反応する半径五十メートルより遠くても、天使サイドか悪魔サイドか大体の知覚が可能だ」
少しばかり得意げに答えが返ってくる。
「それってよ、かなり有利なんじゃねぇか?」
頂川が純粋に驚いた声を出す。
「仲間集めや索敵なんかは得意と思うわ」
ルナ姉は微笑む。
「俺も守護センサー以上に参加者の位置を把握できるのは有利だと思う」
光葵も同意する。
「だよな、よし。んじゃあ、組もうぜ!」
頂川が明るく回答する。
「決まったみたいね。実は、私達のアジトがあるの。そこで話さない?」
ルナ姉が明るい雰囲気で提案する。
「アジトがあるのか! すげぇな。案内してくれ」
頂川は少しばかり興奮気味に答える。
ルナ姉についていく。
その間も〝もう一人の少女〟は何も話すことはなかった。




