四十八話 敵の作戦……
「もう一度、女に攻撃しよう! 頂川は『新技』を頼む!」
光葵は再度二人に指示を出す。
「おう! 任せろ! 《合成魔法》《雷魔法×貫通魔法――雷貫》!」
頂川は貫通魔法に雷を纏わせた強力な直線攻撃魔法を放つ。
「清宮さんよ! あいつらのプロテクトは半端じゃなく堅い。多少のダメージは覚悟で距離詰めるぞ。近づけばやりようはある!」
伊欲は清宮と距離が離れており、大きめの声で伝えたようだ。
「分かった。あと彼らの異常に堅いプロテクトには『何かタネ』がありそう」
清宮が答える。
次の瞬間、光葵達の攻撃が清宮に襲い掛かる。
清宮は右手に持った〝プロテクト魔石〟と自身のプロテクトを使い防御する。
しかし、頂川の雷貫はプロテクトを貫通し、清宮の右腕を真っ赤に染め上げる。
「くっ……痛いわ……。《回復魔法》……」
清宮は回復魔法で治療しつつも、足を止めず光葵達に詰め寄る。
このタイミングで付与魔法が切れる。
「環さん、もう一度付与魔法お願いできますか?」
「任せて! 《付与魔法――攻撃、防御、敏捷、マナ知覚アップ》……! 今の形ならいけるよ! 私もいつまでも守られてばかりじゃいられないから!」
環が失った自信を取り戻したように声を上げる。
「環さん、助かります。もう一度同じ攻撃を……」
話している途中で、敵二人が予想以上に早く接近していることに気づく。
こちらが三人で固まっていれば容易にプロテクトは破れないだろう。だが、近接だからこそ威力のある攻撃もある……。どうする……?
(みっちゃん。迷う気持ちは分かる。環さんの魔法特性的に、二人以上と行動する方がいいと思う。だから分断されないように動こう!)
影慈が迷う光葵を察して意見をくれる。
「環さんは俺か頂川どっちかと行動して。分断されるとまずい」
影慈の意見を二人に伝える。
その時、伊欲の声が聞こえる。
「清宮さんよ。一旦合流だ! 《風魔法――高速移動》!」
伊欲のスピードが一気に上がり、清宮の隣に移動する。
その場でごく短く打ち合わせをしている。
「くっ、速い! 攻撃が来るか……。二人ともプロテクト!」
光葵は二人に声を掛ける。
頂川と環が「了解」と返答する。
「二人でいくぜ……清宮さんよ」
「《複合魔法》《水魔法×魔石魔法――水龍咬、三属性付加》……!」
清宮の創出した〝水龍の頭〟に魔石が加わり〝雷風闇〟の属性が付加されたようだ。斑模様となった龍が光葵達のプロテクトに凶暴に噛みつく……。
ビキビキッ! プロテクトが悲鳴を上げる。
「ダメ押しだ……! 《魔石放射――七色》」
伊欲の両手には七つの色の魔石が握られており、そのままプロテクトに向かい〝火水雷風土光闇〟の七属性魔法を放射したようだ。
凄まじい爆音とプロテクトの破損する乾いた音が響く――。
まずい……。そう思った時には遅かった……。清宮が完璧なタイミングで環にタックルし、外まで一緒に転がり出て行った。
そして、光葵と頂川には魔石放射が直撃する……。
「清宮さんの予想通りっぽいな。お前らの半端じゃないプロテクトの堅さは『あの女』の魔法だろ? 近づいてやっと分かったが、プロテクトから感じるマナが跳ね上がった瞬間に女が魔法を発動しているのが見えた」
伊欲は魔石放射で傷だらけになっている光葵と頂川を見据える。
「ガハッガハッ……。環さんと確実に分断するために俺達を狙って魔法撃ってきたのか……?」
光葵は伊欲を睨みつつ尋ねる。
「ま、そんなとこだ。三人まとめて当てれる程広範囲の魔法じゃねぇしな。じゃ、悪ぃが死んでくれや」
伊欲は魔石をポケットから複数取り出す。
「諦める訳ねぇだろ……! 日下部、一気に片づけるぞ……!」
頂川の目が鋭く光る。




