三十九話 野性の勘
その頃、日下部達は美鈴と志之崎の連携に苦しめられていた。
正直、魔法の相性が悪い。氷魔法もある程度は通じるが〝見えない何か〟にすぐに破壊される。毒魔法は風魔法で防がれてしまう。付与魔法で能力も上げているが決定打に欠ける……。
そして、貫崎の《召喚魔法――悪鬼》はまだ、発展途上のようだ。うまく連携についてこれず、傷ばかりが増えている。
「来い、悪鬼! ウォオオオ!」
貫崎が悪鬼と共に突っ込んでいく。
「ちょ、貫崎さん、声掛けてから動いて!」
光葵は急いで氷の矢や槍を放ち援護する。
しかし、志之崎の風の斬撃で方向がずらされる。
「貫崎さん! 前に出過ぎると、『見えない攻撃』が……」
「日下部、お前は『見えない攻撃』とやらにビビり過ぎなんだよ……!」
――貫崎は元日本代表のテニスプレイヤーだ。幾度となく、危機的な状況には陥ってきている。しかし、それでも常に勝利を手繰り寄せてきた強みがあった。それは〝野性の勘〟だ。ボールを打ち返すと危険な場所、逆に打ち込まれると危険な場所。そのような〝デンジャーポイントの見極め〟が圧倒的に優れていた――。
攻撃が来る……! 直感的に貫崎はそれを感じ取り、〝見えない攻撃〟を躱した。
悪鬼はその動きについてこれず、モロに攻撃を受ける。
「えっ! あの坊主の人、美鈴の攻撃避けたんだけど!」
美鈴は驚きの声を上げる。
「美鈴、少し離れていろ。俺の斬撃で奴を止める。そこに叩き込め」
志之崎が指示を出す。
「了解、シノさん!」
美鈴は敬礼のポーズを取る。
「ちっ。悪鬼じゃ力不足だ……。戻ってろ! 日下部! 援護しろ! 俺が止め刺してやる!」
貫崎が鋭い語気で命令する。
悪鬼は、ゆらゆらと揺らめき、存在が消えていく……。
「分かった!」
光葵は氷の槍、円盤型のカッターを放ち、風の斬撃を相殺する。
貫崎は風の斬撃をも毒で溶かして突き進む。〝見えない攻撃〟が数度貫崎を襲うもギリギリで躱していく。
敵まであと三歩といったところだ……。
「まだ使うつもりはなかったのだがな……やむを得ん。《風魔刀――乱射斬》……」
志之崎は風の斬撃を〝天井や柱〟に無数に放つ。
「どこを狙ってやがる。コレで終わりだ!」
貫崎が毒の一撃を入れる――そう思った瞬間目の前に〝乱反射しながら襲い掛かる斬撃〟が見える。
「斬撃を『反射』させたのか……!」
貫崎は無数の斬撃に切り刻まれ吹き飛ばされる。
「ガハッ! あんな技もあんのか。ったくヤリづれぇな……」
貫崎はプロテクトを咄嗟に張り、致命傷を避けられたようだ。
「貫崎さん! とりあえず回復を……」
光葵は貫崎に声を掛ける。
「アホか、日下部。敵目の前にして、んなことできるかよ。それより、お前には『あれ』が知覚できてねぇのか?」
貫崎は獣のような瞳で一瞬、光葵の方を見る。
「貫崎さん、あれっていうと、『見えない攻撃』のこと?」
「そうだ。俺には何となくだが『知覚できている』。相当近くにないと気配すら掴めんがな」
「いやそれでも、すごいよ! やっぱり何か〝物体〟がある感じ?」
光葵は純粋に疑問を尋ねる。
「そうだな。そんな印象だ。おい環!」
貫崎が声量を上げる。
急に名前を呼ばれた環がビクッとする。
「どう致しましょう?」
言葉遣いも変だ。
「日下部と俺の『マナの知覚度』を上げる付与魔法は使えるか?」
「マナの知覚度を上げる……やったことはないですけど、やってみます……。魔法はイメージが重要だ。マナの存在を意識し、その知覚度を上げる……!」
環は小さく呟きながら、魔法を発動する。
白い光が光葵と貫崎を包む。そして〝マナの知覚度〟が上がったことを感覚で理解する。
今ならうっすらとだが、今まで見えてなかった、〝知覚できなかった〟少女の魔法が認識できる。
「ありがとう、環さん、貫崎さん。俺にもうっすらと知覚できるようになったよ!」
「それはよかったです!」
環が嬉しそうに明るい声を出す。
「フンッ! こっからが勝負所だ! 行くぞ!」
貫崎が気合を入れる。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
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