三十八話 リベンジマッチ
頂川は一気に三階まで駆け上がる。そこには因縁の相手がいた。
「よう! 会いたかったぜ……!」
頂川はギラついた目をしながら口角を上げる。
「誰が来るのかと思ってたら、あんたか」
香阪は拍子抜けといった顔だ。
「あんま、なめんなよ!」
頂川は雷を迸らせながらジグザグに迫る。
「キャハハ! スピードは上がってるみたいね」
貫通魔法で直接頂川を狙いつつ、適宜地面にも撃ちこみ爆風で吹き飛ばしてくる。
「チッ! 相変わらずうぜぇ攻撃だな」
雷槍をぶん投げてやりたいところだが、多分貫通魔法の方が出力は上だろうな……。貫通魔法……攻撃力に全振りしたような魔法だぜ……。
「こっちまで辿り着けるかしら?」
香阪は挑発的な笑みを浮かべる。
「じゃあ、こんなのはどうだ? 《雷牙》!」〝対の牙状〟の雷を放つ。
「二方向からの攻撃ね」
香阪は両手で同時に貫通魔法を撃ち込む。雷牙は形を崩し霧散する。
「おら! 拳が届くとこまで来たぜ!」
頂川が一気に詰め寄る。
「へ~迅いね! でもあんたが届くってことはあたしも届くってことだから」
プロテクトが一枚香阪との間に張られる。頂川の攻撃はプロテクトに阻まれ一瞬遅れる。
その一瞬の隙に、頂川の顔目掛けて貫通魔法が放たれる。
「あっぶねえな」
顔に当たる寸前で雷を纏った拳で方向をずらす。
直撃こそしなかったが、勢いで二メートル程後ろに下がる。
後ろに置いてあったロッカーが弾けるように消し飛ぶ。
「キャハハハ! やっぱり『壊す』のは楽しいわ! この破壊衝動、相手の命を握る実感はクラブでアガってる時とか、薬物性行してる時では味わえない……!」
「品のねぇ女だな……。人の趣味に口出す気はねぇけど、法律は守れよ」
「でも、喧嘩好きそうなあんたにも分かるんじゃない? 破壊衝動だとか相手の命を握ることの快感、愉悦が……!」
香阪は恍惚とした表情で頂川に問いかける。
「たしかに喧嘩は好きだぜ。でも破壊だとか相手の命を握ることを快感とは思わねぇな。喧嘩はお互いフェアな条件でヤリ合って、どっちが強いか決めるもんだ。一方的な暴力は好かん」
頂川は馬が合わないことを表情で伝える。
「あら、そうなのね。少しは分かってもらえるかと思ったけど。あんたとは合わなそうね」
そう言い、溜めていたマナで貫通魔法を連続で撃ち込んでくる。
頂川は雷を迸らせジグザグに躱していく。
しかし、貫通魔法の〝物量〟で少しずつ躱しきれなくなってくる。そして正面から貫通魔法がぶつかる。
轟音が響き渡る――。
「キャハハハ! 直撃ね。もう終わりかしら」
香阪は余裕の笑みを浮かべる。
バチバチッという音と共に頂川の前には大きな盾が構えられていた。
「《雷盾》……」
「あんたをぶっ倒すために修行してきたからな……貫通魔法は強力だ。近づくには、対抗できるくらいの防御力が必要だしな」
頂川はニヤリと白い歯を見せる。
「やるわねぇ! 盾ごとぶち抜いてあげる……」
香阪は新たな〝破壊対象〟に心躍らせているような表情だ。
「やってみろよ! さっさとぶっ倒して日下部達の所に戻らせてもらうぜ」




