三十七話 乱戦
「《付与魔法――防御アップ》これで全員の防御力が強化できました!」
環が手短に伝える。
「ありがとう環さん。じゃあもう時間もないと思うから、みんな行くぞ!」
光葵が号令を掛ける。
四人全員でプロテクト魔法を前方に重ねるように張る。そのまま廃墟に向かって突撃する。
すると間もなく、貫通魔法がこちらに向かって連続で飛んでくる。
幾度となく、轟音を響かせながら貫通魔法を防御し続ける。
――もうすぐで廃墟の入口だ。
そこで気づく。守護センサーの反応によると、悪魔サイドは合計〝三人〟いるということに……。
「入口に敵がいる可能性がある。プロテクトを展開したまま突っ込むけど、油断しないで!」
光葵は叫ぶ。
「日下部、お前に言われなくても分かってる」
貫崎が少しイラッとした様子で答える。
廃墟の入口をぶち抜く。そこには、少女と侍のような男がいた。
「ここまで突破してきたか……。美鈴、距離を取りながら戦うぞ」
静かな声で志之崎が指示を出す。
「分かった! シノさん!」
対照的に美鈴は元気な声で答える。
「みんな! あの女の子は前に戦ったことがある。『見えない何かで攻撃』をしてくる固有魔法だと思う。俺もよく分かってないんだけど……」
光葵は仲間に注意を促す。
その直後、頂川が叫ぶ。
「みんなごめん。俺の我儘でしかないんだけど、三階にいる女は俺にヤラせて欲しい。前にボコボコに負けちまって、リベンジがしたいんだ!」
「……チッ。これ以上しゃべってる暇はねぇ。お前が思うようにしろ」
貫崎は短く伝える。
「恩に着る!」
頂川は《雷魔法――雷纏》を発動する。稲光が迸り、一気に身体能力が引き上げられる。
「頂川の進む道をこじ開ける! 環さん能力強化を。貫崎さん一緒に戦ってください!」
すぐに、環による《付与魔法――攻撃、防御、敏捷アップ》が他の三人に行われる。
「《召喚魔法――悪鬼》……。殺れ」
貫崎の詠唱と共に、地面に魔法陣が現れ、そこから悪鬼が召喚される。二本角の赤鬼で凶悪に光るつり目をしている。右手には金棒を持っている。
そして、四人は同時に攻撃を仕掛ける。
光葵は氷魔法による矢を複数放つ。
頂川は《雷槍》を投げつける。
貫崎は泥状の毒を掌底打ちのように放つ。
悪鬼は金棒で周辺にあった柱を叩きつけ、瓦礫を敵に飛ばす。
対して、志之崎が《風魔刀》による複数の風の斬撃で氷の矢、毒の進行方向をずらす。
頂川の雷槍、悪鬼の瓦礫は〝見えない何か〟に弾かれた。
――だが、この乱戦状態があればちょうどいい……。
光葵は、志之崎と美鈴から階段への動線上に、分厚い氷壁を創出する。
「今だ! 頂川!」
光葵は叫ぶ。
「ありがとよ! 日下部!」
そのまま頂川は階段を駆け上がる。
「あっ、待って!」
美鈴が叫びながら止めようとするが、〝見えない何か〟が氷壁を破壊している間に頂川は既に上の階に行っていた。
「もう……!」
美鈴は腕を振り怒っている。
「ここからは、俺達が相手だ……!」
光葵が叫ぶように声にする。




