三十六話 団体戦争
「日曜だし、朝から昼にかけて修行してたけど、いや~もう既に一日分疲れたぜ……。あと、貫崎さんの魔法強力過ぎて近くで戦いづらいっすね」
頂川が率直な物言いをする。
「それは、お前らが合わせろ。俺の戦い方は《毒魔法》《身体強化》がメインだ」
貫崎は言い切る。
「貫崎さんできれば、俺らは巻き込まないで欲しい」
光葵は少し強めの語気で伝える。
「そうですよ。私は基本支援に徹しますけど、二人を巻き込んだりはしないで欲しいです」
環は真面目な口調だ。
「……だからチーム組むのは嫌だったんだ。善処はする……ただし、俺の邪魔はするなよ」
貫崎はイライラしながら乱暴に答える。
「分かりましたって。でも、貫崎さんもう少し協調性持たないと連携取れないですよ。マジで」
光葵は釘を刺すように伝える。
「日下部、何度も言わすなよ……。俺は別に組みたくて組んでる訳じゃない。場合によっちゃすぐに抜けるからな」
貫崎から取り付く島もない返答がある。
「……そんなこと言って、後で困っても知らないですよ」
光葵は半ば説得は諦めた。
そんな時だ、守護センサーが反応する。
近くに参加者がいる。四人全員の顔色が変わる。
五十メートル圏内。〝林〟の方から反応があるようだ。
どっちサイドの参加者かは不明だ。
「見に行く……ってことでいいか?」
光葵が声を掛ける。
全員が頷き、相手を確認しに行く。
近づいていく途中で気づく……相手は悪魔サイド一人であるということに……。
気づいた相手が素早く逆方向に駆け出していくのが守護センサーで分かる。
「追うぞ!」
貫崎の掛け声で全員一斉に走り出す。
追っていくと林を抜け、三階建ての廃墟が見えてきた。
「とりあえず、近づくぞ」
貫崎が声を出す。
次の瞬間、直線的に魔法が飛んでくる……! 轟音と共に林にある木が複数吹き飛ぶ。
「日下部この魔法……」
頂川が緊張と怒りの混じった声を出す。
「ああ……おそらくあの派手女の《貫通魔法》だろうな。でも、妙だな『廃墟の三階』から魔法が飛んできたように見えた。まだ五十メートル圏内にも入ってないはずだけど……」
「ん? ということは……なんでだ?」
頂川が首をかしげる。
「可能性の話だが、俺らは『おびき出された』のかもな……」
貫崎が静かに呟く。
「と言いますと?」
環が素直に尋ねる。
「悪魔サイドがチームを組んでいて、あの廃墟を拠点にしていた。そして、悪魔サイドの一人が林を移動していたところに、偶然俺ら四人が通りかかり、拠点までおびき出した……。まあ、推測の域を出ない話だがな」
貫崎は淡々と分析結果を伝えている印象だ。
「なるほど。逃走している途中にスマホなんかで『天使サイドを見つけたことと、大体の方角』を伝えておけば、林にいる俺らに攻撃が可能ということか……」
光葵は情報を整理する。
「フンッ! まあ、そんなところだな」
貫崎は廃墟の方を見据えながら答える。
「多分だけど、マナを溜めて貫通魔法を撃ち込み、一網打尽にしようとしてる気がする」
光葵は危惧している事態を伝える。
「じゃあ、もう突っ込んでいくしかねぇな!」
頂川が今にも飛び出しそうになる。
「待て! 頂川! 今突っ込んでも的になるだけだ。俺に作戦があるんだけど――」
全員に作戦の内容を伝え、同意をもらう。




