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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
一章 星の代理戦争 前編

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二十八話 予想外の出来事

「ありゃ~直撃だね。どうなったかな?」


 漆原の軽い声が聞こえる。


「悪ぃ、日下部……」


 頂川がやや小さな声を出す。


「大丈夫だ。あいつらの戦い方はなんとなく分かってきたな……」


 広範囲にプロテクトを張ったため無傷とはいかないが、大きなダメージにはならなかった。


「お! 防いだか」


 漆原はどことなく楽しげな声だ。


「お前の声は耳障りなんだ。それも含めてお前の戦闘スキルって奴なのかもしれないけどな」


 光葵は怒りをそのまま吐き出す。


「日下部……俺すげぇ戦いにくいんだけどさ……なんとかできねぇか?」


「そうだよな頂川、ちょっと相談してみるわ」――。


(影慈、主人格交代して頂川のサポートできるか? 俺と頂川は近接戦が得意で相性が悪い)


 光葵は心の中で影慈に呼びかける。


(オーケー、みっちゃん。僕も修行したことで攻撃魔法が増えている。それに、あいつらの戦い方も何となく分かったし。やってみるよ……!)


 ――〝主人格交代〟瞳が琥珀色から陰のある黒へと変わる。


「金髪君、僕が君のサポートをするよ。だから、思い切って戦って! その代わり、トリッキーな攻撃が多いと思うから十分気を付けて」


 一瞬、頂川がぽかんとする。


「おう! キャラチェンか! いいと思うぜ!」


 頂川は親指を立てる。


「じゃあ、改めて行くぜ日下部! 《雷魔法――雷槍らいそう》……!」


 頂川は雷で作った槍を投げつけながら、突っ込む。


 平田が分厚い氷壁で防ぐ。接触時に轟音が響く。


「ひっ……」


 平田が怯えた声を上げる。


「隙あり」


 漆原が拳銃で頂川を撃とうとする。


 その前に影慈が《炎の弾丸(ファイアバレット)》を放つ。


「危なっ!」


 漆原が躱す。


「君の攻撃は僕が全てとす」


 影慈の瞳は漆原を捉えている。


 平田の前には目をギラつかせた頂川がいる。


「さあ、ヤリ合おうぜ!」


 ガタガタと震えながらも、平田は魔法を出す構えを取る。


「遅ぇよ!」


 氷魔法が発動する前に平田の顔に頂川の雷を纏った拳がめり込む。


 平田はそのまま少し奥の壁にぶつかり、壁にヒビを入れている。


「平田さん……!」


 漆原が焦った声を出す。


「君の相手は僕だよ。新技……《合成魔法》《火炎魔法×風魔法――炎刃えんじん》!」


 炎に風の速力を乗せた影慈の一撃が漆原を襲う。


「ハァァアアア!」


 漆原は全力と思われるプロテクト魔法で防ごうとする。


 しかし、影慈が集中して練り上げた炎刃はプロテクト魔法を打ち破り、漆原の両腕から身体にかけて炎の刃を刻み込む。


 呻き声とも何とも聞き取れない声が大通りに響き渡る。


 十秒ほど経ち「ハァハァ……」と漆原の荒い息遣いが聞こえる。


 その後、思わぬ大声が聞こえる。


「平田ァァアアア! まだくたばってねェだろ! もうすぐだ……もうすぐで『溜め』が終わる。なんとか食い止めろォォオオ!」


 大声に気を取られていた影慈と頂川だったが、すぐに平田の方へ目を移す。


 平田は頭から血を流しながらも〝その目は死んでいなかった〟――。


「ついにですか……。最後の力で食い止めます。あなたの最強の魔法を見せてください……」


 〝何かまだある〟そう判断した影慈達は漆原へ攻撃を仕掛ける。しかし、氷壁で阻まれる。


「邪魔だおっさん!」


 頂川の雷撃が平田に直撃する。しかし、動きを止めず影慈の方へ氷弾を放つ。


 影慈はプロテクト魔法で氷弾を弾く。そしてあることに気づく。嘘だろ――。


 平田の足元の土が盛り上がっていることに。そして中身が時限式の爆弾であることに――。


「金髪君、すぐプロテクト! おっちゃんもできるならプロテクト張って!」


 影慈が言い終わると同時に爆弾が爆発する。凄まじい衝撃が発生する――。




 どれくらいの時間が経ったのかも分からない。だが、自分が生きていることは何とか分かった。身体中に痛みを感じたからだ。


「大丈夫か? 日下部のおかげで助かった。あの野郎、爆弾仕掛けてやがったのか。しかも、仲間の足元に……」


 頂川は信じられない気持ちと怒りを混じらせた声だ。


「うん…………。あ、そうだおっちゃんは……?」


 すると、平田の唸り声が聞こえてくる。よかった生きてる……。


「おい、おっさん。あいつ仲間じゃなかったのか?」


 十秒ほど経つ。


「……ぐ、うぅぅ。漆原君は……最初から……このつもりで……?」


 平田は未だに自分の身に起こったことが信じられていないようだ。


「…………君達、僕も一緒にプロテクトで守ってくれたよね……? 最初信じられなかったけど、君達の顔を見てたら何となく分かったよ。ぐぅ……多分僕はもう死ぬ。君達どちらかに『降伏』するよ。どっちがいいかな?」


 平田は死を悟ったような顔で影慈達を見上げる。


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― 新着の感想 ―
降伏する相手を選ぶことで、スキルが移譲されるのでしたね。
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