二十四話 不穏なワード
朝食を食べながらテレビを見ていると光葵の耳に〝不穏なワード〟が入ってくる。
「今日までの十日間で連続殺人事件が洲台市内で起きています。被害は十件。被害者は合計して十六人です。それぞれ凶器が異なることから、複数の犯人による犯行の可能性も視野に入れ警察が捜査しているとのことです」
アナウンサーが一息空けて言葉を続ける。
「また、行方不明になっている人も増えています。被害者と思われる血痕が残されているケースもあります。獣に襲われたような状況とのことです。危険に備え、皆さん外出時だけでなく、家にいる時も十分に警戒してください。それでは次のニュースです――」
〝十日間〟ということは光葵が、倉知に最初に襲われた日からだ……。代理戦争がいつから始まっているのかはわからない……。だが、少なくとも十日前には始まっていたのは確実だ。偶然という可能性もあるが……。
嫌な予感がよぎる――。
「影慈、このニュース……」
光葵は小声で影慈に話しかける。
(うん……できれば考えたくないことだけど、タイミング的にはあり得るね……)
代理戦争参加者の中に〝倉知とは別で快楽殺人鬼〟がいる可能性がある。
学校に行っても同じ話題が担任の先生から出た。
「ニュースで知ってる人もいるかもしれないけど、最近洲台市内で連続殺人事件が起こってます。被害に遭った場所は町も別々のようです。複数人の犯行の可能性もあります。うちの学校の町では幸い被害は出てないけど、絶対に安全とは言えないと思う。みんな気を付けて」
教室全体がざわざわとする。みんな恐怖心があるのだろう。当たり前だ。
――可能性が捨て切れない以上、代理戦争参加者の俺が動いた方がいいか……。静かに心の中で決意を固める――。
すると、朱音が光葵の席にやってきた。
「光葵……さっき先生の言ってたニュースって、光葵の言ってた代理戦争と関係ある……?」
朱音は心配と顔に書いているような表情で尋ねる。
「……代理戦争とは関係ないよ。だから、安心してくれ」
光葵は嘘をついた。朱音の友達思いな性格を考えると、辛い思いをさせたくなかったからだ。
「…………そう。絶対無事でいてね。私、光葵がいなくなるのなんて……嫌だよ……」
朱音は今にも泣きだしそうな顔をしている。
「……絶対に無事でいるよ。俺はいなくなったりしない」
光葵は朱音の目を真っ直ぐと見つめる。
「…………わかった……信じるよ」
朱音は一言呟く。少し顔が桃色に染まっているようにも見えた……。
放課後になり、頂川と合流する。
「頂川、いきなりだが話したいことがあるんだ」
「いいぜ。何だ?」
頂川は光葵の目を見て、話を聞く準備をすぐにしてくれる。
「ニュースで既に知っているかもしれないけど、洲台市内で連続殺人が起こっている。それが、倉知が死んでからも続いている……。断定はできないが、参加者の中に快楽殺人鬼がいる可能性がある。危険性は分かってるが、俺は止めたいと思っている。どうだろう?」
光葵は覚悟の滲む声を出す。朱音のように代理戦争に巻き込まれる人を減らしたいからだ。
「……」
少し頂川が考え込む。
「そうだな。魔法の力使って殺人してる奴がいるなら止めねぇとな。まあ、仮に魔法が関係なくても止めるけどな!」
頂川は強く決意したような表情をする。
「そう言ってくれてよかった! 俺の勝手な正義感に巻き込んで悪いが力を貸して欲しい」
「何水臭ぇこと言ってんだよ! 俺らはチームだからな! 一緒にやるぜ!」
頂川はカラッと笑みを浮かべる。




