十九話 指切り
倉知の脅威が去ったタイミングで、ちょうど朱音が目を覚ましたと連絡を受けた。
光葵は朱音の病室を訪ねていた。
「朱音……本当にすまなかった。俺の戦いに巻き込んじまって一週間も入院させてしまって……」
光葵は深々と頭を下げる。
「そんなに、頭下げないで大丈夫だよ! 今元気なんだしさ! それより、何だったの? 狼もそうだし、光葵、魔法とか言ってたけど……」
朱音は単純な疑問もあるようだが、不安の色の方が濃く感じる。
「それは……。俺は今魔法を使った代理戦争に参加してるんだ……」
光葵は一言のみ答える。
朱音が優しくて、仲間想いな性格だと知っているからだ……。
「代理戦争……。それってあんな危険なことがまたあるってこと⁉ そんなのダメだよ! 私は光葵にそんな危ないことしてほしくない!」
朱音から予想と全く同じ反応が返ってくる。
「……こればかりは、どうすることもできないんだ。俺の選択したことだしな。朱音は心配しないでくれ……。あの襲ってきた奴は倒せたし……!」
光葵はできるだけ明るい笑顔を心がける。
倉知の事実は伏せることとした。他の参加者にだが、殺されていたとは到底伝えられない……。
「そんな……そんなのできないよ……。仮に襲ってきた奴を倒せてたとしても……。私光葵のこと…………」
朱音は泣きそうな顔で押し黙ってしまう。
「朱音、すまん。心配してくれて、ありがとう。その気持ちだけで、嬉しい。ただ、どうしてもこの戦いは出ないといけないんだ。……わかってくれ……」
光葵は静かに言葉を紡ぐ。
自分の覚悟が少しでも伝わるように……。
「…………受け入れられないよ……。でも、どうしようもないんだよね……? だったら、約束して! 必ず無事でいるって!」
朱音は悲しさに満ちた顔をしながらも、覚悟を決めた顔をしている。
そっと、小指を出してくる。
「ああ! 約束する!」
光葵は朱音と指切りを行う――。




